第47回 成井繁 先生
「精神科領域の薬物療法が苦手」、「服薬指導に自信がない」という薬剤師は少なくないようです。そんな苦手意識を克服し、もう一歩踏み込んだ服薬指導を実践していくためにはどうすればいいのでしょうか。
今回は薬局薬剤師として初となる精神科薬物療法認定薬剤師の認定を受け、精神科の患者さんへの意欲的な服薬指導を実践している、成井繁先生にお話をうかがいました。全5回のシリーズです。
原稿/高垣育(薬剤師・ライター)
※商品名は種類が多いため、一部の先発品のみの記載となっています。
※商品名は種類が多いため、一部の先発品のみの記載となっています。
精神科の患者さんが苦手だという薬剤師の声をよく耳にしますが、いったい何が原因で薬剤師たちは精神科の患者さんに苦手意識をもつようになってしまったのでしょうか。
理由は大きく3つあるようです。
私たち薬剤師は、例えばアトルバスタチン(商品名:リピトール)が処方されていたら「高コレステロール血症」、アムロジピン(商品名:ノルバスク)が処方されていたら「高血圧症」といったように、処方薬をみて「薬=疾患」とほぼ、1:1の関係で薬品名から疾患名を導き出すことができます。
しかし、それが必ずしもうまくいかないのが精神科の薬剤です。
例えばクロルプロマジン塩酸塩(商品名:ウインタミン、コントミン)が処方されていた場合、その患者さんが「統合失調症」の診断で服用しているのか、それとも「双極性障害」の診断で服用しているのか、場合によっては睡眠効果を高める目的に処方されることもあります。その鑑別がつけられない場合が多々あります。
1.の理由から服薬指導をする際の会話の入り口になる言葉が出てこないため、当たり障りのない服薬指導に終始してしまいがちです。何回も通ってもらっているのに患者さんのことを理解できないまま時間が経過してしまうケースも少なくないようです。
1.、2.のような状況が続くと、患者さんと踏み込んだ話ができないため、良好なコミュニケーションを築くのが難しい状況になります。こうしたコミュニケーション不足が背景にあると、薬剤師が何気なく発した言葉が患者さんの不安をあおることになりがちです。
そうして医師からは「薬局で余計なことを言うから、患者さんが不安がって薬を飲まなくなった。どうしてくれるんだ」と言われるなど、トラブルに発展してしまう。これによって医師とのコミュニケーションもますます取りづらくなり、悪循環にはまってしまうなどの例が挙げられます。
まずは「苦手意識」という問題をクリアするために、課題を明確にしましょう。
薬剤師が達成しなければならない目標は『患者さんに薬物療法に参加してもらい、服薬コンプライアンスを良好に保ってもらう』。このゴールにたどり着くための道筋を考え、その途中にあるクリアすべき課題は何か挙げていくのです。
「服薬を継続してもらう」というゴール達成のためには「患者さんに疾患のことを知ってもらい、服薬の意義を理解してもらう」ことが必要です。
それには、患者さんにしっかり向き合い服薬指導をする必要があります。それだけではなく、患者さんの方からも質問しやすい雰囲気・環境づくりを心がけましょう。
そのためにまず大切なのは「患者さんとのコミュニケーション」です。
精神科にかかる患者さんは、ほかの一般身体診療科に比べて真面目で神経がこまやかな方が多いのです。病院にかかるまでにも、真剣に悩みを訴えても「そんなのは気にしすぎ」など、周囲の人からとりあってもらえずに傷ついている人も多くいます。患者さんがどんな症状を訴え困っているのか、受診の理由をしっかり受け止め、信頼関係を構築しましょう。
また患者さんが自分のことを話しやすくなるように、薬局内の環境を整えることも大切です。薬剤師を患者さんごとの担当制にしたり、プライバシーを保てるようにパーテーションを設置したりしてもよいでしょう。
精神科の患者さんが苦手だという薬剤師の声をよく耳にしますが、いったい何が原因で薬剤師たちは精神科の患者さんに苦手意識をもつようになってしまったのでしょうか。
理由は大きく3つあるようです。
私たち薬剤師は、例えばアトルバスタチン(商品名:リピトール)が処方されていたら「高コレステロール血症」、アムロジピン(商品名:ノルバスク)が処方されていたら「高血圧症」といったように、処方薬をみて「薬=疾患」とほぼ、1:1の関係で薬品名から疾患名を導き出すことができます。
しかし、それが必ずしもうまくいかないのが精神科の薬剤です。
例えばクロルプロマジン塩酸塩(商品名:ウインタミン、コントミン)が処方されていた場合、その患者さんが「統合失調症」の診断で服用しているのか、それとも「双極性障害」の診断で服用しているのか、場合によっては睡眠効果を高める目的に処方されることもあります。その鑑別がつけられない場合が多々あります。
1.の理由から服薬指導をする際の会話の入り口になる言葉が出てこないため、当たり障りのない服薬指導に終始してしまいがちです。何回も通ってもらっているのに患者さんのことを理解できないまま時間が経過してしまうケースも少なくないようです。
1.、2.のような状況が続くと、患者さんと踏み込んだ話ができないため、良好なコミュニケーションを築くのが難しい状況になります。こうしたコミュニケーション不足が背景にあると、薬剤師が何気なく発した言葉が患者さんの不安をあおることになりがちです。
そうして医師からは「薬局で余計なことを言うから、患者さんが不安がって薬を飲まなくなった。どうしてくれるんだ」と言われるなど、トラブルに発展してしまう。これによって医師とのコミュニケーションもますます取りづらくなり、悪循環にはまってしまうなどの例が挙げられます。
まずは「苦手意識」という問題をクリアするために、課題を明確にしましょう。
薬剤師が達成しなければならない目標は『患者さんに薬物療法に参加してもらい、服薬コンプライアンスを良好に保ってもらう』。このゴールにたどり着くための道筋を考え、その途中にあるクリアすべき課題は何か挙げていくのです。
「服薬を継続してもらう」というゴール達成のためには「患者さんに疾患のことを知ってもらい、服薬の意義を理解してもらう」ことが必要です。
それには、患者さんにしっかり向き合い服薬指導をする必要があります。それだけではなく、患者さんの方からも質問しやすい雰囲気・環境づくりを心がけましょう。
そのためにまず大切なのは「患者さんとのコミュニケーション」です。
精神科にかかる患者さんは、ほかの一般身体診療科に比べて真面目で神経がこまやかな方が多いのです。病院にかかるまでにも、真剣に悩みを訴えても「そんなのは気にしすぎ」など、周囲の人からとりあってもらえずに傷ついている人も多くいます。患者さんがどんな症状を訴え困っているのか、受診の理由をしっかり受け止め、信頼関係を構築しましょう。
また患者さんが自分のことを話しやすくなるように、薬局内の環境を整えることも大切です。薬剤師を患者さんごとの担当制にしたり、プライバシーを保てるようにパーテーションを設置したりしてもよいでしょう。
1989年明治薬科大学卒業。2015年10月に日本病院薬剤師会が認定する「精神科薬物療法認定薬剤師」の認定を薬局薬剤師として初めて受け、特に精神科領域の患者さんへの薬物治療に尽力し、地域医療に貢献している。