薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2025.12.11 薬剤師のためのお役立ちコラム

薬剤師の男女比はどれくらい?推移状況や年齢別・職場別のデータを紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師の男女比は、年齢や職場によって大きく異なる傾向があります。薬剤師全体では女性の占める割合が高い一方、管理職や高年収層では男性が多いという構造も見られます。こうした背景には、働き方やライフステージの違いが影響していることが考えられるでしょう。本記事では、薬剤師の男女比の推移や年齢別・職場別・役職別・地域別の男女比についてお伝えするとともに、男女別の年収や、薬剤師の女性割合が他職種と比較して高い理由、女性薬剤師が働きやすい職場を見つける方法についても解説します。

1.薬剤師の男女比はどれくらい?

薬剤師の男女比は、年齢や職場、役職、地域によって大きく異なります。全体で見ると女性の方が多く、医療施設や薬局などでは女性が多数を占めています。
 
一方で、役職や地域によっては男性比率が高いケースもあり、職域やキャリアステージによる違いが顕著です。ここでは、薬剤師の男女比の推移と、年齢別・職場別・役職別・地域別の男女比について見ていきましょう。

 

1-1.薬剤師の男女比の推移

厚生労働省の調査によると、薬局や医療施設で働く薬剤師の男女比の推移は、以下のとおりです。

 

性別 構成割合
2010年 2012年 2014年 2016年 2018年 2020年 2022年
男性 33.2% 33.5% 33.9% 34.1% 34.4% 34.8% 34.9%
女性 66.8% 66.5% 66.1% 65.9% 65.6% 65.2% 65.1%

参考:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省

 

2010年から2022年にかけて薬剤師の男女比はほぼ横ばいで、女性が約65%、男性が約35%という構成が続いています。
 
女性薬剤師は男性の約2倍の人数を占めており、医療現場では女性薬剤師の活躍が定着していることが分かります。

 

1-2.年齢別の男女比

厚生労働省の調査によると、2022年における薬局や医療施設で働く薬剤師の年齢別男女比は、以下のとおりです。

 

性別 29歳以下 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70~79歳
男性 34.3% 40.8% 33.0% 29.6% 33.0% 39.4%
女性 65.7% 59.2% 67.0% 70.4% 67.0% 60.6%

参考:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省

 

このデータから、薬剤師の女性割合は、50代が最も高く、次いで40代が60代が同率で並び、20代、70代、30代となっていることが分かります。これは、女性のライフステージの変化による離職などが影響していると考えられるでしょう。

 

1-3.職場別の男女比

厚生労働省の調査によると、2022年における薬剤師の職場別の男女比は、以下のとおりです。

 

性別 薬局 医療施設 介護保険施設 大学 医薬品
関係企業
衛生行政機関
保健衛生施設
その他
男性 35.1% 34.4% 25.9% 71.6% 58.1% 52.4% 33.3%
女性 64.9% 65.6% 74.1% 28.4% 41.9% 47.6% 66.7%

参考:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省

 

薬局や病院、介護保険施設などの医療現場では、女性薬剤師の割合が高くなっています。一方、医薬品関連企業や衛生行政機関・保健衛生施設では男女比に大きな差はなく、大学では男性薬剤師が多い傾向にあります。
 
また、その他に含まれる「薬剤師資格を持ちながら他職種に従事している人」や「無職の人」では、女性の割合が高いという結果が見られます。
 
これらの傾向は、ライフステージに応じた働き方の選択や、職場環境の柔軟性が影響していると考えられます。特に女性は育児や介護との両立を意識し、医療現場やアルバイト・パート勤務を選ぶケースが多いことが背景にあるといえるでしょう。

 

1-4.役職別の男女比

厚生労働省の調査によると、2022年における薬局薬剤師の役職別の男女比は、以下のとおりです。

 

性別 薬局の開設者
法人の代表者
(管理者)
薬局の開設者
法人の代表者
(管理者以外)
薬局の勤務者
(管理者)
薬局の勤務者
(管理者以外)
男性 71.1% 66.7% 50.5% 24.4%
女性 28.9% 33.3% 49.5% 75.6%

参考:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省

 

薬局の開設者・法人代表(管理者)では男性が約7割を占めており、独立したり、法人代表に就いたりする女性は少数派であることが分かります。
 
一方、勤務薬剤師では管理者以外のポジションである女性が約76%と圧倒的に多く、現場の実務を担う層では女性の活躍が目立ちます。
 
これらのデータから、女性が現場の中心であるものの、経営や管理のポジションには進出しにくい状況であることが考えられます。

 

1-5.地域別の男女比

厚生労働省の調査によると、2022年における薬局や医療施設で働く薬剤師の地域別の男女比は、以下のとおりです。

 

都道府県 男性 女性
全国 34.9% 65.1%
北海道 50.2% 49.8%
青森 48.9% 51.1%
岩手 45.3% 54.7%
宮城 40.3% 59.7%
秋田 44.0% 56.0%
山形 50.1% 49.9%
福島 45.4% 54.6%
茨城 37.9% 62.1%
栃木 39.9% 60.1%
群馬 40.4% 59.6%
埼玉 34.1% 65.9%
千葉 30.9% 69.1%
東京 27.4% 72.6%
神奈川 28.1% 71.9%
新潟 43.7% 56.3%
富山 39.8% 60.2%
石川 37.2% 62.8%
福井 43.6% 56.4%
山梨 42.3% 57.7%
長野 41.1% 58.9%
岐阜 45.1% 54.9%
静岡 43.5% 56.5%
愛知 38.3% 61.7%
三重 42.5% 57.5%
滋賀 35.5% 64.5%
京都 30.2% 69.8%
大阪 27.8% 72.2%
兵庫 24.1% 75.9%
奈良 27.5% 72.5%
和歌山 33.5% 66.5%
鳥取 40.0% 60.0%
島根 49.2% 50.8%
岡山 34.5% 65.5%
広島 31.6% 68.4%
山口 39.3% 60.7%
徳島 28.5% 71.5%
香川 35.5% 64.5%
愛媛 39.8% 60.2%
高知 35.7% 64.3%
福岡 35.6% 64.4%
佐賀 44.4% 55.6%
長崎 43.8% 56.2%
熊本 39.9% 60.1%
大分 40.9% 59.1%
宮崎 43.3% 56.7%
鹿児島 44.6% 55.4%
沖縄 39.1% 60.9%

※男性・女性の割合=男性・女性薬剤師数/薬局・医療施設の従事者数で算出

参考:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省

 

全国の薬剤師の男女比は男性34.9%、女性65.1%と女性が多数を占めています。特に東京・神奈川・大阪・兵庫など都市部では女性比率が高く、75%を超える地域も見られます。一方、北海道や東北地方では男性比率が高めで、地域によって傾向が異なります。

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2.薬剤師はなぜ女性が多い?

厚生労働省の調査結果から、薬剤師は医師や歯科医師と比較して医療施設で働く女性の割合が高いことが分かります。

 

職種 女性の構成割合
2010年 2012年 2014年 2016年 2018年 2020年 2022年
医師 18.9% 19.6% 20.4% 21.1% 21.9% 22.8% 23.6%
歯科医師 20.8% 21.5% 22.2% 23.0% 23.8% 24.8% 25.8%
薬剤師 66.8% 66.5% 66.1% 65.9% 65.6% 65.2% 65.1%

参考:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省

 

医師や歯科医師の女性割合は20~25%前後であるのに対して、女性薬剤師の割合は約3倍の65%前後となっています。
 
薬剤師が医師や歯科医師と比較して女性の割合が高くなっている要因として、資格取得者の男女比の違いが挙げられるでしょう。

 

職種 構成割合
男性 女性
医師 76.4% 23.6%
歯科医師 74.0% 26.0%
薬剤師 38.4% 61.6%

参考:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省

 

上記のデータから、薬剤師を目指す女性が多いことが分かります。薬剤師は医師や歯科医師と比べ、ライフステージの変化に合わせて就職先や働き方を選択しやすい傾向にあることが、要因のひとつとして考えられるでしょう。

 
🔽 薬剤師の人数について解説した記事はこちら

3.薬剤師の男女別の年収比較

薬剤師の平均年収は、男性と女性で約100万円の差があります。

 

性別 平均月収 賞与等 平均年収
男性 47万2,500円 84万1,200円 651万1,200円
女性 39万5,800円 80万8,800円 555万8,400円

※平均年収=平均月収(きまって支給する現金給与額)×12カ月+賞与等(年間賞与その他特別給与額)で算出

参考:賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 7 職種(特掲)、性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口 e-Stat

 

平均年収の差は、働き方や役職、勤務年数などの違いが影響していると考えられます。特に女性薬剤師は、結婚や出産、育児などのライフイベントによって働き方を柔軟に変える傾向にあるため、男性とは平均年収に差が生じやすいでしょう。

 
🔽 薬剤師の年収について解説した記事はこちら

4.女性薬剤師が働きやすい職場を見つけるには?

女性薬剤師が長く安心して働くためには、職場選びが重要です。ライフステージの変化に柔軟に対応できる環境や、キャリアアップを支援する制度が整っているかを事前に確認しましょう。ここでは、働きやすさを見極めるポイントをお伝えします。

 

4-1.管理職の男女比について調べる

職場の管理職に占める女性の割合は、女性薬剤師がキャリアを積みやすい環境かどうかを判断するひとつの指標です。
 
男女比が偏っている場合、昇進のしやすさや職場での役割にも偏りがあるかもしれません。そのため、求人情報だけでなく、企業の公式サイトや採用ページ、口コミなどから総合的に実態を把握することが重要です。

 

4-2.ライフステージの変化を視野に入れて求人を探す

結婚・出産・育児・介護など、ライフステージの変化に伴い働き方を見直す必要が出てきた場合、フレックスタイム制や時短勤務、在宅勤務などの制度が整っている職場は、長期的なキャリア形成に有利です。
 
求人票に記載がなくても、入社前に柔軟な働き方への理解があるかを確認しておくと安心でしょう。将来を見据えた職場選びが、無理なく働き続けるためのカギとなります。

 

4-3.託児所・保育支援などの制度について確認する

育児中の女性薬剤師にとって、託児所の併設や保育料補助などの支援制度は大きな助けになります。病院や調剤薬局の中には、職場内に保育施設を設けているところがあり、急な呼び出しにも対応しやすい環境が整っています。
 
求人情報や企業サイトで制度の有無を確認し、実際に利用されているかどうかもチェックしましょう。制度があるだけでなく、活用しやすい雰囲気かどうかも重要なポイントです。

5.薬剤師の男女比を把握して働き方の選択に生かそう

薬剤師の男女比は年齢や職場によって異なりますが、全体としては女性の割合が高い傾向があります。一方で、管理職や高年収層では男性が多く、働き方やキャリアの違いが数字に表れています。厚生労働省の調査データからも、性別や年齢による就労状況の差が明らかになっており、制度や職場環境の整備が今後の課題といえます。こうした傾向を把握して、自分に合った職場選びやキャリア設計に役立てましょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。