薬剤師のスキルアップ 公開日:2015.07.06 薬剤師のスキルアップ

第28回 関口太郎 先生

患者さんに寄り添い、「一歩踏み込んだ服薬指導」をしたいと考えているものの、なかなか実践に結びつかないということはありませんか?
今回は横須賀の地に根ざし、ときには患者さん宅まで足を運んで服薬後のフォローアップを行うなど、地域の人たちの信頼に応える薬剤師・関口太郎先生にお話をうかがいました。全4回のシリーズです。

Q
投薬の際に「体調はいかがですか」と尋ねるたびに、「あまり良くならないのよね……」とおっしゃる患者さんがいます。薬の飲み忘れなどはなく、服薬コンプライアンスは良好です。何が原因なのかを探る、よい方法はないでしょうか。
サプリメントや嗜好品、患者さんの食生活に意外な落とし穴があることも

 

ビール酵母を使ったサプリメントの服用で尿酸値が上昇!?

 
私が心がけていることは、普段から患者さんの生活について詳しくうかがうことです。それにより、薬の効果の発揮を妨げている原因を思いがけないところから見つけることがあります。
 
たとえば、痛風で通院している患者のAさん。服用する薬の剤数が少ないので、毎日忘れず服薬を続けているのに、尿酸値が正常値に下がりません。
食生活を確認してみても、「晩酌にビールは飲まないし、レバー類、カツオ、白子などのプリン体を多く含む食べ物もなるべく口にしないように気をつけている」とのこと。
ある日、Aさん宅に薬を届けに行ったときのことです。
ふと、ちゃぶ台の上を見てみると、サプリメントの瓶が置いてありました。瓶のラベルを確認したところ、なんとビール酵母を使ったサプリメントです。
「これ、毎日飲んでいるの?」と尋ねると、「1日3回、毎日欠かさずに飲んでいるよ。おかげで体調がいいんだ」と答えます。このサプリメントは、1日量あたりに113.3mgのプリン体が含まれています。ビール1本350mLに含まれるプリン体の量は10~25mgですから、その数倍のプリン体を毎日服用していたわけです。
Aさんには、次の受診日までサプリメントを中止してみるようにお話しし、その際にドクターにもサプリメント服用のことを話していただくよう伝えました。
その結果、Aさんの尿酸値は正常値まで低下し、症状が安定しました。
 

待合室での患者さんの様子、自宅のテーブルなどは貴重な情報源

 
そのほかに、胃腸の不調を訴えているCさんの場合。薬を届けに行ったときにテーブルに薬袋とウーロン茶が一緒に置いてあるところを見かけました。それがきっかけで不調の原因のひとつはカフェインが刺激になっているのではないかと推察し、体調改善に結びつけることができました。
こうした気づきのきっかけは待合室にもあります。患者さんの中には、薬局で薬をもらうとその場ですぐに飲んでいく人がいますよね。その場合に、薬局に備えつけのウォーターサーバーの水を使うか、あるいはカバンから紅茶などのペットボトルを取り出して服用しているか。もし紅茶などで薬を飲んでいるようなら、自宅でも同様に服薬している可能性があるという情報を得られます。
 
またサプリメントの例にあるように、患者さん自身もわざと隠しているわけではなく、うっかり言うのを忘れている場合や、その飲食物やサプリメントと薬との飲み合わせが悪いとは思ってもいない場合もあります。
患者さんのお話をよく聞いて、こうした“うっかり”を見つけ出していくのも薬剤師の大切な役割の一つだと考えます。医学や薬学の知識の収集も大切ですが、他分野の情報にもアンテナを張って集めておくと、患者さんとの話のきっかけにもなり役立つことがありますよ。

サプリメントや嗜好品、患者さんの食生活に意外な落とし穴があることも

 

ビール酵母を使ったサプリメントの服用で尿酸値が上昇!?

 
私が心がけていることは、普段から患者さんの生活について詳しくうかがうことです。それにより、薬の効果の発揮を妨げている原因を思いがけないところから見つけることがあります。
 
たとえば、痛風で通院している患者のAさん。服用する薬の剤数が少ないので、毎日忘れず服薬を続けているのに、尿酸値が正常値に下がりません。
食生活を確認してみても、「晩酌にビールは飲まないし、レバー類、カツオ、白子などのプリン体を多く含む食べ物もなるべく口にしないように気をつけている」とのこと。
ある日、Aさん宅に薬を届けに行ったときのことです。
ふと、ちゃぶ台の上を見てみると、サプリメントの瓶が置いてありました。瓶のラベルを確認したところ、なんとビール酵母を使ったサプリメントです。
「これ、毎日飲んでいるの?」と尋ねると、「1日3回、毎日欠かさずに飲んでいるよ。おかげで体調がいいんだ」と答えます。このサプリメントは、1日量あたりに113.3mgのプリン体が含まれています。ビール1本350mLに含まれるプリン体の量は10~25mgですから、その数倍のプリン体を毎日服用していたわけです。
Aさんには、次の受診日までサプリメントを中止してみるようにお話しし、その際にドクターにもサプリメント服用のことを話していただくよう伝えました。
その結果、Aさんの尿酸値は正常値まで低下し、症状が安定しました。
 

待合室での患者さんの様子、自宅のテーブルなどは貴重な情報源

 
そのほかに、胃腸の不調を訴えているCさんの場合。薬を届けに行ったときにテーブルに薬袋とウーロン茶が一緒に置いてあるところを見かけました。それがきっかけで不調の原因のひとつはカフェインが刺激になっているのではないかと推察し、体調改善に結びつけることができました。
こうした気づきのきっかけは待合室にもあります。患者さんの中には、薬局で薬をもらうとその場ですぐに飲んでいく人がいますよね。その場合に、薬局に備えつけのウォーターサーバーの水を使うか、あるいはカバンから紅茶などのペットボトルを取り出して服用しているか。もし紅茶などで薬を飲んでいるようなら、自宅でも同様に服薬している可能性があるという情報を得られます。
 
またサプリメントの例にあるように、患者さん自身もわざと隠しているわけではなく、うっかり言うのを忘れている場合や、その飲食物やサプリメントと薬との飲み合わせが悪いとは思ってもいない場合もあります。
患者さんのお話をよく聞いて、こうした“うっかり”を見つけ出していくのも薬剤師の大切な役割の一つだと考えます。医学や薬学の知識の収集も大切ですが、他分野の情報にもアンテナを張って集めておくと、患者さんとの話のきっかけにもなり役立つことがありますよ。

関口太郎先生プロフィール
関口太郎先生プロフィール
関口調剤薬局代表取締役。薬剤師。横須賀市薬剤師会理事。
北海道医療大学卒後米国遊学。東京大学医学部附属病院薬剤部研修生。虎の門病院薬剤部入局。東京大学医学部附属病院薬剤部入局。平安堂薬局入社。その後、関口調剤薬局に入局し、現在に至る。地域の住民が気軽に立ち寄れる薬局づくりをめざし、管理栄養士による無料の栄養指導などを定期的に開催している。