インタビュー 公開日:2025.01.17 インタビュー

 

薬剤師・薬局の仕事は、一般の利用者の立場からは分かりにくい部分も多いかもしれません。薬剤師・薬局に関する素朴な疑問について、薬剤師さんに詳しく解説してもらいました!

 

薬剤師が働く場所って薬局以外にもあるの?

 

保健所や介護老人保健施設などいろいろな場所で、時には白衣を着ずに働いています

薬剤師が働く場所といえば、一般的に薬局をイメージするかもしれません。2022年の統計によると、全薬剤師のうち約6割が薬局で働いていますが、病院やクリニックなどの「医療施設」で働く人が19.3%、「医薬品関係企業」で働く人は11.5%と、薬局以外で働いている薬剤師もたくさんいることが分かります。

 

参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 3 薬剤師|厚生労働省

 

「白衣を着て働く姿に憧れて薬剤師になった」――。薬剤師をめざした動機として、このように語る方も多いのですが、白衣(ユニフォーム)を着ないで仕事をしている薬剤師もいます。

 

その代表例が行政薬剤師で、2022年の統計において全薬剤師に占める割合は2.1%。衛生試験所で働いている薬剤師も含むので全員というわけではありませんが、この中の多くは白衣を着ないで(私服で)働いています。

 

主な勤務先は保健所ですが、その業務内容は薬事衛生、食品衛生、生活衛生など多岐にわたります。薬事衛生業務とは、薬局や店舗販売業者などに対する各種許可や指導・監督などを指します。

 

また、介護老人保健施設(老健)の薬剤師(0.3%)は、白衣は着ているけれどかなり少数派。老健は、状態が安定していて入院の必要はないものの、医学的ケアが必要な要介護1~5の方が入所する施設です。高齢者である上に医学的ケアが必要なので、たいていは薬を飲んでいます。薬剤師の人員配置は「実情に応じた適当数(入所者300人に対して1人以上が標準)」となっており、具体的な数字は示されていません。

 

参照:介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について|厚生労働省
参照:薬剤師の将来ビジョン|日本薬剤師会

 

老健の実情として薬剤師が不在の施設は多いと言われ、その場合の調剤業務は外部の調剤薬局などに委託しています。老健に薬剤師がいる場合は、主に調剤業務をしていると考えられます。状態が安定している分、服用している薬は少ないとしても、入所時に持参した薬の鑑別(何の薬か調べる)、医師の処方による調剤、採用薬管理(使う医薬品を決め、購入する)はやっているでしょう。その他にも必要に応じて、退所時のかかりつけ医やかかりつけ薬局への情報提供、施設内の感染対策などの業務もしているかもしれません。

 

元・日本病院薬剤師会会長の全田浩氏が残した名言に「薬あるところに薬剤師あり」というものがあります。全田氏の言葉が意味するのは「薬のあるところに薬剤師の仕事はあるから積極的に仕事をしていこう」という、私たち薬剤師に対する鼓舞だと思いますが、確かに薬はあちこちにありますね。最近、耳にしたのは「動物病院にも薬剤師がいる」という話です。

 

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薬剤師はいろいろなところで、時には薬剤師と気付かれずに働いています。皆、勉強しているうちに、働いている間に、薬に関することが好きになり、胸を張って薬の専門家だと言えるようになりました。疑問に思ったことはどうぞ私たちに聞いてください。答えのないことは一緒に考えましょう。

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執筆/藤野紗衣(ふじの さえ)

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
ウェブサイト:https://www.knowledge-ring.jp/