【薬剤師国家試験】初導入「禁忌肢」対策は? 気になる出題傾向予想
【薬剤師国家試験】薬ゼミ学長が今年の傾向を解説
今年から合格基準に加味される「禁忌肢」とは?
第104回薬剤師国家試験は目前! 2019年は上記の日程で行われます。プレ試験ともいわれる「統一模試Ⅲ」を乗り越え、残すところ1カ月となりました。
「今年から加味される『禁忌肢』ですが、過剰に心配することはありません」
こう話すのは、薬学ゼミナール(以下、薬ゼミ)を創設から支えてきた、学校法人医学アカデミー・学長の木暮喜久子さん。
薬剤師国家試験を長年研究し続けているスペシャリストです(以下、木暮さん)。
まずは、近年の薬剤師国家試験の傾向を振り返ってみましょう。
「『かかりつけ薬剤師』制度の導入など、薬剤師を取り巻く環境の変化は、薬剤師国家試験の出題傾向に大きく影響します。
今年は『考える力や問題解決能力を必要とする問題』『臨床現場での実践力を問う問題』など、薬剤師に求められる資質を問う問題が多くなっています」
◆5年前に過去最低を記録、ここ3年は7割で安定
6年制対応の国試は2012年(97回)から始まり、2014年(99回)は合格率が低下しましたが、
2016年(101回)からは、新卒合格率が85%を超え、総数合格率は70%を超えました。
昨年(103回)は受験者数13,579人、合格者総数9,584人、合格率総数は70.58%でした。
過去3年は約7割と合格率は安定しています。
※グラフ出典/「試験回次別合格者数」より「薬読」編集部で作成。
◆今年から導入される「禁忌肢」への対処法とは?
第104回薬剤師国家試験から導入される「禁忌肢(きんきし)」は、医師国家試験では通称「ドボン問題」と呼ばれ、合格基準以上に選択してしまうと、総得点で合格基準の得点に達していても不合格になるというものです。
「薬ゼミが実施した『禁忌肢』を想定した模試によると、『禁忌肢』を選んだ数が「0」だった人は、約6割、2つ以上選択した人が9.9%(うち、3つ以上選択した人が2%)という結果が出ています。
合格基準で比較すると、合格基準達成者で2つ以上選択した人は2.1%です。
どの問題に禁忌肢が含まれているのか、どの程度間違えると不合格になるのかは明らかにされていませんが、『禁忌肢』は、薬学部を卒業できる能力があり、人として良識があれば選ばない選択肢です。
最近の学生さんは現場での実習も多く経験し、医療人としての自覚を持っている人が多いので、『禁忌肢』については、それほど心配しなくても大丈夫だと考えています。禁忌肢を選択しない対策としては、試験の時間配分をしっかり行い、文章を最後まで読んで解答することが重要になります」
・【禁忌肢について(薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針より)】
禁忌肢については、「公衆衛生に甚大な被害を及ぼすような内容」、「倫理的に誤った内容」、「患者に対して重大な障害を与える危険性のある内容」、「法律に抵触する内容」が該当するとされています。
◆合格基準が変わる!? ボーダーラインとは
『もうひとつ、大きく変わるのが合格基準です。合格基準は2015年(101回)から、「当分の間、全問題の配点の65%以上であり、相対基準により設定した得点以上という基準をみたしている受験者は合格となるようにする」と定められていました。
しかし今回の試験(104回)から完全に『相対基準』に変わります。つまり、65%取れていても合格するかどうかはわかりません。
ただし、薬剤師国家試験の合格者は、100回目からは毎年9000人以上で、今後も同数程度は合格すると考えられます。
プレ国家試験ともいわれる最後の模試『薬ゼミ全国統一模擬試験Ⅲ』は、薬剤師国家試験を受験するほぼ全員が受けるもので、今年は1万3000人以上が受験しました。
自分の順位を見れば、合格基準との距離が予想できると思います。
全345問のうち必須問題の90問は、全問題への配点の70%であること、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれの配点の30%以上正解していないと「足切り」となるため、そこも注意してくださいね」
◆薬剤師国家試験まで残り1カ月の勉強方法とは?
残り1か月をきった今、やるべき勉強は何か――。
木暮さんは、今までやったことの反復が大切だと言います。
『あれもこれもと、焦ってはダメ。そして、新たなものばかりに手を出さないこと。
まずは、プレ国家試験ともいわれる「統一模試Ⅲ」の中で、間違えた問題をピックアップし、しっかり見直ししていくといいでしょう。』
◆薬剤師国家試験1カ月前~直前対策
【1】国試の既出問題や模試で間違えた問題、苦手な分野をピックアップする。
【2】(1)でピックアップしたことを、1カ月前、3週間前、2週間前、前日、当日やるべきことに仕分けする。
『ピックアップした課題を、2週間前、前日などに振り分けして、見直していきましょう。忘れやすい暗記物は、国家試験直前に集中して覚えられるよう目印をつけておきましょう。やるべきことの整理ができると精神的にも落ち着きますし、毎日何をやるか迷う時間の短縮にもなります。
暗記や理解の勉強に少し疲れたら、実務実習時のノートを見直すことで、「実践問題」や「禁忌肢」対策にもなるでしょう。
そして、最後は、自分を信じること! きっとできる、そう自信をもって』
◆お話を伺ったのは…
学校法人医学アカデミー学長 木暮喜久子さん
薬剤師国家試験対策の予備校「薬学ゼミナール」ほか、薬剤師、理学療法士の教育に約40年従事。当校の運営に携わる前は、がんセンターに勤務し、研究者として働いた経歴を持つ。試験に臨む生徒には、自宅で育てた勝利のお守り”月桂樹の葉”を持たせて会場に送り出すそう。
>>>マイナビ薬剤師の【国家試験特設ページ】では、過去の合格率や合格発表の詳細、合格発表後の流れまでを詳しく解説しています。ぜひ合わせてお読みください。
撮影/菅井淳子 取材・文/西谷友里加
薬+読 編集部からのコメント
薬剤師国家試験(2/23土・24日)まで1カ月を切り、いよいよラストスパート! 薬剤師のみなさんは、勉強漬けだった日々が懐かしいですね。今年の薬剤師国家試験から初導入となる「禁忌肢」など、気になる今年の出題傾向について、薬学ゼミナール学長の木暮喜久子さんに伺いました。