低血糖リスクの低さを証明‐インクレチン関連薬の作用
関西電力医学研究所の清野裕氏、矢部大介氏らの研究グループは、インクレチン関連薬が血糖値が高い時のみ血糖降下作用を発揮することを、日本人の2型糖尿病患者で明らかにした。インクレチン関連薬はインスリンやSU剤に比べて低血糖のリスクが低いと言われてきたが、それを実際の患者で証明した。また、インクレチン関連薬は交感神経―副腎系の抑制を介して、低血糖によって誘発される狭心症や心筋梗塞の発症を抑制する可能性があることも示した。
研究グループは、日本人2型糖尿病患者35人に対してランダム化比較試験を実施。インクレチン関連薬の2週間投与前後に、人工膵臓を用いて血糖値をコントロールしながら段階的に血糖値を低下させる低血糖クランプ試験を実施し、インスリンやグルカゴン分泌への影響を評価した。
その結果、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬ともに、血糖値が高い場合には血糖値を下げるインスリンの分泌を促進し、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑制する一方、血糖値が低い場合にはインスリンやグルカゴンの分泌にはほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。これらのメカニズムが、アジア人の非肥満2型糖尿病患者で証明されたのは世界で初めてという。
また、インクレチン関連薬は低血糖時にコルチゾールやエピネフリン、ノルエピネフリンの分泌を抑制することも分かった。これらのホルモンは交感神経―副腎系の活性化に関係している。この結果から、インクレチン関連薬は、低血糖リスクが低いだけでなく、交感神経―副腎系の抑制を介して、低血糖時に誘発される狭心症や心筋梗塞の発症を抑制する可能性があることが明らかになった。
インスリンとインクレチン関連薬の併用療法が注目を集める中、インスリンによる低血糖に伴う心血管イベントの発症をインクレチン関連薬が抑えている可能性があるという。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
関西電力医学研究所の清野裕氏、矢部大介氏らの研究グループが、インクレチン関連薬は血糖値が高いときに限って血糖降下作用を発揮することを実際の患者で証明しました。日本人2型糖尿病患者35人に対してランダム化比較試験を実施。血糖値が高い場合には血糖値を下げるインスリンの分泌を促進し、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑制する一方、血糖値が低い場合にはインスリンやグルカゴンの分泌にはほとんど影響を及ぼさないというメカニズムがアジア人の非肥満2型糖尿病患者で証明されたのは世界で初めてということです。