来局した高齢の患者さんから「いろいろな薬を飲みすぎて、かえって体調が悪くなっている気がする」「薬を減らしたら良くなるのかしら？」という相談を受けました。ただ、実際に減薬することへの不安も感じているらしく、医師にはまだ相談できていないそうです。こういった場合の薬剤師の対応について、アドバイスをいただきたいです。

近年、ポリファーマシー解消に向けた取り組みが求められていることから、薬剤師の減薬提案の機会も増えていると思います。
 
今回のケースは、医師に伝える前に薬剤師に相談してくれていることから、薬剤師への信頼が高いことが伺えます。相談してくれたことへの感謝の気持ちを伝えつつ、患者さんの不安をしっかり受けとめ、丁寧に対応しましょう。

 

 
減薬提案のきっかけとしては、服薬指導の中で薬剤師が多剤併用による有害事象を疑うケースが多いように思いますが、今回は患者さん自身による多剤併用への不安や疑問です。もともと服用薬が多くて負担に感じていたのかもしれません。患者さんの不安を受けとめ、どのように体調がすぐれないのか丁寧にヒアリングすることから始めましょう。
 
ポリファーマシーとひとことで言っても、その内容は患者さんによってさまざまです。高齢患者さんは、何か症状を訴えるたびに薬が処方され、いつのまにか薬の種類が増えてしまった、というケースが多いようです。現在どのような症状があるのかに加えて、薬が処方されたときの症状なども併せて聴くといいでしょう。患者さんの話を受けとめた上で、ポリファーマシーは体調不良の原因になり得ること、減薬により体調が良くなる場合もあることなどを説明しましょう。
 
また、患者さんは減薬することへの不安も感じているようです。患者さんの立場になって考えると、「薬を減らす＝一気にすべて止める」というイメージを持っているのかもしれません。減薬するかどうかは医師が判断することですが、実際に減薬することになった場合、急にすべてを止めることはなく、少しずつ薬を減らして様子を見ることが多いので、医師の指示に従えば心配はないと伝えると、患者さんの不安解消につながります。

 
🔽 薬局での患者さんへの対応に関する相談に回答した記事はこちら
薬剤師の接遇マナー・テクニック Q178 「救急箱の中身に何を入れる？」薬剤師からのアドバイス方法

患者さんの話をひと通り聞いたら、多剤併用の問題解決のための流れを説明しましょう。患者さんから医師に相談するのが一番スムーズですが、お世話になっている医師に「薬を減らしてほしい」と言うことに抵抗を感じている患者さんは少なくありません。

 

 
減薬を相談された医師が嫌がったり怒ったりすることは基本的にはないはずですが、「医師に嫌われたくない」「処方してくれた先生に申し訳ない」などと考えて、相談をためらってしまう患者さんが多いのも事実です。医師はどんな症状でも悩みでも相談してほしいと思っていることを、患者さんに丁寧に説明しましょう。それでも患者さんから言い出せないということであれば、薬剤師から医師に相談することも可能であると説明するといいでしょう。
 
患者さんの要望があれば、服用薬剤調整支援料1の算定を念頭に、積極的に医師へ情報提供して減薬の提案をおこないます。患者さんとの信頼関係を維持しつつ、患者さんが安心して薬物治療に臨めるよう、誠心誠意努めてほしいと思います。

薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日　同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling！」: https://smilegrdn.exblog.jp/