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小野薬品と本庶氏が和解~解決金や基金寄付で280億円

薬+読 編集部からのコメント

京都大特別教授の本庶佑氏が免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の収入配分をめぐり、小野薬品工業(本社・大阪市中央区)に約262億円の支払いを求めて大阪地方裁判所に訴えていた裁判で、小野薬品は11月12日に和解が成立したと発表しました。大阪地裁の和解提案を受け、本庶氏に50億円を支払うほか、京都大学内に設立される「小野薬品・本庶記念研究基金」に230億円を寄付します。今後もライセンス契約で定められたロイヤリティ料率を変更することなく、本庶氏にロイヤリティを支払うことでも合意しています。

相良社長「内容に満足」

小野薬品は、京都大学特別教授の本庶佑氏が免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の収入配分をめぐって同社に約262億円の支払いを求めて大阪地方裁判所に訴えていた裁判で、12日に和解が成立したと発表した。大阪地裁の和解提案を受け、本庶氏に50億円を支払うほか、京都大学内に設立される「小野薬品・本庶記念研究基金」に230億円を寄付する。ライセンス契約で定められたロイヤリティ料率を変更することなく、今後も本庶氏にロイヤリティを支払うことでも合意した。

 

本庶氏に支払う50億円の内訳は、▽ライセンス契約に係る紛争の全面解決に対する解決金▽三つの特許やこれに関連する国内外の特許の有効性をめぐる対第三者訴訟において、本庶氏が同社に協力したことに対する報奨金▽この特許を含むライセンス契約の対象特許における本庶氏以外の発明者に対する清算金――となっている。

 

設立される研究基金には、京都大学の教育研究環境の充実や教育研究支援事業に対する経済的基盤を拡充するため、同社の自由な意思によって230億円を寄付する。

 

同日、大阪市内で開いた記者会見で相良暁社長は、「本庶先生との諸問題を全面解決できたことを心から喜んでいる。和解内容も満足している」と言及。

 

和解の判断に至った一つ目のポイントとして、2006年に本庶氏と締結したライセンス契約で定められたロイヤリティ料率が維持されたことを挙げた。

 

有効な契約を結んでいるにも関わらず、対象の医薬品が大きな成功を収めたことを理由に契約締結後に料率が変更されるような事態になれば、「製薬産業や産業間全体の産学連携に大きな影響を与えかねないと懸念していたが、その懸念は払拭された」と語った。

 

二つ目のポイントとして、解決金や報奨金、清算金の支払いを含む今回の和解によって「本庶先生との全ての問題を全面解決できた」と話した。

 

三つ目は、京都大学に230億円を寄付することになったこと。オプジーボの収益が大きく伸びたことを受け、相良氏は「契約は契約として、それに加えてアカデミアに還元することがあってもいいのではないかと以前から検討していた」と言及。自由な意思に基づき寄付を行うという形になったため、これまでの検討内容にも沿うとして和解に合意した。

 

本庶氏は昨年6月、同効薬「キイトルーダ」を販売するメルクから小野薬品とブリストルマイヤーズスクイブが得たライセンス収入とロイヤリティ収入の本庶氏への配分が説明された内容と異なるなどとして、約262億円の支払いを求め大阪地裁に提訴していた。

 

相良氏は「長きにわたって株主の利益、本庶先生の要望に挟まれ、難しい状況に置かれていた」と心情を吐露。本庶氏とは係争を繰り広げたが、和解の精神に基づき「水に流す」と述べた。

 

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出典:薬事日報

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