薬学部の卒業試験とは、一般的に薬剤師国家試験合格相当の学力を有しているかを確認するために実施される大学独自の試験のことです。合格のためには、薬剤師国家試験対策と併せて苦手分野を重点的に復習し、過去問がある場合には、出題傾向を分析して対策する必要があります。本記事では、薬学部の卒業試験の概要や、いつ実施されるのか、合格するためのポイントについて解説するとともに、薬学部の進級・卒業の難易度、卒業試験に落ちた場合などについてもお伝えします。
1.薬学部の卒業試験とは?
薬学部の卒業試験とは、大学が独自に実施する卒業前の最終試験で、一般的に薬剤師になるために必要な専門知識や技能を総合的に評価するものです。試験科目には、薬理学、衛生化学、病態・薬物治療、薬事法規などがあります。
卒業試験を設けている薬学部の学生は、基本的に合格しないと薬剤師国家試験の受験資格が得られません。そのため、薬剤師国家試験だけでなく卒業試験の対策をしっかり行うことが大切です。
2.薬学部の卒業試験はいつ実施される?
薬学部の卒業試験は、一般的に6年生の秋から冬にかけて行われます。薬剤師国家試験が2月末から3月初旬に実施されるため、それまでに1回~数回の試験を実施し、合格した薬学生のみが卒業でき、薬剤師国家試験の受験資格を得られます。
参考:薬剤師国家試験|厚生労働省
そのため、薬学部の5~6年生は、実務実習や就職活動、卒業論文をこなしながら、卒業試験と同時に薬剤師国家試験の対策を行うことになるでしょう。卒業試験と国家試験に合格できるよう、しっかりと勉強時間を確保する必要があります。

3.薬学部の卒業試験に合格するためのポイント
薬学部の卒業試験に合格するためには、卒業試験の傾向や特徴を把握し、しっかりと対策することが大切です。ここでは、薬学部の卒業試験に合格するためのポイントをお伝えします。
3-1.卒業試験までの勉強スケジュールを立てる
薬学部の卒業試験は、基本的に大学で6年間学んだ科目が出題範囲となります。膨大な出題範囲を総復習しなければならないため、卒業試験までの勉強スケジュールを綿密に立てる必要があるでしょう。勉強スケジュールを立てるときは、暗記する内容が多い科目や、深く理解しないと解けない問題が多い科目など、全体の出題傾向を把握することが大切です。
また、薬学部の5~6年生は、実務実習や就職活動、卒業論文の作成なども行わなければなりません。そのため、卒業試験の勉強時間を確保するのが難しい時期があることも念頭に置いておきましょう。
多くの大学の卒業試験は、出題範囲が薬剤師国家試験と共通していますが、薬剤師国家試験よりも難易度が高く設定されているケースもあります。しっかりと対策するためにも、5年生の冬あたりから計画的に勉強を始めるとよいでしょう。
3-2.過去問がある場合は対策を怠らない
大学によって、過去問が提示される場合とされない場合があります。過去問がある場合は、出題傾向や難易度をチェックしましょう。薬剤師国家試験との共通点や、科目ごとの難易度などを把握した上で対策するのがポイントです。
ただし、卒業試験の対策に注力しすぎると、肝心の薬剤師国家試験の対策が十分にできない可能性があります。一般的に卒業試験と薬剤師国家試験の内容は共通している部分が多いため、まずは各試験の共通部分から勉強を始めるとよいでしょう。
卒業試験の過去問がない場合は、大学の先輩や配属された研究室の先生などから試験内容の情報を得ることになるかもしれませんが、薬剤師国家試験の勉強に集中できるように大学側があえて過去問を配布していないこともあります。この場合は薬剤師国家試験の勉強に力を入れるのがよいでしょう。
3-3.卒業試験対策と薬剤師国家試験対策を両立させる
前述のとおり、卒業試験と薬剤師国家試験の出題内容は共通している部分が少なくありません。そのため、卒業試験対策と薬剤師国家試験対策のどちらを優先するか迷った場合は、基本的に薬剤師国家試験対策を優先するのがおすすめです。
また、大学によっては、卒業試験の過去問の詳しい解答や解説が提示されないこともあるでしょう。その場合、卒業試験の過去問の解答を丁寧に作成しながら勉強するよりも、すでに解答・解説が載っている薬剤師国家試験対策用の問題集やテキストを中心に勉強を進めて試験対策を進める方が効率的です。
まずは、薬剤師国家試験対策用の問題集やテキストを活用して理解を深めましょう。それから卒業試験の過去問を確認すると、卒業試験対策と薬剤師国家試験対策を両立しやすくなります。
🔽 薬剤師国家試験の勉強法について解説した記事はこちら
3-4.得意・苦手分野を明確にして効率的に勉強する
薬剤師国家試験や卒業試験の勉強を進めていくと、「有機化学や生物学などの基礎科目は苦手だけど、薬理学といった暗記科目は得意」など、自分の得意とする分野・そうでない分野が分かるようになります。自身の得意・苦手分野が明確になったら、勉強のスケジュールを調整しましょう。
得意分野はあまり時間をかけずに忘れない程度の頻度で見直しを行い、苦手分野はある程度時間を取って理解が深まるように勉強するなど、時間配分を工夫することで効率的な試験対策ができます。
4.薬学部は進級や卒業が難しい?
薬学部の進級率や卒業率については、文部科学省で調査が行われています。文部科学省が実施した2024年(令和6年)度の調査結果によると、2018年度入学生の進級率や卒業率、薬剤師国家試験合格率は以下のとおりでした。
大学 | 5年次進級率 | 卒業率 | 薬剤師国家試験合格率 |
---|---|---|---|
国立大学 | 92.7% | 88.1% | 80.2% |
公立大学 | 89.6% | 85.4% | 79.0% |
私立大学 | 77.0% | 66.7% | 57.6% |
国公私立計 | 78.1% | 68.3% | 59.4% |
参考:薬学部における修学状況等 2024年(令和6年)度調査結果|文部科学省
上記の調査結果から、5年次進級率、卒業率、薬剤師国家試験合格率の全てにおいて、国立大学が最も高いことが分かります。
また、「薬学部における修学状況等 2024年(令和6年)度調査結果」では、大学ごとの「5年次進級率」「卒業率」「薬剤師国家試験合格率」も公表されています。国公立大学については、いずれの値も68%~100%の範囲内にありますが、私立大学は5年次進級率が30%台、卒業率・薬剤師国家試験合格率が20%台の学校もあり、大学によってばらつきがあります。
薬学部の進級率や卒業率などは国公立大学と私立大学で差があり、私立大学においては大学ごとに大きく違いがあることが分かります。

5.薬学部の卒業試験に落ちた場合はどうなる?
薬学部の卒業試験に不合格になると、卒業延期(卒留)となり、薬剤師国家試験の受験資格を得られません。薬剤師国家試験前に再卒試が行われる大学は、再卒試に合格することで、その年の国家試験を受験することができるでしょう。
しかし、薬剤師国家試験後に再卒試を行う大学では、卒業試験に落ちた場合、一般的には薬剤師国家試験の受験は早くて翌年になります。再卒試も不合格になった場合は、次年度の6年生と一緒に卒業試験を受けることになるでしょう。
また、卒業試験に落ちると就職内定が取り消しになる可能性もあります。就職先によっては、翌年まで内定取り消しを保留にしてもらえるケースもあるため、卒業試験が不合格だった場合は、就職先へ早めに報告することが大切です。
再卒試対策には、必要に応じて予備校や家庭教師なども活用して、過去問の分析や苦手分野の復習をするのがよいでしょう。また、大学や内定企業からサポートを受けられる可能性もあるため、なるべく早めに再卒試の対策をして大学卒業を目指しましょう。

6.薬学部の卒業試験に合格するためには
薬学部の卒業試験に合格するには、一般的に薬剤師国家試験に合格できるレベルの知識と実践力が求められます。卒業試験の方が薬剤師国家試験よりも難易度が高いこともあるため、薬剤師国家試験の過去問などを徹底的に分析し、苦手科目は優先的に復習しましょう。卒業試験の過去問がある場合には、薬剤師国家試験の勉強をある程度進めてから理解度の確認を兼ねてチェックするのがおすすめです。卒業試験や薬剤師国家試験は出題範囲がとても広いため、勉強スケジュールをしっかり立てて計画的に対策をすることが合格のカギとなります。

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。
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