かかりつけ薬剤師 公開日:2017.08.17 かかりつけ薬剤師

臨床検査値を理解して、患者さんに伝わる服薬指導に

臨床検査値を理解してかかりつけ薬剤師としての職能を発揮しよう

臨床検査値を記載された処方箋が普及し始めています。患者さんの詳しい情報を管理する「かかりつけ薬剤師」として、臨床検査値が記載された処方箋にはどのような対応が望ましいのでしょうか。臨床検査値で確認すべきポイントや服薬指導への活かし方についてお伝えします。

かかりつけ薬剤師が臨床検査値を理解すべき理由

大学病院を中心に臨床検査値が記載された処方箋を発行する施設が増えています。臨床検査値は患者さんの状態や治療経過を把握する重要な情報源。かかりつけ薬剤師として患者さんの情報を一元管理するために、確認しておきたいデータでもあります。
2016年4月に電子処方箋が解禁されたことにより、今後は薬局と病院間での情報共有もますます盛んになります。電子カルテが共有できれば薬剤師も診療記録を閲覧でき、かかりつけ薬剤師の価値もますます高まるでしょう。こうした時代の変化を受けて、これからの薬剤師には臨床検査値を含めた患者さんの状態把握が求められるかもしれません。

臨床検査値を活かした服薬指導

では実際に、臨床検査値を理解することで、どのような指導が可能になるのでしょうか?

 

➢ 炎症マーカーCRPを用いてコンプライアンスの改善

「痛みを止めるためには、痛み止めを飲んでください」という感覚的な服薬指導しかできなかった患者さんに対し、臨床検査値を用いて痛みの根拠となる数字を用いた服薬指導ができるようになります。特に慢性疾患で長期間、鎮痛剤を飲んでいる患者さんは、コンプライアンスが悪化しがち。炎症マーカーと呼ばれる「CRP値」の増減から、飲み忘れが続いたときと、そうでないときの状態が数字で読み取れます。飲み忘れが続けば、CRP値に変化がなく、データから炎症も継続していることが見えてきます。こうした変化を伝えることで、説得力のある服薬指導となることでしょう。漫然となりがちな長期間の服薬も、数字を用いた説得力ある指導を行うことでコンプライアンスの改善が期待できます。

 

➢ GOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTPで肝機能チェックと飲酒を考慮した指導

肝機能の臨床検査値を理解できれば、服薬による影響をその都度、確認することができます。具体的な肝機能の低下がみられたら処方医に確認した上で、腎排泄型(じんはいせつがた)の薬剤への変更を提案することもできるでしょう。またγ-GTPは飲酒により上昇するため、患者さんの飲酒状況が把握でき、数値が下がらなければ飲酒を控えるように伝えるといった生活習慣を考慮した服薬指導を行えます。飲酒による相互作用を未然に防ぐことができるでしょう。

 

➢ LDL、HDL、中性脂肪(TG)の値で患者さんのモチベーション管理

脂質代謝系の臨床検査値は、生活習慣病の管理のなかでも大切な項目です。特にLDLは総コレステロールよりこちらで判断した方が合理的といわれるほどです。
服薬と運動、食事管理による体調改善も、具体的な数値を目標にすることで、服薬指導時の説得力を高めます。例えば、「服薬で◯◯まで血液検査での数値が落ちているから、運動を加えて数値を◯◯までもっていきましょう」といった具合に、服薬指導に具体性を持たせることで患者さんにもわかりやすい服薬指導ができるはずです。長期服薬が基本となる生活習慣病の服薬指導では、具体的な数値があれば目標設定がしやすく、患者さんのモチベーション維持も期待できます。

 

➢ 空腹時血糖、HbA1cで食事傾向を把握する

過去1~2ヵ月の血糖状態を反映するHbA1cは、患者さんの食傾向を把握する重要な鍵となります。甘いものが好き、ごはんやめん類など炭水化物を過量に摂取する傾向がある、など臨床検査値から患者さんの日常の食事量や間食についてを読み取ってみましょう。糖尿病予備軍を早期発見することにもつながり、予防医療を交えた服薬指導が行えます。

臨床検査値を疑義照会にも活かす

患者さんへのヒアリング内容から薬の減量や処方薬の変更が必要だと判断する場合、疑義照会をしても医師にはなかなか提案を受け入れてもらえないことがあります。このときもヒアリングというあいまいな根拠ではなく、臨床検査値に基づいた提案であれば、医師にも納得してもらいやすいでしょう。
かかりつけ薬剤師であれば臨床検査値の推移も把握することができます。数値の推移から論理的に減量や処方変更の必要性を訴えることで、疑義照会とともに、より具体的な提案ができるのではないでしょうか?

臨床検査値の理解は症状の具体的な把握につながる

臨床検査値が記載された処方箋は、まだまだこれからの普及を期待されているものです。しかし今後、電子処方箋が広がるにつれ、その枚数も増えていくことが考えられます。処方箋に臨床検査値を記載する動きが広がる今こそ、臨床検査値を読み取る力をつけて、患者さんへの提案力も向上させましょう。かかりつけ薬剤師としての職能を、より発揮することができるはずです。