中堅薬剤師がさらにステップアップできる研修への取り組み方
中堅ともなると管理薬剤師に指名されることもあり、任される仕事も増えていきます。忙しい業務のなかでは、「現状維持が精一杯」と感じる方もいるかもしれません。しかし、さらなるステップアップを目指すためにも、日々の勉強は大切です。
ちょっとしたスキマ時間を利用して、まずは自己研修から取り組んでみましょう。たとえば大手製薬会社の一部では、インターネットを通じてさまざまな情報を提供しています。医療関係者だけが閲覧できるサイトがあり、会員登録することで最新の医療情報から薬事法関係、新薬に関する論文などが確認できることも。さらに、介護のコツや患者さんとのコミュニケーション方法など、中堅薬剤師なら知っておくべき情報が満載です。
少し時間に余裕ができたら、大学の卒後研修や薬剤師会主催のセミナー、MR主催の研修会などに参加するのもよいでしょう。なかでも、注目すべきは中堅薬剤師を対象とした実技研修です。緩和ケア実習のように、座学だけでなく実習として学ぶことで、実務的なスキルアップにつながります。
認定・専門薬剤師資格を取得しよう!
これまでの実務経験を活かすためにも、「認定・専門薬剤師」の資格取得に向けて動きはじめましょう。専門薬剤師になるには、大学院卒と同程度の専門知識が必要とされています。高いレベルが求められるため難関ではありますが、価値の高い資格です。今後のキャリアアップのためにも、専門薬剤師資格に挑戦してみてはいかがでしょうか。
専門薬剤師には、妊婦・授乳婦専門薬剤師や感染制御専門薬剤師、精神科薬物療法認定薬剤師などがあります。なかでも注目度が高く、その役割をイメージしやすいのは「がん専門薬剤師」でしょう。
一例として、「がん専門薬剤師」資格取得を目指す際に受けておきたい研修を紹介します。
がん専門薬剤師資格取得に必要となるカリキュラム
がん専門薬剤師資格を取得するためには、5年以上の実務経験が必要です。その他に指定される研修カリキュラムに沿って、5年以上の研修経験も求められます。学ぶ内容は大きく分けて3つ。臨床関係の知識、知っておくべきがんの症例、薬物療法に関する知識です。
がんに関する幅広い知識が求められるため、地域薬剤師会の主催で集中講座が開催される場合もあります。資格取得までに身につけるべき知識や研修の例を下記にまとめました。
臨床関係の知識
- 各種がんの所見、診断などの基本的知識や各病期のステージに分ける。
- 外科、放射線、薬物、この3つの療法の特徴と、3つを組み合わせた集学的治療を学ぶ。
- 各種がんの根治的治療、進行再発治療、術前、術後の補助化学療法に分けて研修を受ける。
- 再発、転移後の治療法などの研修をし、症状のマネジメントを把握する。
- 緩和ケア、在宅ケアについて学ぶ。
知っておかなくてはいけないがん
主に、胃がん、大腸がん、乳がん、肺がん、造血器腫瘍。
研修施設によっては上記以外の症例知識が対象となる場合もあります。
がん薬物療法関係の知識
- 各種抗がん剤の基礎的知識と応用薬学知識を修得する。
- 各種抗がん剤の保険適応範囲での効能効果、用法用量、また使用上の注意などの研修を受ける。
- 主要ながんの標準レジメン管理に必要な情報、知識を取得する。
- 各種抗がん剤の副作用に対する対処法や支持療法に関する知識を修得する。
- 緩和ケアにおいて、がん性疼痛を緩和させる方法の研修を受ける。
- キャンサーボードにおける薬剤師の役割を考える。
- 抗がん剤の臨床試験、治験においての薬剤師の役割を考える。
薬剤師同士が互いに発表し合うグループ研修
講演形式の受け身な研修ではなく、さまざまな施設の薬剤師が集まり、自分たちの研究を発表し合う「グループ研修」を開催するところもあります。10~20人程度のグループで、薬薬連携を行ってきた病院や調剤薬局、ドラッグストアなどの薬剤師が自主的に行うものです。ときには医師や栄養士、介護職スタッフを講師に招き、異業種のスタッフとの交流をはかることも。こうした活動は、研修認定薬剤師の単位取得にもつながり一石二鳥です。
中堅薬剤師は薬局の要
中堅薬剤師は、新人薬剤師のよき相談相手となる一方で、上司であるベテラン薬剤師から専門的な検証を求められる研究仲間でもあります。どちらに対してもフットワークよく動ける、中間管理職のような立場といえるでしょう。それだけに、どんなシーンでも対応できる知識の積み重ねが大切です。自分に合った研修方法を取り入れながら、さらなるスキルアップをはかりましょう。