患者情報の管理を見直しましょう
2012年、大手企業のチェーン薬局が「患者情報を収めたUSBメモリーを紛失した」と公表しました。薬局のレセコンを管理する会社のミスによるものであり、こうした状況はどこの薬局でも起こりえることでしょう。
このような情報の流出は、大小に関わらず日々起こっていることでもあります。薬局の窓口では患者さんの名前や、その病名や症状、使用する薬剤名までほかの患者さんに聞こえてしまうことがあります。本来なら改めるべき環境ですが、薬局が狭かったり、システムとして難しかったりする場合もあるでしょう。しかし患者さんにとっては、とても気になることです。
薬剤師から大声で話をされる環境では、患者さん本人も周囲の人も不快に感じてしまうのではないでしょうか。小さな薬局の窓口であっても患者情報の扱い方が信用問題に関わることを、もう一度見直してみましょう。
プライバシーに関わる会話で注意したいポイント
服薬指導においても、患者さんの日常を尋ねることは日常茶飯事でしょう。しかしプライバシーに関わる会話こそ、気をつけたい個人情報でもあります。病気や症状、家族のことなどは薬剤師として知っておきたい情報です。こうした会話を避けることはできませんが、できるだけ患者さんの情報が周りに漏れないよう、配慮しましょう。
特に注意したいのが、婦人科や泌尿器科の患者さん。病名を知られたくないと思う人は多く、口にするのを嫌がられるものです。まずは相手を不快にさせないように、興味本位で聞いているのではないということを、通常の病気以上に意識して伝えてみましょう。
例えば「今日はどのようなことで病院に行かれたのですか?」と聞く前に、「処方箋に書かれている薬は病気によって飲み方が違うので、安全に飲んでいただくために、少し詳しくうかがってもよろしいですか? 薬について先生から何かお聞きになっていますか?」など、質問する理由を患者さんに話しておきましょう。
さらに注意深く接するべきなのが、がん患者さんです。患者さんによっては病気であることを周囲には絶対に知られたくないと思う方もいらっしゃいます。このような場合のために、あらかじめがん患者さんのための質問票を作っておくとよいでしょう。質問票には病名、抗がん剤などの種類を明記し、薬剤師は病名や薬名などは口にせず、質問票の文字を指しながら、差し障りのない言葉だけを声に出すという方法です。こうすることで患者さんの情報が外部に漏れにくくなり、やり取りもスムーズになります。
患者情報の管理を徹底するための方法
個人情報を漏らさないためには、情報がほかの患者さんの目に触れない、または最初から漏れ聞こえないようにする環境づくりが大切です。
患者さんの視点をチェックするために、調剤室の外から薬局を見てみましょう。カウンターに立ってみたり患者さんの動線で動いてみたりすることで、不要な情報がないかを確認できます。
特に、カウンター内に患者名と薬の名前などが書かれた付箋を貼っている場合は要注意。貼っていたものがはがれ落ちて、カウンターの外に出てしまう可能性もあります。管理には十分に注意しましょう。
そのほかカウンターの奥行きを浅くして患者さんとの距離を縮めたり、カウンターにパーテーション(間仕切り)を設置して個別対応するのもよいでしょう。また耳の遠い患者さんの場合は薬剤師が大きな声を出すのではなく、簡易補聴器などを準備しておき、患者さんにとって聞こえやすい環境を用意しておきましょう。
家族間の情報提供にはどう対応する?
個人情報保護法では第三者に情報提供する場合は、その利用目的に関して本人の同意を得なければいけないことになっています。それは家族間でも同様です。
例えば患者さんの病気について家族から電話で問い合わせがあった場合、原則として、患者さんに確認を取り、同意を得なければ情報提供はできません。とはいえ、こうした確認の流れは現実的ではなく、クレームになることも考えられます。家族との連絡が必要な場合に備え、初回時に情報提供してもいい人を確認する質問票を設けておくとよいでしょう。前もって承諾を得ることができれば、急な対応時もスムーズです。
患者さんに寄り添う気持ちで、情報管理を
個人の情報管理も、あくまで患者さんのためのこと。薬剤師は患者さんの秘密を扱っているという気持ちを常に忘れず、応対しましょう。患者さんを守ろうとする意識が、情報管理の徹底につながります。