- 1. 50代薬剤師が持ちやすい年収にまつわる不安や不満
- 1-1. 老後の資金を蓄えられるか不安
- 1-2. 体力的な負担を抱えながら年収を維持できるか不安
- 2. 50代薬剤師の平均年収はどのくらい?
- 3. 働く地域や職場によって薬剤師の年収は変わる
- 3-1. 都道府県別平均年収
- 3-2. 職場別平均年収
- 4. 50代薬剤師にとって「納得できる年収」とは?
- 4-1. 役職定年後のやりがいとのバランス
- 4-2. 長く働き続けられる環境は貴重
- 5. 50代薬剤師の年収アップのコツ
- 5-1. 定年に向けてさらに上の役職を目指す
- 5-2. 転職で年収アップするには
- 6. 50代の薬剤師が納得できる年収を目指すために
1. 50代薬剤師が持ちやすい年収にまつわる不安や不満
年収に不安や不満を感じるといっても、その理由や事情は人によって異なります。まずは、50代の薬剤師が持ちやすい年収にまつわる不安や不満について考えてみましょう。
1-1. 老後の資金を蓄えられるか不安
薬剤師として働いていると、定年が近づくにつれ、今の年収で老後の資金を備えられるか不安になることがあるかもしれません。子供の教育費や住宅ローンといった高額な出費が重なったり、老後に向けた貯蓄についても気になり始めたりする年代だからです。管理薬剤師や薬局長などの役職に就いている薬剤師でも、役職手当や昇給率が低かったり、さらに上の役職に空きがなかったりすると、今後大きな年収アップが期待できないかもしれません。そういった状況で老後に備える余裕がないと、不安や不満につながります。
1-2. 体力的な負担を抱えながら年収を維持できるか不安
50代は、体力だけでなく視力や聴力、筋力などさまざまな面で40代と比較して思うように働けなくなったと感じることがあるでしょう。とくに長時間労働や夜勤がある職場の場合、疲労が蓄積されやすくなったと感じている人もいるのではないでしょうか。役職に就いている50代の薬剤師は、そうでない社員と比べて高い年収が得られるものの、責任のある立場のため精神的な負荷がかかることもあります。そのような体力的、精神的な不安を抱えながら働き続けられるかどうか、悲観することもあるでしょう。
2. 50代薬剤師の平均年収はどのくらい?
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、50代薬剤師の平均年収は、男性では50代前半で724.1万円、50代後半で705.7万円、女性では50代前半で618.7万円、50代後半で610.3万円とのことです。
薬剤師を含めた職業全体の平均年収は、男性では50代前半で707万円、50代後半で705.8万円、女性では50代前半で353.6万円、50代後半で374万円であったことがわかりました。20代薬剤師、30代薬剤師、40代薬剤師と同様、薬剤師は職業全体と比較して高水準の年収を得ていることがわかります。
■50代前半の薬剤師の平均年収と職業全体の平均年収
■50代後半の薬剤師の平均年収と職業全体の平均年収
※「所定内給与額」とは、6月分として現金給与額(控除前)から超過労働給与額(時間外勤務手当等)のこと。
※小数点以下第二位を切り捨て。
※年収は同調査における「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「その他特別給与額」で算出しています。
とくに50代の女性薬剤師は、職業全体と比較して約250万円も高い年収を得ているようです。この結果から、薬剤師という職種が他の職業に比べて、出産・育児などのライフスタイルの変化を経てもキャリアを継続させることができたり、復帰後にキャリアアップしやすかったりするのではないかと推察されます。
なお、同調査をもとに年代別にみていくと、男性薬剤師は40代後半で、女性薬剤師は50代前半で年収のピークを迎えています。
3. 働く地域や職場によって薬剤師の年収は変わる
薬剤師の年収は地域や職場によっても異なります。ここでは地域や職場別に薬剤師の平均年収を見ていきましょう。
3-1. 都道府県別平均年収
厚生労働省が行った「令和元年賃金構造基本統計調査」を参考に、都道府県別の平均年収をまとめました。ランキングは以下のとおりです。
■都道府県別・薬剤師平均年収ランキング
一般的に、都心の方が地方より収入が高いイメージがありますが、薬剤師の平均年収ランキングの上位3県には、東京都や千葉県といった首都圏は含まれていません。神奈川県が首都圏の中でもトップの11位で、続く茨城県が12位、東京都が20位、千葉県が24位、埼玉県が35位となっています。
平均年齢と平均年収にも相関性がないことから、年収の地域差については、街の規模や年齢よりも薬剤師の需要と供給のバランスが強く関係していることが考えられます。
3-2. 職場別平均年収
マイナビ薬剤師の調査によると、調剤薬局の平均年収は583.8万円、病院薬剤師の平均年収は521.7万円でした。病院勤務と比べて、調剤薬局勤務の方が年収は高いことがわかります。管理薬剤師や薬局長、エリアマネージャーなどの管理職に就いている50代薬剤師は、手当が多い分、年収が高くなりやすいでしょう。
4. 50代薬剤師にとって「納得できる年収」とは?
50代薬剤師が年収に納得するかどうかには、金額の多寡のみならず働き方もかかわってきます。ここでは、50代薬剤師にとっての「納得できる年収」のポイントについて見ていきましょう。
4-1. 役職定年後のやりがいとのバランス
役職定年がある職場では、役職を退いた後に今まで部下だった人が上司になったり、役職手当がなくなることで年収が下がったりします。長年、責任のある仕事を任されていた人は、年齢を理由に役職をおりることに不満を感じることもあるでしょう。また、立場や収入が変わることで仕事へのモチベーションを見失う人もいるかもしれません。
しかし、重要な役職を経験したのちに離れてみることで見えてくる景色もあります。職場の最前線は若手に譲ってサポートに回ったり、若手管理職の育成に注力したりして新たなやりがいが生まれるのではないでしょうか。これまでの経験を活かして新しい形で貢献することができれば、年収が下がっても満足度が向上することもあるでしょう。
4-2. 長く働き続けられる環境は貴重
「定年後も働きたい」と考えている薬剤師にとっては、再雇用制度を定めている職場や定年がない職場で働き続けることに大きな魅力を感じるのではないでしょうか。「人生100年時代」といわれるこれからの時代、60代、70代もこれまでのキャリアを活かして働き続けることができる環境は貴重です。将来的に希望通りの働き方ができる環境であれば、年収がいくらであっても納得のできる場合もあるのではないでしょうか。
5. 50代薬剤師の年収アップのコツ
年収アップをするために、現職に残るか転職するか悩む人もいるかもしれません。ここでは、50代の薬剤師が年収アップするためのコツについて解説します。
5-1. 定年に向けてさらに上の役職を目指す
現職で管理薬剤師や薬局長として働いている薬剤師は、さらに上の役職を目指すことで年収アップが期待できます。エリアマネージャーなどの役職を経験できるチャンスがあれば、積極的にアピールしましょう。常務取締役、専務取締役、代表取締役社長といった役職を目指すなら、医療の知識に加えマネジメントについて学ぶことも大切です。また、経営者としての知識を身につけたり、役職のある人とつながりを持ったりするなど、前向きに行動することでチャンスが広がります。
5-2. 転職で年収アップするには
薬剤師に限らず、50代の転職は難しい傾向にあります。採用側からみると、長く働いてもらえないのではないか、体力面・身体面での不安があるといった課題が多いからです。しかし、50代の薬剤師は豊富な経験や知識、スキルを持っているという強みもあります。今までの経験を武器に、今以上の役職を目指した転職を検討してみましょう。
転職での年収アップを叶えるためには、今までの経歴を棚卸しし、自身の強みを把握することが大切です。専門薬剤師や認定薬剤師を取得していたり、独自のスキルや経験があったりするのであれば、その専門性をアピールすることで転職にも有利に働きます。
6. 50代の薬剤師が納得できる年収を目指すために
50代の薬剤師は、さまざまな知識・経験・スキルを持った貴重な存在です。自身の強みを活用しながら、現職でのキャリアアップや転職によって年収アップを目指しましょう。ただし、働き続けることに心身の負担を感じるなら、収入よりも優先すべき条件があるかもしれません。50代の時期のみならず、60代、70代にどのような生き方をしていきたいかを考えながら納得のできる働き方を目指すことが大切です。
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🔽50代の薬剤師の転職について解説した記事はこちら
執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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