医療機器

スマホ利用で副作用監視‐薬局薬剤師が定期的に確認

薬+読 編集部からのコメント

患者の副作用をスマートフォンやタブレット端末でスカイプを使い、確認するシステムの開発が開始されます。新薬や服用方法が煩雑な薬を処方されている外来患者を対象にしているとのことです。

来月にも臨床研究スタート

 

山口大学病院と鹿児島県姶良地区薬剤師会は、スマートフォンやタブレット端末で利用できる動画通信ソフト「スカイプ」などを用い、薬を服用している患者の副作用を定期的に確認するシステム開発に乗り出す。新薬や服用方法が煩雑な薬などが処方されている外来患者を対象にした臨床研究で、薬剤師が週1回電子メールで副作用の発生の有無を尋ね、重篤な副作用を未然に防ぐのが狙い。緊急時には動画通信により、顔を見ながら患者の状況を確認する。高齢化と在宅化を睨み、副作用監視の仕組みを構築することで、薬剤師の役割をアピールしたい考えだ。


 

最近、C型慢性肝炎治療薬「ソバルディ」をはじめ、作用が強力で処方日数の長い新薬が登場し、副作用の発生について継続して監視する必要性が高まっている。ただ、一人暮らしの高齢者が増加し、地域の医療提供体制が在宅医療にシフトする中、病院や薬局を訪問できない患者の副作用監視は難しくなってきているのが現状。特に高齢化が進む過疎地域や離島では、距離が遠かったり、自然災害の発生により患者が薬局を訪問できないことも多い。

 

そこで、山口大病院薬剤部は、急速に普及が進んでいるスマートフォン、タブレット端末に着目。鹿児島県の姶良地区薬剤師会と協力し、動画を双方向で通信できる「スカイプ」などを使うことにより、患者がどこにいても副作用の発生を観察できるシステム構築を臨床研究として実施することにした。

 

臨床研究は、山口大病院の入院患者、姶良地区の医療機関に通院している外来患者で、同意が得られた人が対象。スマホかタブレット端末を操作でき、スカイプなどを使用できることが条件となる。姶良地区の保険薬局で被験者を登録し、山口大病院が研究全体を統括しながら副作用モニタリングシステムの開発を進め、有用性を検証する。

 

監視対象とするのは、抗癌剤「アフィニトール」など添付文書の「警告欄」に定期的な検査実施が義務づけられている医薬品、抗リウマチ剤「リウマトレックス」など1回ごとの用量が異なったり、休薬期間があるなど服用方法が煩雑で、誤投与時に重大な健康被害発生の可能性が高い医薬品、発売1年以内の新薬。大学病院側で副作用が心配されたり、日本人データの少ない品目を選ぶ。

 

具体的には、対象薬が投与されている姶良地区の外来患者に対し、薬局薬剤師が週1回、服薬状況と副作用の兆候がないか確認するメールをスマホに送信。受け取った患者は異常の有無を返信する。必要に応じて動画での通信を行い、薬剤師が患者の顔を見ながら状況を確認し、重大な副作用の恐れがある場合は、薬剤師が患者に受診を勧めると共に、担当医に連絡する。患者ごとの通信記録は、姶良地区薬剤師会のパソコンにデータ保存する。

 

臨床研究の目標症例数は100例。来月にも開始し、2年間にわたってシステムの検証や重篤な副作用の検出件数を評価していく。研究責任者を務める山口大病院の古川裕之薬剤部長は、「最近は監視が必要な医薬品が増えており、政府に新薬の14日処方制限を見直す動きがある」と懸念を示し、「患者が一番気にしているのは副作用で、だからこそ薬剤師が患者を副作用から守っていかなければならない」と話す。

 

最終的には、臨床研究で構築した副作用モニタリングシステムのモデルを全国に普及させたい考え。「薬剤師全体で副作用をモニタリングしていることを示し、薬剤師の役割をアピールしていきたい」と古川氏。薬局薬剤師の関与が期待される在宅医療への導入も可能とし、「病院は入院患者、薬局では外来患者の副作用を観察し、お互いが患者の安全をしっかりフォローしていく仕組みを作りたい」と意気込みを語る。

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出典:薬事日報

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