いよいよ始まったマイナンバー制度。「会社や薬局でマイナンバーの「取扱担当者」に任命された」「適切な管理体制を作るように求められた」という方もいるかもしれません。このコラムでは薬剤師が個人として、事業者として、マイナンバーをどう扱うべきかをお伝えします。マイナンバー制度の基本、薬剤師として必要な情報はここでチェック!
第8回 マイナポータルと医療機関の関わり
利用者にとってマイナンバーカードを持つメリットになりそうな「マイナポータル」。しかし、その内容はいまだに詳しく公表されていません。医療機関として、どのような関わりがあるのか、イメージしておきましょう。
マイナポータルとは?
マイナンバーを示すカードとして、通知カードとマイナンバーカードがあることは第5回に記載した通りです。多くの人にとっては通知カードで十分事足りますが、マイナンバーカードを発行すると、搭載されているICチップ機能で、より便利なサービスを受けられる可能性があります。
そのひとつが2017年7月に公開が予定されている「マイナポータル」と呼ばれるWebサービス(※)。利用者がパソコンを使って各行政機関にある自分の情報にアクセスできます。ログインするためにはマイナンバーカードが必要で、マイナンバーカードを読み取れるICカードリーダーも必要になります。
なお、自宅にパソコンやICカードリーダーを用意しなくても、公的機関にも端末が設置される予定です。
※参考:内閣官房ホームページ「マイナンバー社会保障・税番号制度」
マイナポータルで閲覧できる内容
マイナポータルにアクセスすると、以下のような内容を閲覧できる機能が用意されるようです。
- ・自己情報表示機能
- 行政機関などが持っている自分の特定個人情報を確認できる。
- ・お知らせ情報表示機能
- 行政機関などからの個人に合ったきめ細やかなお知らせを確認できる。
- ・情報提供等記録開示機能
- 情報提供ネットワークシステムを通じた住民情報のやり取りの記録を確認できる。
- ・ワンストップサービス
- 地方公共団体の子育てに関するサービスの検索やオンライン申請ができる。
- ・民間送達サービスとの連携
- 引っ越し時などに電力会社や電話会社などからのお知らせを受け取ることができる。
- ・公金決済サービス
- ネットバンキングやクレジットカードでの公金決済ができる。
マイナポータルに表示される医療情報
この中で、医療機関と関連があると思われるのは「お知らせ情報表示機能」と「ワンストップサービス」でしょう。特に「お知らせ情報表示機能」では、予防接種や健康診断のお知らせなどが行政機関から通知されるなど、お子さんがいる家庭では便利な機能になると思われます。転居しても接種記録などが引き継がれますので、受診忘れもなくなるでしょう。
また、「ワンストップサービス」を使えば、確定申告時の医療費控除の申請も簡単になることが想像できます。健康保険組合などの医療保険実施団体は、医療を受けた個人へ自己負担額等を記載した医療費情報を、その人のマイナポータルへ通知できます。利用者にとっては、転職などによって健康保険組合が変わっても変更前後のデータを閲覧できるなどのメリットがあります。
医療機関が主導することはありませんが、利用者がその情報に触れる場面が増えることになります。これにより、問い合わせ内容などが変わる可能性もありますので、留意しておきましょう。
医療機関は何ができる?
薬局などの医療機関がマイナポータルに情報を提供することはないでしょう。
しかし、患者さんはマイナポータルに表示された内容に従って、予防接種や健康診断に訪れる可能性があります。患者さんから質問される場合も想定して、どのような内容が表示されるのか、確認しておいた方がよいでしょう。
今後、医療費情報などについて健康保険組合に提出するレセプトなどに、第6回の記事にある「医療等ID」を記載するなど、内容が変わる可能性もあります。注意して動向を見守りましょう。