薬剤師の接遇マナー・テクニック 更新日:2023.03.23公開日:2015.08.12 薬剤師の接遇マナー・テクニック
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー
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薬歴を書く時間がとれない
薬歴を書く時間がとれない

新卒の薬剤師です。私が配属された薬局は毎日とても忙しく、薬歴を書く時間がなかなか取れません。周囲の先輩は手が空いたときに少しずつ書いているようですが、私はまだ慣れていないのでそこまでの余裕を持てず、残業して書いています。記憶違いもありそうで不安なので何とかしたいのですが、どうしたらよいでしょうか。

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薬歴は患者さんのために残す大切な記録

忙しい薬局だと薬歴を書く時間が取れず、悩む人が多いようです。この相談者さんは新卒1年目なので、これからある程度は慣れていくと思いますが、ベテランの薬剤師であっても人によって薬歴を仕上げるスピードには差があります。また、電子薬歴の場合、PCが少なくて順番待ちのような状態になり、空いているタイミングを図っているうちにどんどん未処理の薬歴がたまってきてしまうということもあるようです。
しかし、薬歴の作成は監査や投薬と同様、薬剤師にとって必須の業務であり、決して投薬に伴う「雑務」ではありません。薬歴は、患者さんが安心して薬を飲み続けられるように記録するものですから、「何を聞いたか忘れてしまった」という理由で未記入があったり、ましてや記憶違いで誤った情報を書いてしまうということは絶対に避けなければいけません。また、次回以降のために他の薬剤師にもわかりやすく書くのは当然のことです。

何を聞いて伝えるか、事前に準備して会話にひと工夫を

薬歴をスムーズに記入するコツは、実は投薬に出る前にあります。患者さんをお呼びする前に、処方内容と過去の薬歴から「今日は何を聞くか、何を伝えるか」をあらかじめ準備しておくのです。その内容を先にメモしておけば、答えだけ書けば済むので時間の短縮にもなります。また、患者さんへの質問の仕方もポイントになります。漠然と「調子はどうですか?」と聞けば、とりとめなく話し出す方もいるでしょう。そのため「この前、新しくしたお薬を飲んで、吐き気で具合が悪くなることはなかったですか?」などと、具体的に聞くのです。すると、患者さんは「はい」「いいえ」で答えてくれるため、薬歴には「吐き気SEなし」と簡潔にポイントを書くことができます。
薬歴を書くのが遅くなるのは、色々なことを聞きすぎて何を書けばいいかわからなくなったり、要点をまとめられなかったりするから。ポイントを絞ったやりとりで聞くべきことをきちんと聞けるように、薬剤師側がひと工夫しましょう。それによって適切なアドバイスが可能になり、薬歴にも残しやすくなります。

患者さんとの会話はポイントを中心にメモ

あとは基本的なテクニックとして要点のみをメモするくせをつけること。会話をそのまま書きとるのではなく、あとで思い出せる程度に「膝痛↓、歩き、楽しい」のように短く、単語や数字などポイントをメモすることです。また、「SE(副作用)」などのように略字を使いこなすことも大切。電子薬歴の場合は「s」と入力したら「SE」と出てくるように単語登録をするなど、少しでも効率的に作業が進められるよう、使えるツールはフル活用しましょう。
ちなみに、メモをとる際に別の紙や付箋などを利用する人もいますが、個人的にはあまりおすすめしません。メモ自体がなくなる可能性があるので、私は処方せんの裏面などの余白部分を利用します。これなら紛失の心配は少ないですし、患者さんを取り違えるミスも減らせます。
ポイントは「投薬前」にあり! 質問を準備し、要点のみメモすることで薬歴記入がスムーズに。
ポイントは「投薬前」にあり! 質問を準備し、要点のみメモすることで薬歴記入がスムーズに。

村尾 孝子
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
株式会社スマイル・ガーデン : http://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: http://smilegrdn.exblog.jp/
薬剤師さんからの質問大募集!村尾孝子先生が、あなたの質問にお答えします
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