薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2026.01.20 薬剤師のためのお役立ちコラム

薬剤師外来とは?メリットや2024年度診療報酬改定で新設された加算について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師外来とは、薬剤師が外来診療に積極的に関与し、診察前面談や服薬指導などを通じて薬物治療の質を高めるための取り組みです。2024年度診療報酬改定では「がん薬物療法体制充実加算」が新設され、薬剤師外来は制度面での評価が拡充されました。本記事では、薬剤師外来の概要や導入によるメリット・課題、業務の流れについて解説するとともに、がん・糖尿病・慢性腎臓病(CKD)などの具体的な事例、薬剤師外来の今後についてもお伝えします。

1.薬剤師外来とは?

薬剤師外来とは、病院薬剤師が外来患者さんの薬物療法を支援する取り組みのことです。最適な薬物療法の実施による有効性・安全性の向上や、患者さんのQOL向上などを目的として、診察前面談での情報収集、診察・処方内容の確認、服薬指導、他の職種・医療機関への情報提供などを行います。
 
参考:外来患者への薬剤師業務の進め方と具体的実践事例 (Ver.1.0)|日本病院薬剤師会
 
薬物治療において、患者さんの治療に対する意欲や積極性は治療効果に影響します。そのため、薬剤師外来では、患者さんが治療に対する知識や理解を深められるように、聞き取りや説明を行ったり、心理面のフォローをしたりすることで、治療効果の向上を目指しています。
 
また、医師の診察前に薬剤師外来で副作用やコンプライアンスなどの情報を聞き取って医師に提供するといった、医師の業務負担を軽減する目的もあります。

 

1-1.2024年度診療報酬改定で「がん薬物療法体制充実加算」が新設

がん薬物療法体制充実加算とは、2024年度診療報酬改定により新設された外来腫瘍化学療法診療料の加算で、病院薬剤師の外来業務を評価したものです。
 
外来腫瘍化学療法診療料1のイの(1)を算定する悪性腫瘍の患者さんに対して、病院薬剤師が医師の診察前に服薬状況、副作用の有無などについて情報収集・評価を行った上で、医師への情報提供や処方提案などを行った場合に、月1回に限り100点を算定できます。
 
参考:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参考:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参考:令和6年度診療報酬改定の概要 外来|厚生労働省

 
🔽 がん薬物療法体制充実加算について解説した記事はこちら

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2.薬剤師外来を行うメリット

薬剤師外来を行う主なメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

 

2-1.薬物治療の有効性・安全性の向上

薬剤師外来のメリットとして、治療効果の向上や副作用の早期発見・予防などにつながることが挙げられます。
 
薬剤師が患者さんの服薬状況や既往歴、副作用などを多角的に確認することで、医師や看護師などの多職種と連携して、薬剤リスクをチェックできるようになります。
 
例えば、術前外来では、服用薬やアレルギー歴などを確認した上で、周術期に使用できない薬剤や休薬が必要な薬剤の有無を判断します。
 
また、患者さんへ説明・指導を行うとともに多職種と情報共有することで、薬物治療の有効性や安全性の向上に寄与します。

 

2-2.服薬アドヒアランスやQOLの向上

服薬アドヒアランスやQOLの向上が期待できるのも、薬剤師外来のメリットです。
 
例えば、吸入指導外来や自己注射指導では、デバイスの使用方法を丁寧に指導することで、患者さんの不安を軽減したり、誤った操作による服薬アドヒアランスの低下を予防したりできます。
 
薬剤師の介入により安全で効果的な治療につながるため、患者さんのQOL向上に貢献できるでしょう。

 
🔽 服薬アドヒアランスについて解説した記事はこちら

 

2-3.医師の業務負担の軽減

薬剤師外来の導入により、薬剤師が服薬指導や治療支援を担うことで、医師の業務負担を軽減できます。
 
特に慢性疾患や複雑な薬物治療が必要なケースでは、薬剤師が患者対応を分担することで、医師は診断や治療方針の決定に集中できるでしょう。チーム医療の推進にもつながるため、医療現場の業務効率化が期待できます。

 
🔽 チーム医療における薬剤師の役割について解説した記事はこちら

 

2-4.医療経済への貢献

薬剤師外来は、薬剤師が処方計画に参画することで、定期的に残薬の把握や処方薬の見直しを行い、残薬や処方薬を調整するきっかけとなるでしょう。
 
これにより、不要な薬剤の削減や適正な薬物治療が可能となるため、医療費の抑制につながります。薬剤師外来の実施は、治療効果を高めると同時に医療経済への貢献も期待できます。

3.薬剤師外来の課題

薬剤師外来の導入は、患者さんや医療従事者にさまざまなメリットがあります。しかし、導入するためには、業務負担が大きくならないよう十分な人材を確保するとともに、スムーズに多職種と連携するための体制整備をしなければなりません。ここでは、薬剤師外来の課題についてお伝えします。

 

3-1.病院薬剤師の不足

厚生労働省の資料「医療提供体制等について」によると、薬局薬剤師と比べて、病院薬剤師は全国的に不足傾向にあるとされています。薬剤師外来は、専門的な判断や継続的な支援が求められるため、一定の経験とスキルを持つ薬剤師の確保が不可欠です。
 
薬剤師外来を導入・維持するには、医療機関が安定した収益を得る必要があるでしょう。そのため、薬剤師外来の運営を後押しする診療報酬や制度の改定が、医療現場での人材確保を支えるひとつのカギとなります。

 

3-2.業務負担の増加

薬剤師外来の導入により、薬剤師の業務は従来の調剤・病棟業務に加えて、外来患者さんへの個別対応や記録業務が加わります。そのため、時間的・人的な負担が増加し、現場では業務の優先順位や分担が課題となるでしょう。
 
薬剤師が本来の専門性を発揮するためには、業務の効率化や支援体制の整備、十分な人員配置が不可欠です。薬剤師外来の質を維持するには、現場の実情に即した運用設計が求められます。

 

3-3.多職種との連携

薬剤師外来の効果的な運営には、医師・看護師・管理栄養士など、多職種との連携が求められます。しかし、情報共有の仕組みや役割分担が不明確な場合、十分な連携が取れないこともあるでしょう。
 
薬剤師が外来で得た情報を多職種で共有・活用するには、院内の連携体制を整え、職種間の相互理解を深める取り組みが必要です。

4.薬剤師外来業務の流れ

薬剤師外来の業務の流れについて、治療開始前後、医師の診察前後に分けて解説します。

 

4-1.【治療開始前】診察前の面談

診察前に面談を行う目的は、薬剤師が情報収集を行うことで、医師が薬学的評価を含めた診断をできるようにするためです。
 
特に初診では、他医療機関での処方薬や一般用医薬品、サプリメントを含めた服薬状況、アレルギー歴、副作用歴などを詳細に確認します。
 
他医療機関からの診療情報提供書がある場合はそれを基に患者さんへ面談を行い、生活習慣や食事習慣などの情報を患者さんから直接収集します。
 
十分な情報が得られなかった場合は、医療機関や調剤薬局に問い合わせ、詳細な情報を集めることもあるでしょう。
 
加えて、腎機能や肝機能といった臓器機能、ヒートシールからの開封、薬剤の自己管理ができるかどうかといった身体機能、認知機能などをチェックし、薬剤師としての総合的な評価を行いながら、医師の診察をサポートします。

 

4-2.【治療開始前】診察後の面談

治療開始前の診察後の面談では、医師による治療方針や処方薬の説明に対する患者さんの理解度を確認します。
 
吸入薬やインスリンなどの自己注射が処方されている場合は、使用方法や保管方法に注意が必要なため、薬剤師が介入することで、患者さんの知識や理解が深まりやすくなるでしょう。

 

4-3.【治療開始後】診察前の面談

治療が始まってからは、診察前に、前回までの処方内容や面談内容、診察内容、臨床検査値などを確認後、自宅での服薬効果や副作用、服薬状況、残薬の状況などを聞き取ります。
 
吸入薬やインスリンなどの自己注射が処方されている場合は、手技について確認し、問題がある場合は、剤形や薬剤の変更、治療方針の変更も含めて医師と協議することもあるでしょう。
 
その他、服薬アドヒアランスや生活習慣、食生活、運動習慣などを改めて聞き取り、診察時に必要な情報や治療方針に影響する可能性がある情報は、診察前に医師などへ提供します。

 

4-4.【治療開始後】診察後の面談

治療が始まってからの診察後は、診察前の協議内容などが反映された処方であるかを確認してから服薬指導を実施します。
 
併せて、処方変更など他医療機関や調剤薬局に必要な情報については、お薬手帳などを活用し情報共有をします。
 
参考:外来患者への薬剤師業務の進め方と具体的実践事例 (Ver.1.0)|日本病院薬剤師会

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5.薬剤師外来の具体的な事例

薬剤師外来では、どのような服薬指導・治療サポートを行っているのでしょうか。ここでは、具体的な事例を紹介します。

 

5-1.がん薬物療法

がん薬物療法は、がん種やレジメンにより複雑に構成されています。高頻度に副作用が発現し、時に重篤化する場合もあるため、薬物治療中の副作用管理がとても重要です。
 
そのため、がん薬物治療を開始する前に、患者さん自身の知識習得を目的として、診察の前後に薬剤師外来を実施する病院もあります。
 
治療開始後もがん薬物治療の効果や副作用状況を薬剤師が把握することで、治療の適正化や服薬アドヒアランスの維持、副作用対策の向上が期待できるでしょう。
 
がん薬物療法開始時の薬剤師外来では、生活習慣や臓器機能、併用薬などのチェックや、投与量・投与スケジュール、副作用対策などが適正であるか確認が必要です。
 
同時に、患者さんの薬物治療に対する不安や心配を聞き取り、対応することで、服薬アドヒアランスの向上に努めます。

 
🔽 がん専門薬剤師について詳しく解説した記事はこちら

 

5-2.糖尿病薬物療法

インスリン療法を行う糖尿病患者さんは、薬物治療を継続する上で、急性合併症予防や慢性合併症予防などの疾患に関する知識に加え、治療効果やインスリン注射の手技、副作用の対処法など治療に関する知識を事前に習得することが非常に重要です。
 
疾患に関する情報提供や服薬管理を薬剤師が実践することで、薬物治療の質を向上させるとともに、医師の業務負担の軽減が期待できます。
 
薬剤師外来では、医師の診察前に患者背景や併用薬の確認を、診察後は治療方針や処方薬についての説明を行います。自己注射に不安や抵抗がある場合は、インスリンを用いた治療について根気よく説明しなければならないこともあるでしょう。
 
1型糖尿病と2型糖尿病の違いなど、それぞれの病態について治療目的を説明し、治療を継続する重要性を伝えることも薬剤師外来での大切な業務です。
 
また、災害緊急時や副作用発現時などの対応についても説明を行います。若年発症者の割合が高い1型糖尿病に対しては、学校や就職、結婚、妊娠などのライフステージに応じた指導が必要です。

 

5-3.慢性腎臓病(CKD)薬物療法

慢性腎臓病の治療において、服薬アドヒアランスや薬物相互作用、短期的・長期的な副作用の管理は、慢性腎臓病の進行を遅らせるためにも非常に重要といえます。
 
また、透析患者さんの場合は、多剤投与や合併症の予防も病状の進行に影響するため、受診の都度細かなチェックが必要です。薬剤師が薬物治療の管理をサポートすることで、医師の業務負担を軽減できます。
 
薬剤師外来では、治療開始後に患者さんと面談を行い、生活習慣などを聞き取った上で服薬状況や副作用の有無を確認します。また、腎機能に応じて投与量や投与間隔を調節する必要があるため、患者背景と総合して薬物治療に対する評価を行い、診察前に医師へ情報提供します。
 
透析患者さんにおいては、透析性やタンパク結合率などを考慮した投与設計も必要となり、MBD(骨ミネラル代謝異常)や貧血の管理など合併症の予防と治療を目的とした薬物療法を医師へ提案して、安全で効果的な治療を継続できるよう努めなければなりません。

 

5-4.妊婦・授乳期の薬物治療

妊娠・授乳期は通常と異なり母体に大きな変化があることを理解した上で、母子の健康と胎児・哺乳児の有害作用を考慮した薬物治療を支援する必要があります。
 
薬剤師は妊娠・授乳期に使用される医薬品の薬理作用や体内動態、生殖発生毒性に関する情報の収集・評価を行い、医師や患者さんへ情報提供することで安心・安全に薬物治療を行えるように努めるのが大切な役割です。
 
薬剤師外来では、患者さんの既往歴や現病歴、処方内容、主治医の治療方針などを確認し、生殖発生毒性の評価や過去の疫学研究、母乳を介して摂取した薬物の安全性を評価します。
 
加えて、母体の薬物治療の必要性や母乳のメリットを総合的に評価し、医師へ情報提供や処方提案を行いましょう。
 
妊婦・授乳期の薬物治療では、治療開始後も患者さんへ服薬についてのカウンセリングを行い、過度な不安から自己判断による服用中止が行われないように支援することが大切です。

6.薬剤師外来の今後

日本病院会は2026年度診療報酬改定に向けて、厚生労働省保険局長宛に薬剤師の業務を評価する加算・管理料の新設などについて要望書を提出しています。その内容は、医師の働き方改革を推進するために、医師の業務の一部を薬剤師が担っているケースがあるというものです。
 
参考:令和8年度診療報酬改定に係る要望書 日病会発第18号|日本病院会
 
また、日本病院薬剤師会は日本病院団体協議会と共同で、「病院薬剤師確保に係る要望書」を提出しており、その中で病院薬剤師の外来業務に関する評価の創設について要望しています。
 
参考:日本病院団体協議会との共同による「病院薬剤師確保に係る要望書」の提出について|日本病院薬剤師会
 
病院薬剤師が薬物療法に直接関与する場面は広がっており、PBPM(プロトコールに基づく薬物治療管理)や副作用の回避、プレアボイドの取り組みなど、薬学的ケアの重要性は一段と高まっています。
 
しかし、診療報酬上の評価が不十分なこともあり、人員確保が困難なのが現状です。そのため、今後は、病院薬剤師の業務に対する加算や管理料の新設が進められることが推測されます。
 
また、がん領域での薬剤師外来は「がん薬物療法体制充実加算」として評価されています。今後は他の領域での薬剤師外来についても診療報酬で評価されるようになる可能性があるでしょう。
 
関連記事:【日病薬 武田会長】「外来」「在宅」で評価新設を~次期改定に向け要望検討

7.薬剤師外来で、さらに患者さんに寄り添った服薬サポートへ

薬剤師外来は、薬物治療の質を高めるだけでなく、患者さんの不安や疑問に寄り添いながら、安心して治療を継続できる環境づくりに貢献します。診察前後の面談を通じて、医師に直接伝えにくい不安や悩みを薬剤師外来で相談できると、患者さんはより安心して薬物治療を行えるでしょう。今後の診療報酬改定によって薬剤師外来を設置する病院が増えれば、病院薬剤師の活躍の場が広がるかもしれません。病院薬剤師は、知識の拡充やスキルアップなど、準備を進めておくとよいでしょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。