薬剤師の勉強方法にはさまざまなものがあります。勉強会に参加したり、本やアプリを活用したりするなど、自身に合った勉強法を見つけることが大切でしょう。また、勉強した内容をノートに残して活用することも、知識を定着させるのに役立ちます。本記事では、薬剤師におすすめの主な勉強方法を紹介するとともに、勉強ノートのまとめ方と活用術、継続して勉強するためのポイントについてお伝えします。
- 1.薬剤師の勉強方法
- 1-1.セミナーや研修に参加する
- 1-2.勉強会に参加する
- 1-3.本で独学する
- 1-4.Webサイトやアプリを活用する
- 1-5.動画で学習する
- 1-6.転職で実践スキルを身につける
- 2.薬剤師の勉強ノートのまとめ方と活用術
- 2-1.簡単にメモを残しておく
- 2-2.ルーズリーフを活用しよう
- 2-3.ノートアプリでサクッとまとめる
- 2-4.気になったところには付箋を貼る
- 2-5.何度も確認したいページはスマホでスキャンしておくと便利
- 3.薬剤師が勉強時間を確保するためのポイント
- 3-1.通勤時間を活用して勉強する
- 3-2.寝る前に30分だけと決めて勉強する
- 3-3.週末にまとめて時間を作って勉強する
- 4.薬剤師が勉強を長続きさせるコツ
- 4-1.認定薬剤師などの資格取得に向けて勉強する
- 4-2.管理職を目指して勉強する
- 4-3.独立を目指して勉強する
- 5.知りたいことや目標に合わせて勉強しよう
1.薬剤師の勉強方法
薬剤師の一般的な勉強方法としては、セミナーや勉強会への参加、本での自主学習などが挙げられるでしょう。最近では、Webサイトやアプリ、動画を活用して勉強することもできます。ここでは、薬剤師におすすめの主な勉強方法を紹介します。
1-1.セミナーや研修に参加する
自分が興味のある分野を中心に学びたいなら、日本薬剤師研修センターのWebサイトに記載されている研修をチェックしてみるのがおすすめです。
研修内容はさまざまで、一般的なガイドラインに即した治療方法を学べるものや、排卵検査薬や医療機器の使い方、海外の医療情報が提供される会など多岐に渡ります。さまざまな研修会が開催されているので、自分に合ったものを選びやすいのがメリットでしょう。
1-2.勉強会に参加する
薬剤師にとって、勉強会は学びを深められる貴重な機会です。最前線で活動する薬剤師の話や、常に薬と向き合っている製薬企業の話などを聞けるため、知識をアップデートできます。
気兼ねなく参加しやすいのは、薬局や病院で開かれる勉強会です。主に製薬企業が開催する勉強会で、その多くは踏み込みすぎず分かりやすい内容となっているため、勉強会デビューにはちょうどよいでしょう。
「どういう理由でこの薬を開発したのか」「どういう作用機序ではたらくのか」「今までの薬と何が違うのか」などについて分かりやすく解説されるので、薬に関する知識がぐっと深まります。
1-3.本で独学する
薬剤師の勉強方法として定番といえるのが、本を活用する方法です。ひとくちに本といっても、さまざまなジャンルがあります。多くの薬剤師が勉強に活用しているのは、次のような内容の本が主になるでしょう。
● 服薬指導の仕方やコツ
● 漢方薬の考え方や処方
● OTC医薬品の選び方
● 最新の治療薬や話題の疾患
● 同種同効薬の違い
● 保険制度
どのジャンルも薬剤師として働いていく上で、読んでおきたいものばかりですが、たくさんの本を読むにはそれなりに時間がかかります。効率よく勉強したいのなら、本の冒頭からではなく、気になった項目からチェックしていくのもおすすめです。
薬剤師向けの本の多くは分厚く、正直なところ「全ページを読むのは時間がかかってしんどい」と思うこともあります。すぐに仕事で使える知識を習得するためには、最初から読むことにこだわらず「読みたいところ」「気になるところ」「仕事で生かせそうなところ」から読み始めるのも選択肢のひとつです。

1-4.Webサイトやアプリを活用する
薬の知識を高める基礎となるのは、やはり添付文書です。用法用量や禁忌などを覚えるだけでなく、一般名と商品名を一致させるのにも役立ちます。
添付文書を見たいときにも、アプリを活用すると便利です。ブラウザでも確認できますが、スマホの画面は小さく、細かい文字をチェックするには不向きなケースもあります。
アプリならスマホに適したサイズで表示されるので、ストレスなく全体を読み取れます。お気に入り登録機能や検索機能が充実したアプリなら、さらに使いやすいでしょう。
薬の知識と治療方法をリンクさせるためには、症状や原因など疾患についても詳しく知っておかなければなりません。インターネット検索で情報を得ることも可能ですが、信頼できる情報かどうか精査した上で利用することが大切です。
1-5.動画で学習する
動画を使って勉強するのもおすすめです。動画は視覚と聴覚を使うため、テキストや画像のみの勉強と比べて頭に入りやすいケースもあるでしょう。
また、聞き取れなったり、分からなかったりする部分を何度も再生できるため、自分のペースで学習できます。通勤時間などのスキマ時間を使ったり、音声だけを活用して「ながら勉強」をしたりすることもできるため、利便性の高い学習ツールといえるでしょう。
動画での学習で注意したいのは、正しい情報であるかを確認する点です。現在は、医薬品関連の情報がSNSを使って配信されていることもあります。動画学習を取り入れる場合は、Webサイトなどを利用する場合と同じく、信頼性の高い情報なのかを判断するようにしましょう。
1-6.転職で実践スキルを身につける
薬剤師に必要な知識やスキルは、本や研修などを通じて得られるものと、実践で得られるものがあります。自主学習では補えない実践スキルを身に付けたい場合は、転職するのもひとつの方法です。
例えば、薬局に勤めている薬剤師が急性期医療の実践スキルを身に付けたいのであれば、急性期病院に転職するとよいでしょう。在宅医療の知識やスキルを高めたいときは、在宅医療に力を入れている薬局への転職がおすすめです。
医療現場で得られる知識は、机上で得られるものよりも身に付きやすく理解が深まりやすいため、実践スキルを身に付けたい場合は、転職も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
2.薬剤師の勉強ノートのまとめ方と活用術
インプットした内容は、都度アウトプットできるようにしておくことが大切です。そのためには、学んだことをメモやノートとして記録する習慣を身に付けましょう。
自分の手を使って書くことで記憶に定着しやすくなるのに加え、振り返りたいときにすぐ見返せるのもメリットです。ノートを上手に活用するために、次の5つのポイントを押さえておきましょう。

2-1.簡単にメモを残しておく
書くことは大切だと分かっていても、「いちいちキレイにノートを書いていられない」という人もいるかもしれません。そんなときは、新しく覚えたことや気になったことを、走り書き程度でよいのでメモしておきましょう。
メモを取る際に活用したいのが、色分けによる分類です。たとえば、知ってはいたけれど忘れかけていたことは黒、新しく覚えたことは赤、もう一度見直して深掘りしたいことは青など、簡単に色分けしておくと、メモを見直したときにひと目で区別できます。
2-2.ルーズリーフを活用しよう
薬や疾患の情報は、日々めまぐるしく新しくなっていきます。次々と入ってくる情報をもれなく、かつ見やすくまとめるためには、ルーズリーフを活用するのがベターです。
通常のノートにまとめる場合、同じ項目に追加したいことがあっても、紙面に余裕がないかもしれません。しかし、ルーズリーフなら簡単に追加でき、「書きたいことがあるのにもう書けない」という事態を避けられます。
また、ノートに収められた情報が過度になり、必要なときに見直せない状態になると、使いづらいノートになってしまう場合があります。ルーズリーフを使えば、覚えたところはファイルから外して捨てることもできるため、常に見やすいノートに保ちやすいのもメリットです。
2-3.ノートアプリでサクッとまとめる
アプリやWebサイトで学んだことは、スマホ上のノートアプリにまとめておく方法もあります。スクリーンショットをそのまま貼り付けておけば、文章を打ち込む手間もかかりません。
手書きノートとは違って写真も簡単に入れられるので、手書きでは時間がかかる臓器の図や構造式などもメモに残しやすくなるでしょう。
ノートを他の人と共有できるアプリもあるので、みんなで学んだことをシェアしてみるのも有益かもしれません。
2-4.気になったところには付箋を貼る
もっと深く知りたいと思ったことや、後からもう一度見直したいところには、付箋を貼りましょう。読み返したいと思ったときに、「あれは、どこに書いてあったっけ?」とページをめくって探すのは時間がもったいないです。
いくら探しても見つからず、諦めて本棚に戻してしまうことになると、知識の復習をする機会を失ってしまいます。瞬時にほしい情報にアクセスできるように、こまめに付箋を貼っておくと効率的です。
2-5.何度も確認したいページはスマホでスキャンしておくと便利
「通勤時間に本を読みたいけれど、持ち歩くのは重くて大変」と悩んでいる人は、読みたいページをスマホでスキャンして持ち歩いてみてはいかがでしょうか。スキャンといっても、専用のアプリを使って写真を撮るだけなので簡単です。
読みたいページだけを保存しておけるので、バッグの中身を圧迫することがありません。スキャンの手間を省きたいのであれば、電子書籍を活用するのもよいでしょう。電子化された情報を活用することで、勉強しやすい環境を作れます。
3.薬剤師が勉強時間を確保するためのポイント
本、アプリを活用するなどの勉強方法や、ノートのまとめ方が分かっても、勉強時間を確保できないと薬剤師に必要な知識を身に付けることはできません。
自分に合う勉強方法を見つけたら、次は勉強を習慣化するための方法についても考えましょう。

3-1.通勤時間を活用して勉強する
通勤時間は勉強する絶好のチャンスです。短時間であっても、スマホに取り込んだ資料やアプリを見るだけで、復習したり、新しい知識を得たりできるでしょう。
勉強したことをまとめたノートを持参してチェックするのもおすすめです。帰宅中の時間は、その日の仕事で気になったことや、分からなかったことを調べる時間にあてるのもよいでしょう。
たとえば、通勤時間に片道1時間かけている人は、往復で2時間の勉強時間を確保できます。2時間きっちり勉強する必要はなく、片道15分(往復30分)だけでも勉強できれば、1カ月で約600分(10時間)の勉強時間が得られます。スキマ時間を上手に使って勉強時間を確保してみてはいかがでしょうか。
3-2.寝る前に30分だけと決めて勉強する
寝る前に30分だけと決めて勉強する習慣をつけると、それだけで月に15時間も勉強に時間を割けます。「今月は15時間を目標に勉強しよう」と思うと難しく感じますが、毎日少しずつ勉強するだけで、知識の積み重ねにつながります。30分あれば、その日の見直しやまとめなどが十分にできます。
疲れがたまって、本を読んだり、ノートを書いたりすることができない日は、動画を使った勉強などを取り入れるとよいでしょう。布団に入ってリラックスしながら、スマホで動画を見たり、音声だけを聞いたりすることも知識の習得につながります。
寝る前の30分を有効活用するのは、スキマ時間の勉強に集中できない人や、日中には勉強時間が確保できない人におすすめの方法です。
3-3.週末にまとめて時間を作って勉強する
「車通勤だから通勤時間では勉強できない」「毎日少しずつ勉強しようと思っても続かない」という人は、週に1度「今日は勉強するぞ」という日を作ってみてはいかがでしょうか。
勉強する日だとしても、1日中続ける必要はありません。数時間、数十分だけでもOK。「休みの日はついついだらけてしまう」という人は、コワーキングスペースやカフェ、図書館を利用するのもおすすめです。環境を変えると気分転換にもなって、勉強に着手しやすくなるでしょう。
あるいは、「月1回週末に研修会やセミナーの予定を入れる」と決めるのもひとつの方法です。先に予定を作ってしまうことで、その日の気分に左右されず勉強時間を確保しやすくなります。
4.薬剤師が勉強を長続きさせるコツ
薬剤師が勉強を長続きさせるには、勉強時間を確保することに加えて、以下のような目標を作ることも大切です。
4-1.認定薬剤師などの資格取得に向けて勉強する
認定薬剤師にはさまざまな種類があります。たとえば、研修認定薬剤師は、薬剤師としての基本知識を習得する上で役立つ資格です。国家試験レベルの基礎的な内容を学ぶことで取得できる資格であり、「そろそろ大学で学んだことを少し忘れてきて不安」といった人がおさらいの機会としても活用できます。研修認定薬剤師は資格取得条件に所属学会や経験年数の規定がないため、チャレンジしやすい資格です。
資格の取得に必要な単位は、オンラインのeラーニング講座や集合研修などを受講することで取得できます。単位を取得するためには、継続的に勉強を続ける必要があるため、自然と勉強する習慣も身に付くでしょう。
🔽 認定薬剤師について解説した記事はこちら
4-2.管理職を目指して勉強する
薬剤師が目指す目標として、管理薬剤師や薬局長、エリアマネージャーなどの管理職が挙げられます。管理職になるには、薬剤師に必要な医薬品や治療に関する知識、スキル、資格などに加え、マネジメントに関する知識やスキルも求められるでしょう。法律や保険制度などについても深く理解しなければなりません。
管理職はさまざまな知識やスキルが求められるため、目標とすることで継続的に勉強するきっかけになります。
🔽 管理薬剤師について解説した記事はこちら
4-3.独立を目指して勉強する
将来、独立を目指すのであれば、認定薬剤師などの資格取得を目指すとともに、さまざまな法律や制度について深く理解する必要があります。加えて、事業計画の立て方、銀行からの融資の受け方、店舗を確保するための方法、帳簿のつけ方・見方など、学ばなければならないことは山のようにあります。
また、経営者は、自薬局で働くスタッフや医療機関の医師、看護師、医療事務など、さまざまな人と関わりを持つでしょう。そのため、経営者としての心構えやコミュニケーション能力なども学ばなければなりません。独立に必要な知識やスキルは多岐に渡るため、長期的に勉強を続ける動機付けとなるでしょう。
🔽 薬剤師の独立について解説した記事はこちら

5.知りたいことや目標に合わせて勉強しよう
薬剤師の勉強方法としては、本やアプリを使ったり、勉強会に参加したりする方法がメインになるでしょう。仕事をしながら毎日のように何時間も勉強するのが体力的に難しい人は、うまくスキマ時間を使って勉強するのがおすすめです。自分の気になっていることから学んだり、自分の勉強しやすい環境を探してみたり、色々と試す中で自分に合った勉強スタイルを見つけて、実践してみてはいかがでしょうか。

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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