第64回 阿部翔太 先生
日々の発注業務、月末の在庫調整、年に数回の棚卸しなどの医薬品の在庫管理。
不足薬がないように調整すると在庫金額がふくらんで本社から注意を受けてしまったり、逆に在庫を絞ったら不足薬が出て、患者さんに迷惑をかけてしまったり……。誰もが一度はこのような経験をしたことがあるのではないでしょうか。
不足にも過剰にもなり過ぎない医薬品の在庫の調整はどのように行えばいいのでしょうか。
今回は、医薬品在庫管理のコツについて阿部翔太先生にお話をうかがいました。
1000を超えることもある医薬品の種類や量をやみくもに減らすだけでは、在庫の管理はなかなかうまくいきません。まずは前回ご説明したように、1ヵ月間の医薬品の出入りを把握します。数量の多い薬は場所をとりがちですから、その薬を処方されている患者さんが定期的に来局しているかどうかも合わせて確認してみましょう。また、花粉症とインフルエンザの薬はシーズンが過ぎたら返品するなど、余剰にならないよう気を配る必要があります。
次に、効率よく在庫金額を抑えるには、在庫金額を引き上げている「薬価の高い医薬品トップ50」に注目します。ここで洗い出した「トップ50の医薬品」については、他の医薬品よりも少し丁寧に在庫管理しましょう。
まずは過去3ヵ月~1年間のこれらの薬の出入りを確認し、それぞれの適正な在庫量を判断します。最小の包装は何錠になるか、卸に確認した上で発注する際の最小単位を決定し、スタッフ全員に周知します。
「薬価の高い医薬品トップ50」については、薬局のメンバー全員が在庫の動きを把握できるようにしておきましょう。全員が意識していれば、より効率的に在庫金額を抑えることができるはずです。
これまでにご紹介してきたように、薬局のメンバー全員で在庫管理に取り組んでいくと
- ・発注過剰になると、在庫金額を圧迫してしまう医薬品の種類
- ・不足薬を出して患者(顧客)を逃すことによる利益の損失
- ・不動在庫が廃棄されることによって失われる薬局の資産
などのコスト意識が身につくようになります。
さらに、薬局のメンバーが必ず目を通す連絡ノートやカレンダーなどに週次の在庫金額や在庫量を記録して周知し、管理すべき数値を意識できるような仕組みを作ることも効果的です。
特定のメンバーだけが在庫管理業務を担当していると、それ以外のメンバーはコスト意識が育ちづらくなります。それどころか担当者が異動した場合、適正な在庫管理をするための仕組みをもう一度作り直す必要が出てきてしまうかもしれません。
全員で在庫管理業務に取り組んでいく体制を作り、薬局全体で在庫管理業務がうまく回っていくようにしていきましょう!
薬局を3店舗経営するほか、不動医薬品販売サイト「エコ薬」の運営などを手がける。