薬剤師のためのお役立ちコラム 更新日:2020.02.10公開日:2019.05.14 薬剤師のためのお役立ちコラム

辛い、辞めたい、転職したい!人間関係に悩める薬剤師さんへ 薬剤師ストレス研究ラボ vol.1

辛い、辞めたい、転職したい!人間関係に悩める薬剤師さんへ 薬剤師ストレス研究ラボ vol.1

薬剤師が辞めたい理由は「人間関係」が第1位

ストレス研究ラボ 第1回 薬剤師のストレス 人間関係

職場で薬剤師を悩ますストレスの要因は、その多くが人間関係によるもの。マイナビ薬剤師のリサーチでも薬剤師を辞めたいと思う理由のトップは「人間関係」でした。
そこで、薬局で働く薬剤師のお悩み相談を数多く担当してきたシニア産業カウンセラー・坂口育実さんを取材し、薬剤師が抱える人間関係の悩みの中から、具体的な事例を教えていただきました。

Index

薬剤師のストレスの要因は「職場の悩み」

日本産業カウンセラー協会に寄せられたお悩み相談のうち、もっとも多いのが「職場の人間関係」でした(2018年度『働く人の電話相談室』より)。マイナビ薬剤師の調査でも薬剤師を辞めたいと思う原因は「人間関係」の悩みが1位。薬剤師のストレスの要因は、「人間関係」によるものが大きなウェイトを占めるようです。

►職場の悩みは「人間関係」が1位

1位 職場の人間関係
2位 パワハラ
3位 労働条件・待遇

※2018年一般社団法人日本産業カウンセラー協会調べ。

働く人が感じている悩みの中でも、職場の人間関係が圧倒的でした。ちなみに、キャリアに関する悩み相談で多いのが、「就職・転職・退職」の悩みがトップ。次いで多いのが「働き方」「仕事の適正」と続きます。

►キャリアの悩みは「就職・転職・退職」が1位

1位 就職・転職・退職
2位 働き方
3位 仕事の適正

※2018年一般社団法人日本産業カウンセラー協会調べ。

薬剤師のストレス「職場の悩み」を解決する秘策

薬剤師の職場で悩みを抱える薬剤師の相談を数多く受けてきた産業カウンセラー・坂口さんに実例から悩みを解決する方法を教えてもらいました。

実例を挙げて説明していきます。

►マイペース型の薬剤師A子さんのお悩み【相談事例】

薬局薬剤師A子さんは、
「なんでもテキパキこなすB先輩は凄いと思うけど、正直ついていけない…。自分のペースで進めたいのに、焦ってしまって失敗ばかり。もう辞めたいです」と、訴えています。

おっとりした性格でマイペースのA子さんに対し、なんでもテキパキこなす仕切りたがり屋のB先輩は仕事の様子を見てイライラ…。物事をはっきり言いがちなB先輩の態度に、A子さんはすっかり萎縮しているようです。

調剤薬局やドラッグストアなど、薬剤師の職場は、従業員が少なめで、閉じられた空間となる傾向が多いように思います。
そうした閉鎖的な職場では人間関係の軋轢が起こり易く、多くのストレスを生む可能性が高いと、産業カウンセラーの坂口育実さんは話します。

「長時間一緒に働く人とは密度が濃くなり、距離感がうまく図れなくなってしまうこともあります。
テキパキ仕切りたがる“ちゃきちゃきタイプ”と、慎重でマイペースな“おっとりタイプ”は、基本的な性格が違うので、コミュニケーションの仕方を工夫することが大切です。

仕切りたがりタイプの人の仕事のスピードにマイペースタイプの人がついていけず、圧倒されたり尻込みするなど、ストレスを感じやすくなる傾向にあります。

►コミュニケーションスキル“アサーション”とは

おっとりした性格のA子さんは、仕切りたがりのB先輩に尻込みしてしまい、うまくコミュニケーションが図れていないことがひとつの問題です。

多くの人にとって、悩みを直接相手に伝えるのは難しいもの。マイペースタイプの人は一人で悩みを抱え込みがちなので、まずは一人で思い悩まずに、信頼できる人に相談してみることが大切です。その上で、Bさんのような仕切りたがりタイプの人とうまくコミュニーションを図る努力をしていきましょう。

「コミュニケーションスキルの手段のひとつに、“アサーション”という考え方があります。

アサーションとは、自分と相手の意見や考え方が違ったときに、自分が我慢するのでもなく、相手を攻撃的な態度でやり込めるのでもなく、自分も相手も率直に意見を伝え合い、そのあとお互いの意見や考えのすり合わせを行っていくコミュニケーションの方法です。

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薬剤師の悩み人間関係のストレスは「DESC法」で解決

「アサーション」を上手に取り入れるための手段に、DESC(デスク)法があります。

DESC法とは、相手に伝えたいことを、

1「客観的な状況」
2「主観的な気持ち」
3「提案」
4「選択・代案」

4つに整理し、段階的に伝えるものです。

►DESC法とは自分の要望を上手に伝えるための4ステップ

1. Describe(ディスクライブ) 状況を客観的に描写する
2. Explain(エクスプレイン)
 Express (エクスプレス) 
自分の気持ちや考えを説明・表現する
3. Specify(スペシファイ) 具体的な提案する
4. Choose(チューズ) 選択する

実際にA子さんの悩みをDESC法に当てはめてみましょう。

A子(Describe/客観的描写):「ほかの人は1時間に10件こなせるのに、私はまだ5件しかできていなくて…」

B先輩:「毎回、スピードは気にしてっていつも言ってるよね…」

A子:(Explain/自分の気持ちを説明) 「私ももっと件数をこなせるようになりたいと思っているのですが、先輩の指示出しに焦ってしまい、周りのペースについていけなくて悩んでいます」

B先輩「そうだったの?私の指示なんか 気にしてないのかと思っていたわ」

A子(S提案)「近いうちに個別にご指導いただくお時間を作っていただけないでしょうか?」

B先輩「それでは来週のどこかでスケジュールをとりますね」

A子(Choos/選択)「ありがとうございます。どうしたら手際よくこなせるようになるか具体的に相談させてください」

まとめ/ストレスの要因を言葉にし、相手と共有して

「薬局で働く薬剤師さんの悩みを多く聞いてきて感じたのは、言いたいことを言えないとあきらめてしまっているパターン。
ストレスの要因となっている現象を相手と共有して理解しあう=アサーションすることが大切。

DESC法で自分の要望を相手に上手に伝えることで、職場のストレスは軽減することもあります。

ひとりで抱え込まずに、気持ちを整理して言葉にして伝えることで、人間関係が修復に向かうことも多いものです」

それでも人間関係に悩んだら…転職を考えてみませんか?

監修/坂口育実 取材・文/上野真依

 

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お話を聞いたのは…

シニア産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・公認心理師
坂口育実さん

一般社団法人 日本産業カウンセラー協会会員。EAP(従業員支援プログラム)サービスプロバイダー、ヒューマン・フロンティア所属。公務員、ケータリングサービス事業を経てカウンセラーとなった異色の経歴の持ち主。自身が子育ての悩みを抱えていた頃、カウンセラーに相談したことをきっかけに、産業カウンセラーの道を志す。40代後半で今の世界に入り、現在までに、多数のケースをカウンセリング。調剤薬局の相談員を務め、これまで60人以上の薬剤師たちの悩みや相談を受けてきた。シニア産業カウンセラー・キャリアコンサルト、公認心理師として、数多くの企業カウンセリングや大学、自治体の相談員を務めている。