- 1.服薬指導のポイント
- 1-1.患者さんが求めていることを考える
- 1-2.臨床検査値を把握する
- 1-3.患者さんとのコミュニケーションで信頼関係を築く
- 2.服薬指導の会話例
- 2-1.頓服とは?
- 2-2.食前・食後・食間とは?
- 2-3.粉薬が飲めない
- 2-4.飲み忘れを防ぐには?
- 2-5.ジェネリック医薬品と先発医薬品の違いは?
- 2-6.ジェネリック医薬品のメリット
- 2-7.なぜ薬剤師が症状を聞くのですか?
- 2-8.なぜ残っているお薬があるかを確認するのですか?
- 2-9.薬の受け取りは代理人でもよいですか?
- 2-10.FAXでの処方箋受付
- 3.英語を使った服薬指導の会話例
- 3-1.症状の確認
- 3-2.用法用量と服用タイミング
- 4.患者さんのニーズに応える服薬指導を心がけよう
1.服薬指導のポイント
服薬指導は、薬剤師が患者さんに処方薬を渡す際に行うもので、患者さんが安全安心に服用できるように薬の情報を提供することを指します。まずは、服薬指導を行う上で覚えておきたい大切なポイントについて見ていきましょう。
1-1.患者さんが求めていることを考える
服薬指導では、処方薬の情報提供がとても大切です。同時に、患者さんが求めている情報を察知することも薬剤師の重要な仕事と言えます。
例えば、朝食を食べる習慣がない人や、夜勤があって生活リズムが一定ではない人などは、通常の服用方法では対応できません。患者さんの生活リズムに合わせた服用方法を伝える必要があるでしょう。
また、病院で服薬に関する説明を受けている場合、同じ説明を何度もされることに、患者さんはうっとうしさを感じてしまうかもしれません。患者さんの反応をチェックしながら、どんな説明があったかを確認し、補足する服薬指導に切り替える必要があるでしょう。
🔽 服薬指導のコツやポイントについて詳しく解説した記事はこちら
1-2.臨床検査値を把握する
患者さんの臨床検査値によって今の状態を把握できれば、服薬指導に生かせます。
例えば、糖尿病や高血圧などの治療を行う患者さんの中には、自覚症状がなく、本当に薬を飲む必要があるのかと、疑問に思っている人もいます。臨床検査値を用いれば、目標数値が明確になり、服用を継続するための目的を詳しく伝えることができるでしょう。
定期的に検査データを振り返り、患者さんと一緒に今の状態を把握することでモチベーションの維持を促せます。
🔽 臨床検査値と服薬指導について詳しく解説した記事はこちら
1-3.患者さんとのコミュニケーションで信頼関係を築く
服薬指導をスムーズに進め、アドヒアランス向上を目指すには、患者さんと信頼関係を築く必要があります。その際に役立つのが、「傾聴力」「雑談力」「提案力」などです。
患者さんが求めていることを引き出すには、傾聴力が欠かせません。臨床検査値を使って病状を確認したり、今の治療についてどう感じているのかを聞いたりするためにも、必要なスキルでしょう。雑談から生活習慣や食習慣などの詳しい情報を得られることもあります。
服薬指導では、傾聴や雑談を通して、患者さんの考え方や価値観を把握し、ニーズに沿った提案を行うことも重要なポイントです。
また、オンライン服薬指導では、対面と比べて得られる情報が少なくなりやすく、得られる情報に限界があります。対面よりも丁寧に説明や確認をしたり、分からないことがあれば、いつでも連絡するよう伝えたりすることが大切でしょう。
🔽 オンライン服薬指導について詳しく解説した記事はこちら
2.服薬指導の会話例
続けて、具体的な会話例を見てみましょう。患者さんが疑問を持ちやすい項目の会話例を紹介します。
2-1.頓服とは?
薬剤師:「食後など決められた時間に服用するのではなく、『頭痛時や発熱時、症状がひどいとき』など、医師に指示されたタイミングで服用してください。」
<補足>
1日に服用できる回数や服用間隔は薬によって異なります。分からない場合は、医師または薬剤師に確認するように促しましょう。
🔽 頓服薬について詳しく解説した記事はこちら
2-2.食前・食後・食間とは?
薬剤師:「食後は食事の後30分以内、食前は食事の1時間~30分前、食間は食事の2時間後が目安となっています。」
2-3.粉薬が飲めない
薬剤師:「ゼリーに包んで服用いただくか、オブラートを使用するのがおすすめです。」
<補足>
同じ成分でも錠剤やカプセル、シロップなど、散剤以外の選択肢があるケースもあるため、患者さんには医師や薬剤師に相談するように伝えましょう。
また、小児の場合、上記の方法以外に、少量の水で団子状に練って上あごに付ける方法や、チョコレートやバニラアイスなど特定の食材と混ぜて薬の味をマスキングする方法などがあることを伝えるとよいでしょう。
2-4.飲み忘れを防ぐには?
薬剤師:「数種類のお薬をタイミング毎にまとめる『一包化』という方法があります。」
<補足>
一包化は医師の指示が必要です。一包化指示を追加する場合は、医師に連絡するための時間が必要なことを患者さんへ伝えましょう。
また、一包化は通常より薬の準備に時間がかかる点も了承を得ておくと、後でトラブルになりにくく安心です。他にもお薬カレンダーやお薬ケースを利用する方法もあるので、患者さんのニーズに合わせて伝えましょう。
2-5.ジェネリック医薬品と先発医薬品の違いは?
薬剤師:「新薬と同じ有効成分で、効き目・安全性は同じです。」
<補足>
先発医薬品との違いは、色・形・添加物などが挙げられます。ジェネリック医薬品の中には、新薬よりも服用しやすい薬があります。
例えば、錠剤のサイズを小さくしたり、味や溶けやすさなどが改良されて飲みやすい粉薬になっていたりと、製薬会社ごとにさまざまな工夫がされていることを伝えるとよいでしょう。
2-6.ジェネリック医薬品のメリット
薬剤師:「ジェネリック医薬品は、従来よりも単価が安いものが多いため、お薬代の負担を減らすことができます。また、飲みやすく改良・工夫しているものもあります。」
<補足>
ジェネリック医薬品の使用率向上は、医療費削減に貢献します。薬剤師として、積極的に推進しましょう。
2-7.なぜ薬剤師が症状を聞くのですか?
薬剤師:「患者さんの安全を守るために症状を聞き、服薬指導に反映しています。」
<補足>
いつもの薬を服用していたとしても、その日の体調次第で副作用が現れることがあります。そのため、指導時には副作用の初期症状が出ていないかを確認しなければなりません。
また、同じ薬でも症状によって飲み方が異なることがあります。安全に服薬できるように、症状に合った用法用量になっているかを確認していることを患者さんに伝えましょう。
2-8.なぜ残っているお薬があるかを確認するのですか?
薬剤師:「誤服用を防ぐためです。」
<補足>
自宅に多くの残薬があると、新しく処方された薬との管理が複雑になり、誤服用のリスクが高まります。例えば、使用期限の古い薬が残っていたり、以前の薬と今の薬では服用方法が変更されていたりすると、誤服用してしまう可能性があります。こうしたリスクを回避するために、自宅に薬が残っているかを確認していることを伝えましょう。
また、処方された薬と同じ薬が自宅にたくさん残っている場合、医師の了解を得れば、残薬の調整ができます。自宅に残っている薬の数に合わせて、処方日数を調整することで、次回受診日までに無駄なく薬を使い切れるでしょう。医療費の節約にもなるので、薬が自宅に残っている場合は残薬の調整を提案しましょう。
2-9.薬の受け取りは代理人でもよいですか?
薬剤師:「有効期限内の処方箋の原本があれば、代理人でも受け取りが可能です。」
<補足>
服用薬との飲み合わせについて確認が必要な場合や、保険証の提示が必要な場合があるため、代理人は、服用する患者さん本人のお薬手帳や保険証を持参するよう伝えましょう。
2-10.FAXでの処方箋受付
薬剤師:「FAXでの処方箋受付を行っています。薬を受け取る際に、原本を持参してください。」
<補足>
FAXを使った処方箋受付では、処方薬は処方箋の原本との交換となることを伝えましょう。
また、薬剤師は、FAXと処方箋原本の内容に誤りがないか慎重に確認した上で、薬を渡すことが大切です。
3.英語を使った服薬指導の会話例
薬剤師は日本語が話せない人に服薬指導を行うこともあります。外国人旅行客などの場合、来局する目的は慢性疾患よりも風邪や怪我などの急性疾患である可能性が高く、服薬指導では確認事項が多くなります。
そのため、英語を使った服薬指導に苦手意識を持つ薬剤師も少なくありません。基本的なスキルとして、ここで紹介する代表的な英会話例を覚えておきましょう。
3-1.症状の確認
患者さん:
「I have a fever.(熱があります。)」
「I have pain.(痛みがあります。)」
「I have a cough.(咳が出ます。)」
「I have diarrhea.(下痢をしています。)」
薬剤師:「When did the symptoms begin to appear?(いつから症状が現れましたか?)」
患者さん:「for 3 days.(3日前からです。)」
薬剤師:「How high is your fever?(熱は何度ありますか?)」
患者さん:「38℃.(38℃です。)」
3-2.用法用量と服用タイミング
上記の例文を基本として、1日1回であればonce a day、1日3回であればthree times a dayなどと表現を入れ替えて伝えましょう。
🔽 英語での服薬指導について詳しく解説した記事はこちら
4.患者さんのニーズに応える服薬指導を心がけよう
服薬指導では、患者さんのニーズを把握するための傾聴力や、会話がしやすいと感じてもらえるように態度、話し方を工夫することが求められます。患者さんがどんな情報を求めているのかを聞き取ったり、察知したりして服薬指導に反映させましょう。
また、患者さんが分からないことを質問できるように促すスキルも薬剤師には必要です。薬剤師は患者さんのニーズに応えられる服薬指導を心がけましょう。
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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