薬剤師の接遇マナー・テクニック 更新日:2023.03.23公開日:2016.08.24 薬剤師の接遇マナー・テクニック
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー

調剤過誤が起きた場合の謝り方
調剤過誤が起きた場合の謝り方

患者さんに規格の異なる薬を渡してしまい、帰宅された患者さんからクレームの電話が入ってご自宅まで謝罪へ行くことになりました。上司は「ひたすら謝るしかない」と言いますが、電話でもかなりお怒りの様子だったので、何と言って謝罪をすればいいのか、許していただけるのか、不安でたまりません。本当に「ひたすら謝る」だけでいいのでしょうか。

Answer
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謝罪はなるべく早く。服装などにも気を配って

調剤過誤はあってはならないこと。二重、三重とチェックをして防ぐべきですが、それでも起こってしまうことはあるものです。結論から言うと上司の方が言う通り、ひたすら謝るしかありません。ただし、闇雲に「申し訳ありませんでした」を繰り返すだけでは謝罪しているとは言えません。そういう意味では“ひたすら”というよりも“徹底的に”と言い換えた方がふさわしいですね。
 
まず、謝罪にうかがうタイミングは“できるだけ早く”。先方の都合を最優先しますが、少なくとも連絡があったその日のうちが望ましいでしょう。その際は服装や髪形、メイクなどにも気を配って。お詫びするのにふさわしい、きちんとした控えめな身なりで臨みます。
 
クレーム応対についての講演でいつもお話ししているのは、“ボディランゲージと言葉、表情”の3つを一致させるということ。いくら言葉で「申し訳ございません」と謝っても、表情や態度が伴わなければ気持ちは伝わりません。これらをすべて踏まえたうえで、あとは誠心誠意お詫びするしかありません。その際には同じ言葉を繰り返すのではなく、「たいへん失礼いたしました」「今後十分に気をつけてまいります」「ご迷惑をおかけしまして申し訳ございません」など、謝罪の言葉にバリエーションをつけると、より一層気持ちが伝わりやすくなります。場合によっては自分のミスではないケースもあるかもしれませんが、そこは薬局全体としての連帯責任。心を込めて“徹底的に”お詫びしてください。

「失敗をチャンスに変える」という意気込みを持って臨む

患者さんの話をしっかり聞き、謝罪が一段落した後は「なぜ、今回の間違いが起こってしまったか」という理由を説明します。間違い防止のために普段行っている対策についてもしっかり説明してください。経緯についてできるだけ詳しく説明することで、納得しやすくなるからです。そして、次回以降間違いが起こらないよう、どのような対策をとる方針であるかも伝えます。その際は「今後、○○さんのお薬については……」など、患者さんの名前を入れるといいでしょう。名前を入れることで「あなたに謝っています」「あなたの薬についての対策です」と強調して、真剣に対策を考えていることや本当に申し訳なく思っている気持ちを伝えることができます。
 
これらの経緯は薬歴にしっかり残し、次回、この患者さんの薬をお渡しする際に「先日はたいへん失礼いたしました」の一言を添えることを忘れずに。ここまで心を尽くしてお詫びすれば、患者さんも十分納得してくださるはずです。言うまでもありませんが、再度の間違いがないよう、細心の注意を払って確認を徹底しましょう。
 
よく言われることですが、クレームはチャンスでもあります。クレームを受けた際に全力で謝罪し、その後の対応を充実させることで「ここまでやる薬局(薬剤師)なんだ」と思われればファンになってくださる可能性が高いからです。謝罪に行くのはとても不安で気が重くなるでしょうが、「この謝罪でファンになってもらおう!」と気持ちを奮い立たせ、がんばってください。
“ボディランゲージ”と“言葉”、“表情”の3つを一致させて「徹底的に謝ること」がコツ
“ボディランゲージ”と“言葉”、“表情”の3つを一致させて「徹底的に謝ること」がコツ

村尾 孝子
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
株式会社スマイル・ガーデン : http://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: http://smilegrdn.exblog.jp/
薬剤師さんからの質問大募集!村尾孝子先生が、あなたの質問にお答えします
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