インタビュー 公開日:2021.01.28 インタビュー

認知症を地域でささえるコミュニティづくり~古河南薬局の他職種連携

認知症疾患医療センターを設置している古河赤十字病院の処方箋を応需している古河南薬局では、認知症ケアや介護などに関する勉強会を通じ、認知症サポーターを養成するコミュニティ「みらいカフェ」を運営。薬剤師だけでなく看護師や管理栄養士の協力のもと、認知症の方でも安心して暮らせる地域の実現を目指しているという同薬局の取り組みについて、薬剤師の前田規子先生にお話を聞きました。

 

本記事は株式会社ネクスウェイが提供する「医療情報おまとめ便サービス」特集2019年8月号P.5-6「共創未来 古河南薬局インタビュー」を再構成したものです。

お話を聞いたのは……古河南薬局(茨城県古河市)
 

住所/茨城県古川市大堤字鹿養381
共創未来 古河南薬局(株式会社ファーマみらいウェブサイト)
http://www.phmirai.co.jp/

Q.「みらいカフェ」を始めるきっかけと、その概要についてお聞かせください。

A.地域の健康意識の高さから、認知症ケアを考える拠点づくり発展。

<茨城第4エリア エリア長>薬剤師・前田規子先生

健康サポート薬局への期待が高まり、弊社で地域イベントなどに注力しはじめた頃、東古河南薬局でも健康フェアを開催することになりました。診療のない土曜日にもかかわらず参加者はなんと130名以上も来られ、地域の健康意識の高さに驚かされました。そこで、当時認知症外来を始めたばかりだった近隣の古河赤十字病院とタッグを組み、認知症について地域で考える拠点づくりができるのではないか、という社内の協議を経て、ここで「みらいカフェ」を実施することになりました。

今では毎月第2水曜日に、一般の参加者だけでなく、グループ会社の管理栄養士さんと赤十字病院の看護師さんたちを交え、主に「講義」「おやつタイム」「ポスター作り」の三本柱で開催しています。認知症にならないための知識の共有をはじめ、健康のための正しい栄養素の摂り方やおすすめの食品、運動など、薬剤師、東邦薬品(株)の管理栄養士、看護師が持ち回りで講義を行い、管理栄養士のセレクトした健康食品などを試食しながら意見交換を行います。

 

 

また、参加者全員でポスターを手作りし、近隣の古河市総和福祉センター「健康の駅」に掲出させていただくことで認知促進・参加者拡大へつなげています。

 

<タイムスケジュール>

15:00 講義
15:30 おやつタイム(健康食品試食)
15:45 ポスター作り
16:00 終了
(2019年5月8日実施)

 

Q.地域で認知症ケアと向き合う上で大切にされていることは?

A.認知症の方々の安心の暮らしを支えるサポーターを育成。

 

実際には、認知症の患者さん自身が参加するのは難しいですから、私たちにできることは、認知症の方が安全に暮らせるようにサポートできる人を増やし、一緒に行動・発信してもらうことだと考えています。ですからまずは「認知症サポーター養成講座」を5回にわたって実施し、さらに年1回、市役所の職員を講師として招き、出前講座を行うことから始めました。お陰様で現在は総勢50名を超えるサポーターが誕生。古河市長発行の認定証やサポーターの証となるオレンジタグなどを配布しています。

 

サポーターの中には、ここで学んだことをご自身の所属するコミュニティで発信してくださる方々もおり、普及活動の輪も確実に広がっています。

 

Q.「みらいカフェ」の活動を通じて変化してきたことはありますか?

A.地道に活動を長く続けることで、徐々に周囲からの評価を獲得。

スタートから約3年が経過し、今回で34回目の開催に。当初は役所や公民館、銀行などにポスターの掲出をお願いしても門前払いも同然でしたから、1年目は毎回自作のチラシを配布し、仲間を増やして活動実績を積むことに専念しました。薬局への敷居を低くすることで少しずつ患者さんたちが参加してくれるようになりましたね。

 

今も営業時間中に「みらいカフェ」を開催していますが、それは一般外来の患者さんが興味を持つきっかけになってほしいからです。店外から見ても赤十字病院の看護師さんたちと一緒に活動している様子が分かるようにしています。コツコツと長く続けてきた結果、周囲の方々からの信頼や評価につながるようになりました。

■「みらいカフェ」の活動の展開

1年目
認知症サポーター養成講座開始
自作チラシ・ポスターで普及活動
 
2年目
役所や公民館の認知促進
 
「古河マルシェ」開催(物販の充実)
 
3年目 「みらいカフェ」計34回開催
認知症サポーター50名超

 

Q.通常業務やイベント活動を行うにあたり注力していることとは?

A.患者さんの声に耳を傾け、日々の業務の工夫に改善に役立てる。

 

当薬局の薬剤師は日頃から患者さんとのコミュニケーションを心がけ、検査値などもこまめに聞き取り、薬歴の充実につなげています。そのため検査値の味方やそこでの会話の仕方などを学ぶ努力は怠りません。

患者さんの声を聞き出すことで、次の「みらいカフェ」のテーマをイメージしたり、コンテンツ作りにも役立てていますし、OTC医薬品や健康食品の品揃えにも反映させています。特に健康食品に関しては、「古河マルシェ」と称して試食販売会を定期的に開催。例えば糖尿病患者さんの多い日は糖質コントロール関連の品揃えを充実させるなど、患者さんの疾患や季節の行事などによって提案の仕方を変えながら、安心・安全な商品を提供しています。それぞれのイベントの主旨を明確に分けることにより、「みらいカフェ」の参加者に商品の購買義務などがないことを認識しやすくし、安心して参加いただけるよう工夫しています。

Q.今後の課題や展望についてお聞かせください。

A.認知症サポーターの増加とともに地域の方々の相談窓口となれるように。

今後もサポーターを増やしながら、講義を含めた勉強会の充実も図っていきたいですね。「あそこに行けば介護や医療の基礎知識が身につく」と認識されるように活動を続けていれば地域に密着した薬局として根付いていけると思いますから。

 

その上で、近隣の方々やご家族の健康管理で何か生じた際の相談窓口になれたら理想的です。例えば突然、親御様が要介護や認知症になったりしたら、たいていは誰に相談したら良いのか分からず不安になったりするものです。そんな時、寄り添って一緒に考えてくれる場所があるだけで救いになることもあるはずですから、まずこの薬局へ行ってみようと思っていただけるように努めていきたいと考えています。

<古河赤十字病院の看護師から>

認知症看護認定看護師である私を含め赤十字病院から各分野の認定看護師6名が順番に参加しています。看護の質向上だけでなく認知症患者、高齢者の孤立化などを防ぐために地域で協力していけたらと思っています。こうした活動を薬局で行う意義は大きいと思いますね。

<管理栄養士から>

認知症予防のご相談、ダイエットや健康食品についてなどのご質問をお受けすることもあります。処方箋をお持ちでない方も気軽に来ていただきたいです。薬局がコミュニティとなり、地域の方々がサポーターとして活躍できるよう、多職種連携してこれからも活動していきます。

<地域の参加者から>

最初は入りづらかったけど「カフェ」という響きに興味を持ちました。認知症になるリスクは誰でもあるから知っておきたいと思ったのも理由の一つ。もっと早くここで勉強できていたら…と思うことがいっぱいあるので若い方にも参加してもらいたいですね。

 

出典:株式会社ネクスウェイ「医薬情報おまとめ便サービス」特集2019年8月号

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