薬剤師はキャリアプランをどう立てればいい?キャリアチェンジに適したタイミングも
薬剤師は難易度の高い国家試験を突破して専門性の高い仕事に従事していますが、マンネリを感じたり、スキル不足を自覚したりと、「このままでいいのか」と感じることがあると思います。そんな時、あらためて薬剤師としてのキャリアプランを見直してはいかがでしょうか。薬剤師のキャリア支援を行う株式会社MEDIKLECT(メディクレクト)の柿間隼志さんに、キャリアプラン構築の方法について伺いました。
- 1.薬剤師のキャリアプランは、「好き」「得意」の棚卸しから
- 2.キャリアプランは「なぜ」を繰り返して深堀りする
- 3.薬剤師のキャリアチェンジに適したタイミングはある?
- 4.入社してすぐに辞めたくなったら辞めていい?
1.薬剤師のキャリアプランは、「好き」「得意」の棚卸しから
2019年に立ち上げた株式会社MEDIKLECTでは、薬剤師に向けてキャリア開発のサポートをしています。薬剤師のキャリア支援をする中で、さまざまな相談を受けてきました。人によって悩みはそれぞれではあるものの、薬剤師のキャリアに関する悩みを突き詰めていくと、この2つに帰結するように思います。
「薬剤師としてもっとキャリアアップする方法は?」
「このまま薬剤師として仕事を続けていいのだろうか?」
薬剤師としての経験を深めたいと考える方には、自分が働く現場以外で関連する領域のことを知り、適性や希望を考慮して、ベストの道を探していけるようにアドバイスをしています。もしも薬剤師の業務以外に興味が向いている場合は、MRやMS、CRAなど医薬品関連の職種はもちろん、直接的に医療とは関係のない職種も含めて視野を広げてみると良いと思います。
「キャリアプラン」というと仰々しく聞こえるものですが、本質はシンプルです。これまでの人生で楽しかったことやつらかったことを抽出し、「好き」や「得意」を最大限に生かせる道を検討する――。こう考えると、断然考えやすくなりませんか?
業務上はもちろん、プライベートに関しても過去の自分を振り返ってみましょう。何をしているときに喜びを感じたか、逆にどんなことに対して苦手意識があるのかを書き出していくと、気が付くことがあるかもしれません。学生のころ(高校時代、大学時代など)までさかのぼって考えてもいいと思います。
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また、さまざまな職種の人たちと交流し、「なぜその仕事に就いたのか」「どんなところが楽しいか」を尋ねてみることをおすすめします。私自身、人生の節目には、ビジネスセミナーなどへ積極的に参加するだけでなく、友人や知人、さらに偶然出会った方にまで、さまざまな業種の話をたくさん聞きました。
就職活動の際にOB・OG訪問などで話を聞いた方は、社会人として経験を積んだ今、また別の視点で話を聞けるかもしれません。国試対策や研究で忙しく、就職活動の時に他業種の話を聞けなかったという方は、今あらためていろいろな人に話を聞いてみてはいかがでしょうか。
2.キャリアプランは「なぜ」を繰り返して深堀りする
「自分はこのままでいいのだろうか?」という漠然とした不安を抱えている場合は、それを具体化・言語化する作業が必要です。不安の正体を見つけるためにおすすめなのが、「なぜ?」を繰り返すこと。具体例を紹介します。
↓
「今の仕事にやりがいを感じられない」(なぜ楽しくない?)
↓
「薬剤師として活用する知識が偏っているから」(なぜ偏る?)
↓
「業務がルーティン化しているから」(なぜルーティン化した?)
↓
「業務に慣れて簡単に感じるから」……
このイメージで自問自答を繰り返すと、不安の正体がだんだんと見えてきます。おおむね5回ほどは「なぜ?」を繰り返すとよいでしょう。
キャリアプランの見直しというと、机に向かって考えようとする方が大多数です。もちろん、それが悪いわけではないのですが、リラックスした状態のほうが正直な思いがあらわれやすいものです。
私がおすすめしているのは、近所を散歩するなど、軽く身体を動かしながら考えること。できればスマートフォンを持たずに外に出ましょう。のびのびとした気持ちで自由に思考しやすくなるはずです。頭に浮かんだことを忘れないよう、小さなメモ帳とペンだけはポケットに入れておいてくださいね。
3.薬剤師のキャリアチェンジに適したタイミングはある?
より自分に合った仕事を考えることは、年齢に関係なく大切な視点です。ただ転職活動という観点でいえば、20代後半~30代はとくに選択肢が多い時期かもしれません。それは企業側が求めるスキル・経験に合致しやすいという面もありますし、転職をする本人がチャレンジングな選択をしやすいという面もあります。
転職体験談の記事でもお話ししたように、20~30代のうちは目先の仕事内容や待遇よりも、中長期的な目線でキャリアプランを考えてほしいと思っています。
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ですので、比較的若い時期に経験・スキルを磨くという意味では、思い切ってベンチャー企業に挑戦するのも一案だと思います。ややチャレンジングに思えるかもしれませんが、国家資格を持つ薬剤師だからこそ、どんなキャリアにも臆せず挑戦できるのは強みではないでしょうか。
「薬剤師」としての職場や仕事内容にこだわらず、例えばプログラミングや経営ノウハウなど、まったく別ジャンルのスキルを身につけてもいいと思います。「薬剤師×〇〇」というような複数のスキルの掛け合わせによって自分ならではのキャリア構築ができますし、「人生100年時代」を生きていく世代にとって、専門分野の垣根を越えたキャリアプランの考え方は欠かせなくなってくるのではないでしょうか。
4.入社してすぐに辞めたくなったら辞めていい?
新卒の場合はとくに、入社した会社が「自分に合わないな」と感じることがあると思います。
「新卒で入った会社をすぐに辞めてもよいか、3年くらいは在籍すべきか」というテーマは意外に難しく、インターネット上でも議論になることが多いようです。私個人としては、「石の上にも三年」派で、経験値を積んだ方がいいのではないかと思います。もちろん、体調を崩してしまうほどつらい職場であればすぐに離れたほうがいいと思いますが……。
実際のところ、1~2年程度でひとつの仕事の本質をつかむことは難しいのではないでしょうか。1年という単位を3周くらいしてようやく、業界の内情や仕事のおもしろさを理解し始める……というのが私の体感です。
私自身も新卒4年目(28歳ごろ)にはじめての転職を経験しましたが、最初に就いた仕事をひと通りこなせるようになったうえで、自分の適性を考えるようになった時期という意味で、ベストタイミングだったように思います。
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ですので、入社してすぐに「合わない」と感じても「いずれは転職する予定だけれど、今はこの仕事や業界について勉強する期間だ」と視点を切り替えて取り組んでみてはいかがでしょうか。できればその環境で、目の前の仕事に全力を尽くしてみてください。
真剣に業務に向き合えば、成果もともないやすいです。成果や自分なりの学びがあれば転職する際もスムーズに決まりやすいと思います。仮に転職回数が多かったり、勤続年数が短かったりしても、「〇〇のスキルを身につけたので次のステップに進みたい」といった理由を明確に説明できれば、マイナス評価にはならないでしょう。
何年目であっても、「好き」や「得意」を最大限に生かせる道がその人にとって最良のキャリアプランになると私は考えています。今回ご紹介した方法を試しながら、広い視野で考えて、自分ならではのキャリアプランをぜひ立ててみてください。
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撮影/和知 明[ブライトンフォト] 取材・文/中澤仁美[ナレッジリング]
柿間隼志(かきま・たかし)
薬剤師/株式会社MEDIKLECT 代表取締役