抗インフル薬「アビガン」、備蓄の必要性めぐり議論
厚生労働省の新型インフルエンザ対策に関する小委員会医療・医薬品作業班会議は16日、富山化学の新型インフルエンザ薬「アビガン」の備蓄の必要性について、参考人からヒアリングを行って議論した。催奇形性をめぐって「流通管理や処方制限で対応すべき」とする声が上がったほか、既存のインフルエンザ薬に耐性化したウイルスの出現については「可能性は低い」とする意見が相次いだ。
アビガンの安全性については、「催奇形性は動物実験で確認した段階であり、ヒトで確認することはできないため、流通管理や処方制限で対応すべき」「動物実験では結果が出ていてもヒトでは不明。使用は相当慎重にすべき」などの声が上がった。
また、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタの既存の4剤全てに耐性化した新型インフルエンザウイルスの出現の可能性に関しては、「数十年単位で感染が拡大する場合もあるが伝播性は弱い」との指摘などから、「出現の可能性は低い」とする意見が大勢を占めた。
アビガンは、タミフルやリレンザなど、インフルエンザウイルスが細胞外へ遊離する過程を防ぐノイラミニダーゼ阻害薬と異なり、ウイルスの遺伝子複製を抑制することで、インフルエンザウイルスの増殖を阻害するRNAポリメラーゼ阻害剤。動物実験で催奇形性が確認され、安全上の懸念があることから、新型もしくは再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、既存の薬剤が効かず、国が許可した場合に限り使用が可能となる。
アビガンの備蓄の必要性をめぐっては、▽タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタの4剤全てに耐性化した新型インフルエンザウイルスの出現可能性とその規模▽新型インフルエンザ対策としてノイラミニダーゼ阻害以外の作用機序を持つ抗インフルエンザウイルス薬の備蓄が必要か▽アビガン錠の有効性と安全性を踏まえ、新型インフルエンザ対策上備蓄が必要か――の三つに論点を絞って議論することになっていた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
動物実験で催奇形性が確認された新型インフルエンザ薬「アビガン」。厚生労働省の新型インフルエンザ対策に関する小委員会医療・医薬品作業班会議では「タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタの既存の4剤全てに耐性化した新型インフルエンザウイルスの出現の可能性は低い」とする意見が大勢を占め、備蓄ではなく「流通管理や処方制限で対応すべき」との声が上がったということです。