薬剤師のスキルアップ 更新日:2023.10.30公開日:2023.10.26 薬剤師のスキルアップ

日病薬病院薬学認定薬剤師とは?資格取得までの条件や流れ、メリットを解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師としてある程度の実務経験を積むと、認定資格の取得を目指したいと考える人もいることでしょう。認定薬剤師としては、さまざまな資格制度がありますが、病院薬剤師であれば、まずは日病薬病院薬学認定薬剤師を目指すのがおすすめです。今回は、日病薬病院薬学認定薬剤師の取得条件と取得までの流れを解説するとともに、資格取得のメリットや活躍の場についてお伝えします。

1.日病薬病院薬学認定薬剤師ってどんな資格?

日病薬病院薬学認定薬剤師は、高度で複雑化している薬物治療について幅広い知識・技術を習得していることを証明する資格です。一般社団法人日本病院薬剤師会が実施している認定薬剤師制度の一つで、日本病院薬剤師会は、実践力を備えた薬剤師を養成し、国民の保健・医療・福祉に貢献することを目的として、日病薬病院薬学認定薬剤師制度を設けました。

 
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2.日病薬病院薬学認定薬剤師を取得する要件・条件

はじめに、日病薬病院薬学認定薬剤師を取得するための条件と資格取得の難易度について紹介します。

 

2-1.資格取得の条件

まずは、新規で日病薬病院薬学認定薬剤師の資格取得するための条件について見ていきましょう。

 

● 日本病院薬剤師会の正会員又は特別会員(保険薬局勤務・大学教員等の薬剤師)であること

● 過去3年度を通算して50単位以上を取得し、かつ下記①~③の全てを満たすこと

● 日病薬病院薬学認定薬剤師制度研修カリキュラムのうち、下記の項目の単位数を取得していること

 ▶ Ⅰ-1~3の各項目の中から1項目以上履修し、合計2単位以上取得すること
 ▶ Ⅱ-1~6の各項目の中から2項目以上履修し、合計4単位以上取得すること
 ▶ Ⅲ-1~2の各項目を履修し、合計4単位以上取得すること
 ▶ Ⅳ-1~2の各項目を履修し、合計4単位以上取得すること
 ▶ Ⅴ-1~3の各項目を履修し、合計6単位以上取得すること

● 薬剤師認定制度認証機構から認証を受けたほかの生涯研修プロバイダーから付与された単位は有効とする。ただし、日病薬病院薬学認定薬剤師制度研修カリキュラムに沿った内容の研修会であり、かつ通算50単位のうち10単位以下であること

● 毎年度(4月1日から翌年3月31日まで)10単位以上取得していること

● 日病薬病院薬学認定薬剤師認定試験に合格すること

 

新規で日病薬病院薬学認定薬剤師の資格を取得するためには、上記の条件を全て満たす必要があります。
 
参照:日病薬病院薬学認定薬剤師認定試験に関する事項(PDF)|一般社団法人日本病院薬剤師会

 

2-2. 資格の更新

日病薬病院薬学認定薬剤師の資格更新の条件は、新規とほとんど同じです。取得する単位数が2倍に設定されていますが、これは新規では過去3年分の単位数が必要なのに対し、更新では過去6年分の単位が必要なためです。資格更新時に必要な条件について詳しく見ていきましょう。

 

● 本会正会員又は特別会員(保険薬局勤務・大学教員等の薬剤師)であること

● 過去6年度を通算して100単位以上を取得し、かつ下記①~③の全てを満たすこと

● 日病薬病院薬学認定薬剤師制度研修カリキュラムのうち、下記の項目の単位数を取得していること

 ▶ Ⅰ-1~3の各項目の中から1項目以上履修し、合計4単位以上取得すること
 ▶ Ⅱ-1~6の各項目の中から2項目以上履修し、合計8単位以上取得すること
 ▶ Ⅲ-1~2の各項目を履修し、合計8単位以上取得すること
 ▶ Ⅳ-1~2の各項目を履修し、合計8単位以上取得すること
 ▶ Ⅴ-1~3の各項目を履修し、合計12単位以上取得すること

● 薬剤師認定制度認証機構から認証を受けたほかの生涯研修プロバイダーから付与された単位は有効とする。ただし、日病薬病院薬学認定薬剤師制度研修カリキュラムに沿った内容の研修会であり、かつ通算100単位のうち20単位以下であること

● 毎年度(4月1日から翌年3月31日まで)10単位以上取得していること

● 日病薬病院薬学認定薬剤師認定試験に合格すること

 

更新時も規定の単位を取得するといった条件を満たすとともに、認定試験に合格する必要があります。

 
参照:日病薬病院薬学認定薬剤師認定試験に関する事項(PDF)|一般社団法人日本病院薬剤師会

 

2-3. 資格取得の難易度

日病薬病院薬学認定薬剤師の合否基準は、「受験者の成績上位10%の平均点の70%」とされています。試験問題や平均点、合格率などは公表されていません。参考として2022年度のケースを見ると、認定者は1,674名、受験者は約1,750名となっており、2022年度の合格率は95.6%程度と考えられます。

 
参照:日病薬病院薬学認定薬剤師認定者|一般社団法人日本病院薬剤師会

 
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3.日病薬病院薬学認定薬剤師を取得する方法や取得までの流れ

続いて、日病薬病院薬学認定薬剤師の資格を取得するまでの流れについて見ていきましょう。

 

3-1.ステップ1:研修記録を作成

資格取得に向けて、まずは、研修記録を作成します。研修記録は指定のフォーマットがあるため、日本病院薬剤師会のホームページからダウンロードして使用しましょう。「研修会」「e-ラーニング」「ほかの生涯研修プロバイダーの研修」に分けて記入します。認定申請を行う際は、研修記録と受講証明が必要です。紛失した場合は認定申請ができません。大切に保管しましょう。

 

3-2.ステップ2:認定申請書の作成

 

研修記録を作成したら、『日病薬病院薬学認定薬剤師 オンライン申請システム』にアクセスし、認定申請書を作成します。印刷した認定申請書に捺印し、自己チェックシートで提出書類に不備がないかを確認後、レターパックや書留郵便など追跡可能な方法で日本病院薬剤師会事務局へ送付します。
 
認定申請ができる期間が決まっているため、必ず期間をチェックしましょう。申請期間が過ぎていた場合や、オンライン申請を行わず研修記録のみを郵送した場合は、審査の対象外となります。また、申請時の受験番号は、受験資格や認定資格を確認する際に必要となるため、必ず控えておきましょう。

 

3-3.ステップ3:審査料の納付

受験資格の審査が終了すると、オンライン申請システムに登録したメールアドレス宛に、審査料の納付と、受験登録手続きに関する案内が送られます。期日内に審査料の納付と受験登録を行いましょう。

 

3-4.ステップ4:出題範囲と基準を確認する

認定試験は、日病薬病院薬学認定薬剤師制度研修カリキュラムの範囲から出題されます。また、出題基準については、試験を実施する年度ごとに策定されています。試験日の数か月前に公表されるため、確認して試験勉強に役立てましょう。

 

3-5.ステップ5:認定試験を受ける

認定試験は、インターネットを介したWeb上で実施されます。出題形式は、選択形式となっています。事前に配布されたIDとパスワードでログインしてから試験を受けましょう。
認定試験受験期間は原則3日間で、受験期間中はいつでも自由に受験することができます。ただし、試験時間は1時間となっているため、システムが終了する1時間前までに試験を開始しなければなりません。

 

3-6.ステップ6:認定料の振込

試験に合格した人には、結果通知と認定料の振込に関する案内が郵送されます。期限内に認定料の振り込みを行わなかった場合、認定されないため注意しましょう。なお、不合格となった人についても、結果通知と申請の書類一式が郵送されます。

4.日病薬病院薬学認定薬剤師を取得するメリット

では、日病薬病院薬学認定薬剤師の資格を取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なものを紹介します。

 

4-1.専門領域の認定薬剤師取得に有利

日本病院薬剤師会が設けている以下の認定薬剤師を取得する上で、日病薬病院薬学認定薬剤師の資格が必要になる場合があります。

 

● がん薬物療法認定薬剤師
● 感染制御認定薬剤師
● 精神科薬物療法認定薬剤師
● 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師
● HIV感染症薬物療法認定薬剤師

 

上記の認定薬剤師制度は、日病薬病院薬学認定薬剤師もしくは、日本医療薬学会の専門薬剤師制度で認定された専門薬剤師の資格を持っていることが受験するための要件となっています。日本医療薬学会の認定制度はいずれも専門薬剤師を認定する制度であり、資格取得にはややハードルが高いでしょう。上記の認定薬剤師の取得を目指すのであれば、日病薬病院薬学認定薬剤師の資格を取得するのが近道と言えます。

 
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4-2.スキルアップや収入アップが望める

日病薬病院薬学認定薬剤師は、資格を取得する過程でさまざまな知識を得られます。薬剤師として習得しておきたい基本的な知識だけでなく、医療現場でのコミュニケーションを取る方法やリスクマネジメント、感染制御・管理なども学べます。そのため、業務に役立てられることが多い点もメリットでしょう。
 
また、職場によっては、資格取得により収入アップが見込める場合もあります。資格取得手当があったり、役職が付いたりすることで収入が上がる可能性があります。

5.日病薬病院薬学認定薬剤師の資格を活用できる場所

日病薬病院薬学認定薬剤師は、研修カリキュラムの中で幅広い活躍を意図した行動目標が定められています。
 
医療倫理や法令を順守し、調剤や製剤情報、医薬品情報など薬剤師として必要な知識を深めるだけでなく、マネジメントや教育・研究なども基本的な業務として位置付けられています。また、チーム医療の実践や医療安全の推進、ファーマシューティカルケアの実践も定められており、社会的に求められる薬剤師を養成するカリキュラムとなっています。
 
そうした学びを深めた上で取得できる日病薬病院薬学認定薬剤師の資格があれば、教育現場や経営マネジメントに携わるほか、院内の他職種や院外の他施設と連携を取るための責任者に選ばれるといった活躍の機会が増えることでしょう。

 
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6.日病薬病院薬学認定薬剤師取得に向いている人

病院で働く薬剤師は、日病薬病院薬学認定薬剤師の取得に向いています。現場で実務経験を積んでいる分、研修内容を理解しやすく、学んだ内容を実践で生かす機会もあるでしょう。また、日本病院薬剤師会が認定する専門領域の認定薬剤師を取得しようと考えている人は、積極的に取得しておきたい資格です。新人薬剤師でも実務3年で資格取得ができるので、何かしらの認定薬剤師を取得したいと考えている場合はおすすめです。

 
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7.日病薬病院薬学認定薬剤師を取得するために

日病薬病院薬学認定薬剤師の資格を取得するためには、最低でも3年かかります。また、毎年取得しなければならない単位数も決められているため、取得を目指すのであれば計画的に進めるとよいでしょう。病院薬剤師としてのスキルアップを目指すのなら、まずは日病薬病院薬学認定薬剤師の取得を目指してみてはいかがでしょうか。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。