オンライン服薬指導のルール整備‐「限定的」など慎重意見相次ぐ
厚労省、厚科審制度部会で提案
厚生労働省は22日、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会に、オンライン服薬指導のルール整備に向けた論点を示した。薬機法で薬剤師による対面での服薬指導が義務化されていることを踏まえ、「法令上、対面服薬指導義務の例外を設ける」ことを提案。「例外」の具体的内容については、オンライン診療のガイドラインや国家戦略特区での実証を踏まえ、▽対面の補完▽緊急対応▽服薬計画――といったルールを整備することを示した。さらに、調剤の一部や服薬指導を行う場所に、「職場などを含める」ことも提案したが、委員からは、「極めて限定的にすべき」など、慎重な意見が相次いだ。
オンライン服薬指導は、既に国家戦略特区に指定された福岡市、愛知県、兵庫県養父市の3地域で実証的に実施。患者が離島やへき地に居住し、医師のオンライン診療を受けていて、対面での服薬指導が難しい場合に限り、郵送などで医薬品を受け取れるようになっている。
伊藤由希子委員(津田塾大学総合政策学部教授)が、厚労省が示した検討の方向性に「賛成する」との考えを示したものの、乾英夫委員(日本薬剤師会副会長)が、対面とオンラインでは「得られる情報に差がある」ことや、郵送する医薬品の品質管理が問題になること、職場で服薬指導を行う場合のプライバシー確保なども課題になる点などを指摘し、「極めて限定的な範囲にすべきで慎重な対応が必要」と主張。
山口育子委員(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)も、「ICTありきで進めるべきではない。進めるとしてもかなり限定的にすべき」と慎重な姿勢を示した。中川俊男委員(日本医師会副会長)は、オンライン診療が慎重な議論の末、「あくまで対面の補完」という位置づけになったことなどを踏まえ、伊藤委員の意見に対して「全面的に反対する」と述べた。
服用期間中のフォロー、法的義務づけに
薬剤師・薬局に関する制度見直しでは、「服用期間を通じて、必要な服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を実施すること」や、「患者の服薬状況の情報や実施した指導の内容を、薬剤師が調剤録に記録することを義務づけること」を提案。
薬剤師の義務として薬剤師法に新たな規定を設け、薬局開設者に対しても、その薬局に従事する薬剤師に実施させるべき事項として薬機法に規定を新設する。
また、特定の機能を持つ薬局を法令上明確にするほか、薬局がどのような機能を持っているかが分かるようにするため、「名称の表示」を可能とすることも提案した。
想定される効果として、「患者が機能を持つ薬局を選択することが可能となる」「医療計画において、薬局の機能を踏まえた医薬品などの提供体制の検討が可能となる」ことを挙げた。
法的効果として、薬局開設者が特定の機能についての要件を満たさずに名称を表示している場合などに、自治体が「立入検査の実施」や「改善命令」「承認の取り消し」などを行うことができることも挙げた。
山口委員は、「これまでやっていなかったことをやらせるきっかけになる」と評価する一方、法的義務になる業務に「報酬がつくのはどうか」と牽制。
中川委員は、「法律に書き込むべきことではない」などとしつつも、「ここまで来たら認めるが、次期診療報酬改定でやるべきことをやった薬局が評価されるようなことにならないよう、保険局に伝えてもらいたい」と要望。
厚労省は「関係局に情報提供させていただく」と応じた。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
福岡市、愛知県、兵庫県養父市の3地域で実施されている「オンライン服薬指導」について、ルールの整備が議論されました。
薬機法では「対面」での服薬指導が義務化されているため、オンラインはあくまで「対面の補完」とするなど、慎重な意見が出ています。