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患者の服薬状況を把握‐包装を開けた時刻が記録

薬+読 編集部からのコメント

大日本印刷が開発した「DNPモニタリングシステムYour Manager」は、薬のパッケージを開封すると時刻が記録され、患者の服薬状況を無線通信で管理できます。インターネット環境がなくても使えるため、スマホを使っていない高齢者にも対応。薬の飲み忘れなど服薬状況がわかるシステムも提供しています。

神戸大学附属病院薬剤部での抗癌剤パッケージ
神戸大学附属病院薬剤部での抗癌剤パッケージ

 

大日本印刷は、患者の服薬状況を把握できる服薬支援システム「DNPモニタリングシステムYour Manager」を開発し、昨年から量産化を始め、研究用途での活用が始まった。台紙にPTP包装の錠剤を最大35個設置でき、一つひとつの錠剤を取り出したときにパッケージの開封時間、開封場所が台紙に組み込まれた電子基板に記録され、患者がその台紙を医療機関へ持参すれば、無線通信からパソコンやスマートフォンにデータを表示できる。将来的にはIoTデバイスとして、多職種間でリアルタイムに服薬に関する情報を共有できるようにし、製薬企業が開発する新薬の治験で導入を目指していく方針だ。

 


同社は、パッケージ開封時に時刻の記録が可能な「パッケージタイプ」、患者に対するアンケート用としてカードのボタンを押すことで、記載された痛みの強さや体調などの質問への回答と、ボタンを押した日時が記録できる「カードタイプ」を提供している。医療機関から患者に配布し、患者がパッケージから薬を取り出すと、台紙内部に電子基板を配したシステムであるため、マイコンが接触や通電、断線を検知し、記録・蓄積される仕組みだ。

 

そこで蓄積した情報は、患者が医療機関に台紙を持参すれば、無線通信からデータ読み取りを行うことができる。患者宅にインターネット環境がなくてもデータ収集が可能で、スマートフォンが使えない高齢者にも対応する。カードタイプはアンケートとして使われるため、患者が体調などを記入し、主観的に評価する患者日誌で、手書きと電子的に入力・送信するePROの中間に位置した新たなタイプとなる。

 

メディカル領域で新規事業を模索していた同社の包装事業部では、服薬管理に対するニーズが現在よりもまだ低かった2010年から服薬支援事業の可能性を検討。大学や製薬企業に対するヒアリングを通じて、中長期的には需要が拡大すると判断し、「DNPモニタリングシステムYour Manager」の開発に踏み切った。

 

同社の印刷技術や包装のノウハウが活用されている。また、在宅での服薬管理で使われるお薬カレンダーにも応用し、ポケットに収められた薬剤を取り出すことで、取り出した日時を記録でき、薬の飲み忘れを防げるシステムも提供する。

 

大学や製薬企業の要望に応じてカスタマイズ制作するアプリケーションであるため、実臨床ではなく、服薬に関するエビデンス取得を目的とした研究用途での導入がメインだ。これまで国内で服薬遵守率データを収集することが難しかったが、横浜薬科大学と第一三共は同システムを活用し、高血圧症治療薬「オルメテック」の服薬遵守率に関する調査を行い、適正に服薬していた患者の割合が半数程度にとどまるとの実態を把握することができたという。

 

現在の製品だと患者に持参してもらい、無線通信でデータを読み取る作業が必要だが、将来的にはIoTデバイスとしてリアルタイムで服薬情報を共有できるシステムに改良していく。服薬情報を一つに集約し、プラットフォーム化することでビッグデータの利活用を進める構想もある。

 

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出典:薬事日報

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