薬剤師の接遇マナー・テクニック 更新日:2024.01.16公開日:2022.11.08 薬剤師の接遇マナー・テクニック
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー

Q154 薬の在庫切れが発生した時の接遇マナー
Q154 薬の在庫切れが発生した時の接遇マナー

在庫がなくて薬の不足分が発生した際、遠方の患者さんや年配の患者さんには後日配達をしています。ご不在で直接お渡しができなかった際、お詫びの言葉を書いたものを添えて良いかと管理薬剤師に相談したところ「そんなことしなくて良い」と言われてしまいました。結局薬袋だけをポストに入れましたが、やりきれない気持ちです。一筆あったほうが患者さんに寄り添えていると思うのですが、管理薬剤師の判断が正しいのでしょうか。

Answer
Answer

対応方法について管理薬剤師とよく話し合いましょう

調剤薬局が全国の処方せんを受け付けるとうたっている以上、在庫切れや不足薬の発生はどの薬局でも起こり得ることです。一般的には、近隣の薬局から借りる・譲渡してもらう、至急配達を依頼する等の方法で不足薬を手配。患者さんの要望を確認して、再来局してもらう、配達する、郵送する、のいずれかの方法でお渡ししていると思います。
 
在庫切れや不足薬が生じた時に一番大切なのは、すばやく状況を説明して患者さんの希望や都合を聞くこと。対応の仕方次第で、患者さんの薬局への信頼度が増したり、ファンになっていただけたりするかもしれないので、丁寧な対応をしたいところですね。

 

 
薬局のルールがある場合は、それに従うのがふさわしい対応でしょう。とはいえ、不足薬のお詫びの方法や詫び状について細部まで決めている薬局は案外少ないかもしれません。患者さんの命を預かる医療者としてすばやく連携がとれるよう、あらかじめ管理薬剤師や上司とよく話し合っておきましょう

 
► 【関連記事】薬の在庫がないと怒り出す患者さん

 
実は私自身、相談者さんと同じように「お詫びの言葉を添えたい」と申し出て上司から否定された経験があります。その時私が相当腑に落ちない顔をしていたらしく、上司が「好きにしていい」と言うので、不足薬に手書きで一筆添えました。
 
私は運よくOKをもらえましたが、上司に「絶対にダメ」と言われたら従うしかありません。患者さんにすばやく説明するためにも、管理薬剤師がなぜ必要ないと考えるのか、相談者さんはどうして一筆添えたいと思うのか、などをしっかり話し合ってほしいと思います。

 

お詫びも信頼関係を築くためのコミュニケーションと考えて

一筆添えるのが良いかどうかを考える以前に、大切にしたいことがあります。配達をする場合、本来であれば直接患者さんに手渡しができるよう、あらかじめ在宅の時間を確認して訪問するのが理想的です。まずはこれを徹底することを優先しましょう。
 
今回の相談は、約束の時間に訪問したにもかかわらず不在だった場合や患者さんのご希望で「ポストに入れてほしい」と言われた場合など、やむを得ない事情の際の対応であることを忘れないでほしいと思います。不在の際の対応について薬局のルールが決まっていないのであれば、せめて書面でお詫びを伝えてほしい、と私は思います。

 
► 【関連記事】調剤過誤が起きた場合の謝り方

 
薬を受け取る患者さんの気持ちを考えれば、一筆入っていて納得する人こそあれ、不快に感じる人はいないように感じます。

 

 
一筆添える場合、ビジネス文書のお詫び状でももちろんいいのですが、頭語で始まり結語で終わる形式はいかにも事務的な印象を与えます。そこで、処方せん受付時にすでにお詫びを直接伝えていることをふまえて、一筆箋を使って手書きでお詫びのひと言を添えてもいいでしょう。患者さんに誠意が伝わりやすく、信頼関係を築くきっかけになります。いずれの場合も、お詫び状には以下3点を忘れずに記載しましょう。

 

<お詫び状に記載したい3つのポイント>
・薬局の不手際を認め、迷惑をかけたことをお詫びする
・対処方法を述べる(不足分を郵送する等)
・同じ失敗をしないよう対策を講じるなど、反省と努力の旨を述べる

 
薬の不足によって迷惑をかけたり不安な気持ちにさせたりしたことは事実ですから、お詫びするのは当然のマナーだと思います。お詫びも患者さんとの信頼関係を築くための大切なコミュニケーションと捉えて、患者さんの立場になって考える姿勢が欠かせません。

 

服薬指導が一方通行にならないように、患者さんの様子を見て臨機応変に姿勢を変えましょう
服薬指導が一方通行にならないように、患者さんの様子を見て臨機応変に姿勢を変えましょう

 

■薬剤師のコミュニケーションに関する記事をもっと読む

村尾 孝子
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
薬剤師さんからの質問大募集!村尾孝子先生が、あなたの質問にお答えします
薬剤師さんからの質問大募集!村尾孝子先生が、あなたの質問にお答えします
今さら人に聞けない接遇・マナー、クレームへの対処方法など、薬剤師さんからの質問を募集しています。カルテ情報(お名前、薬剤師歴、年齢、性別、勤務先種別)を記入の上、こちらからご応募ください。皆さんの質問に、村尾孝子先生がわかりやすくお答えします。

※投稿者の特定を避けるため、一部内容を変更して掲載しております。