薬剤師の「原点」を想起~山口県で初の日薬学術大会
第52回日本薬剤師会学術大会が13、14の両日、山口県下関市内で開かれた。山口県での大会開催は今回が初めて。大型台風による全国的な交通機関の乱れはあったものの、2日間の全プログラムを終えた。全国から約9000人が参加し、街の科学者と呼ばれた薬局薬剤師の姿を想起するため設定されたメインテーマ「原点」を基軸に、セルフメディケーションや地域連携、ポリファーマシー、医療ビッグデータなど薬剤師を取り巻く幅広い話題や課題について討議を繰り広げた。
開会式であいさつした日薬の山本信夫会長は「薬剤師にとって平成の時代は必ずしも追い風ばかりでなく、激しい風が吹き荒れる嵐の中を進む小舟にも似た状況だった。一方で、大変エポックメイキングな時代でもあった」と言及。具体的な成果として、医療法で薬局が医療提供施設に規定されたことや6年制薬学教育の法制度化、医薬分業の推進を示した上で、「医薬品医療機器等法、薬剤師法の改正法案が現在の国会で審議され、成立予定と聞いている。平成の時代に大きく実を結んだ先人の努力と足跡を振り返りながら、新たな時代のニーズに応える薬剤師や薬局を目指して歩んでいかなければならない」と決意を新たにした。
また、持続可能な開発目標(SDGs)の構築が世界で進む中で、「日本は国民が等しく医療の恩恵を受けている希有な国である半面、薬剤師業務は発展途上との指摘がある。このギャップを埋めることが、われわれに課せられた大きな責任」と語った。
中原靖明大会運営委員長(山口県薬剤師会会長)は「大会のテーマは原点とした。それぞれの時代の薬剤師が努力して困難を乗り越え、現在に引き継がれている。われわれも熱き志を胸に、幕末の動乱期を駆け抜けた維新の人たちのように今の時代を生き、自らの役割、社会的責任について改めて見つめ直す機会にしてもらいたい」と話した。
来賓祝辞では、加藤勝信厚生労働相の祝辞を厚生労働省の森和彦審議官(医薬担当)が代読。薬機法等の改正を通じて、服薬期間中の継続した薬学的管理や指導、高度な薬物治療や在宅医療について医療機関等と連携して取り組む薬局の認定を実現したいとし、「こうした取り組みを通じて、薬剤師や薬局が患者から求められる役割を果たし、安全で有効な薬物治療を継続的に提供できる仕組みを推進したい」と強調した。
萩生田光一文部科学相(代読)は「現在、ソサエティ5.0と言われる大きな社会構造の変化に対応する教育や研究の革新が求められている。改革は高等教育機関のみならず、人材が活躍する社会が学び続けることで初めて実現される。その意味で改革を支えるのは薬剤師の皆さんだ」と語った。
このほか、来賓として松本純衆議院議員、藤井基之参議院議員、本田あきこ参議院議員らも姿を見せた。
開会式の最後には、来年の日薬学術大会を担当する北海道薬剤師会の竹内伸仁会長に薬剤師綱領の盾が引き継がれた。各賞受賞者の表彰も行われ、日本薬剤師会賞が5人、同功労賞が8人、同有功賞が1団体に贈られた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
山口県で初開催となる第52回日本薬剤師会学術大会が10月13~14日に下関市内で行われました。台風19号による交通機関の乱れが懸念される中、約9000人が参加し、薬剤師の原点たる姿「街の科学者」に、今一度立ち返りつつ、セルフメディケーション、地域連携、ポリファーマシー、医療ビッグデータなど、薬剤師を取り巻く現状と今後の課題について、幅広く討議された模様です。