第30回 関口太郎 先生
患者さんに寄り添い、「一歩踏み込んだ服薬指導」をしたいと考えているものの、なかなか実践に結びつかないということはありませんか?
今回は横須賀の地に根ざし、ときには患者さん宅まで足を運んで服薬後のフォローアップを行うなど、地域の人たちの信頼に応える薬剤師・関口太郎先生にお話をうかがいました。全4回のシリーズです。
投薬した後、その後の経過がどうしても気になる患者さんがいます。どのようにフォローアップしていけばいいのでしょうか。
気になる患者さんがいたらフォローアップをすることは、薬剤師が行うべき大切な役割の一つだと思います。経過が気になる患者さん宅にうかがうことで、患者さんの生活や健康に関する新たな情報を得られることがあります。
以前、私が遭遇したケースですが、激しい下痢と嘔吐で受診した高齢のAさん。帰路につく足元もおぼつかず、心配だったので自宅までお送りしました。付き添って部屋に上がらせてもらったときに食卓の上に目をやると、食べかけのご飯があり、台所には生卵のパックが置かれていました。
卵を見て嫌な予感がし、患者さんに断って一つ割ってみると、ひどい匂いが立ちのぼってきました。卵が腐っており、Aさんはそれを食べたせいで嘔吐と下痢の症状を起こしていたのです。
細菌性の感染の可能性を考え、患者さんの許可を得てから医師に連絡すると、すぐに往診に駆けつけて下さいました。幸い感染は見つからず、Aさんの体調は順調に回復していきました。
毎月薬局にやって来るCさん。予約日にしっかり通院・来局はしてくれるものの、どことなく気になる患者さんでした。
ある日、薬を届けに行くついでに家の中にお邪魔してみると、居間に薬局のビニール袋に入ったままの薬が2袋分置かれていました。話を聞くと、「飲んでいない薬がたまっていくから、もうどれをどのように飲めばいいのかわからない」とのこと。
そこで、まずはCさんに薬を廃棄することの了承をもらい、不要な薬をすべて引き取って私の薬局で廃棄することに。そして、その日から飲む分の薬を整理しました。
すると、薬を整理しただけなのにも関わらずCさんの服薬コンプライアンスは改善し、それに伴って体調も安定するようになりました。
医師の指示なしで訪問をした場合、残念ながら薬局に金銭的な利益は生まれません。しかし、患者さん宅へ訪問すること自体は医師の指示がなくても行えることです。人数や時間の問題で訪問が難しい場合には、訪問ではなく電話1本でもいいのです。
「その後、具合はいかがですか? 困っていることはないですか?」と、声かけをしてみませんか。それだけで患者さんは「薬剤師さんが自分のことを考えてくれている」と前向きに治療に取り組んでくれますし、薬剤師との信頼関係を構築していくことにもつながっていきます。
また忘れてはならないのは、訪問で得た情報を患者さんの了承を得たうえで処方元にフィードバックすることです。「薬局に金銭的なメリットがないのに、どうしてそこまで……」と思われるかもしれませんが、こうした地道な活動が薬局と薬剤師への信頼感につながり、“地域で頼られる薬局”へと成長していくための糧になると、私は考えています。
気になる患者さんがいたらフォローアップをすることは、薬剤師が行うべき大切な役割の一つだと思います。経過が気になる患者さん宅にうかがうことで、患者さんの生活や健康に関する新たな情報を得られることがあります。
以前、私が遭遇したケースですが、激しい下痢と嘔吐で受診した高齢のAさん。帰路につく足元もおぼつかず、心配だったので自宅までお送りしました。付き添って部屋に上がらせてもらったときに食卓の上に目をやると、食べかけのご飯があり、台所には生卵のパックが置かれていました。
卵を見て嫌な予感がし、患者さんに断って一つ割ってみると、ひどい匂いが立ちのぼってきました。卵が腐っており、Aさんはそれを食べたせいで嘔吐と下痢の症状を起こしていたのです。
細菌性の感染の可能性を考え、患者さんの許可を得てから医師に連絡すると、すぐに往診に駆けつけて下さいました。幸い感染は見つからず、Aさんの体調は順調に回復していきました。
毎月薬局にやって来るCさん。予約日にしっかり通院・来局はしてくれるものの、どことなく気になる患者さんでした。
ある日、薬を届けに行くついでに家の中にお邪魔してみると、居間に薬局のビニール袋に入ったままの薬が2袋分置かれていました。話を聞くと、「飲んでいない薬がたまっていくから、もうどれをどのように飲めばいいのかわからない」とのこと。
そこで、まずはCさんに薬を廃棄することの了承をもらい、不要な薬をすべて引き取って私の薬局で廃棄することに。そして、その日から飲む分の薬を整理しました。
すると、薬を整理しただけなのにも関わらずCさんの服薬コンプライアンスは改善し、それに伴って体調も安定するようになりました。
医師の指示なしで訪問をした場合、残念ながら薬局に金銭的な利益は生まれません。しかし、患者さん宅へ訪問すること自体は医師の指示がなくても行えることです。人数や時間の問題で訪問が難しい場合には、訪問ではなく電話1本でもいいのです。
「その後、具合はいかがですか? 困っていることはないですか?」と、声かけをしてみませんか。それだけで患者さんは「薬剤師さんが自分のことを考えてくれている」と前向きに治療に取り組んでくれますし、薬剤師との信頼関係を構築していくことにもつながっていきます。
また忘れてはならないのは、訪問で得た情報を患者さんの了承を得たうえで処方元にフィードバックすることです。「薬局に金銭的なメリットがないのに、どうしてそこまで……」と思われるかもしれませんが、こうした地道な活動が薬局と薬剤師への信頼感につながり、“地域で頼られる薬局”へと成長していくための糧になると、私は考えています。
北海道医療大学卒後米国遊学。東京大学医学部附属病院薬剤部研修生。虎の門病院薬剤部入局。東京大学医学部附属病院薬剤部入局。平安堂薬局入社。その後、関口調剤薬局に入局し、現在に至る。地域の住民が気軽に立ち寄れる薬局づくりをめざし、管理栄養士による無料の栄養指導などを定期的に開催している。