薬局で患者さんの認知機能の低下に気づいたら
いつも几帳面な患者さんが洋服のボタンをかけ違えていたり、靴下の色が違ったりと、普段と違う様子がみられたら要注意。服薬指導やその前後の会話では、患者さんの小さな変化を見逃さないよう注意をはらう必要があります。
認知症は早期発見と早期治療がとても大切です。薬局で行う患者さんとのコミュニケーションは、認知症早期発見の糸口になります。
患者さんの発言や行動が気になったら、経過をチェックできるよう、その患者さんの「フォローリスト」を作成してみましょう。変化を感じた日付と内容を記録することで変化がわかりやすくなります。加えて、気になる言動に対して薬剤師がどのように対応したかを記載し、認知機能レベルを評価する欄も設けておくとスムーズに経過を観察できます。
患者さんの家族や本人への対応はどうする?
認知症の治療において、家族の理解とサポートは重要です。薬剤師として患者さんの変化に気づいたら、可能な限り家族に伝えたいもの。家族の心情に配慮しつつ、認知症の可能性を伝えて早期治療を促しましょう。家族に伝える場合、基本的には患者さんにも同席していただくことが望ましいですが、過敏な反応を示す患者さんは少なくありません。患者さんの立場に立って話し、常に尊厳を保つよう心がけましょう。
認知症患者さんの服薬サポートは多職種の応援を得て
認知症を悪化させないためには、服薬治療が必要です。多くは在宅での治療になるため、薬の自己管理ができなくなることを視野に入れた服薬サポートを検討する必要があります。ヘルパー、訪問看護師、家族にもお願いし、誰かが一人で抱え込まないよう連携して患者さんを見守る体制を整えます。そこで活躍するのが薬局で作成した「フォローリスト」。専門医師や地域との連携をとる際にフォローリストのような記録があれば、症状や病状の進行について具体的に伝えられます。
充実した認知症サポートを行うため、「認知症サポーター養成講座」などを受講してもいいでしょう。「認知症サポーター」は、認知症について正しく理解し、患者さんや家族を温かく見守る応援者として生活を支援しています。専門的な知識を得ることで、患者さんや家族からの信頼を得やすくなり、地域での見守り役として大きな役割を果たせるでしょう。
薬剤師だから気づけることをチーム医療に活かして
認知症の患者さんには、訪問薬剤管理指導を行うことも多くなります。そのメリットは、生活の様子をみて対応できること。治療の対象となる精神・行動症状(BPSD)が重く、薬の飲み忘れや誤飲がたびたび起こっている場合は、患者さんの状況を見極めたうえでサポートを検討することが求められます。
介護スタッフだけでは、誤飲や重複服薬による病状の悪化に気づきにくい面があります。薬剤師としての経験や知識を活かして患者さんの病気を早期発見できるよう、訪問時には生活の様子などもよく観察しましょう。また、かかりつけ薬剤師の場合は24時間対応のため直接連絡が入ることも増えます。営業時間外に連絡があった場合にはどのような対応を行うか、薬局としての方向性を決めておくとよいでしょう。