仮想空間、アバターで会話~ポスター発表に新たな試み【日本薬学会第142年会】
25日から薬学会年会
日本薬学会第142年会は25~28の4日間、名古屋市での開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、オンラインでの開催に変更された。現地開催の中止は2年前の京都、昨年の広島に続き3年連続となる。現地で対面の交流はできないものの、一般演題のポスター発表には仮想空間でアバターを用いて会話する仕組みを取り入れるなど、オンラインならではの新たな試みが導入され、新時代の発表形式として注目を集めそうだ。
組織委員長の森裕二氏(名城大学薬学部分子設計化学教授)は、「社会が自粛を強いられている中、医療の一翼を担う薬学という立場で、学会開催によってクラスターを発生させるわけにはいかない」と言及。「この2年間、コロナで積極的な学術交流活動ができなかった。閉塞感を打破するためにも、ぜひ現地で開催したいと準備を進めてきただけに非常に残念で、惜しくてならない」と語る。
オンラインでの開催となるが、現地開催と同様の臨場感のある年会になりそうだ。海外からの演者も含め特別講演やシンポジウムの講演は、全てZoomによるライブ配信で行われる。
一般演題の口頭発表も、Zoomのライブ配信で実施する。事前に収録した発表をオンデマンドで流すことはせず、演者はタイムテーブルに沿ってライブで講演する。発表する場所がオンラインという違いだけで、他の運用は現地開催と大きく変わりはない。
一般演題のポスター発表については、新たな試みを取り入れる。特設サイト内に3日間ポスターデータが掲示されるほか、企業等で採用されているバーチャルスペース「oVice」の仕組みを採用。演者はタイムスケジュールの発表時間内に発表内容を説明し、参加者との対話を行う。
発表内容の説明には、ポスターデータに加えて動画ファイル等の別資料を自由に使用できる。参加者はアバターで仮想空間内を動き回り、発表者に自由に話しかけることができる。参加者同士の談話も可能だ。
昨年と同様に今回も、新型コロナウイルス感染症に関連する発表が多い。
特別講演では、ウイルス学の第一人者である河岡義裕氏(東京大学医科学研究所特任教授)が「新興感染症の征圧を目指して」をテーマに講演する。
シンポジウムでは、「感染初期のCOVID-19患者の重症化を防止するための新規生薬エキス製剤の開発と課題」「ポストコロナ時代を見据えた感染症ワクチン研究」「抗ウイルス感染症研究のフロンティア―ウイルス感染症克服に向けた薬学専門分野での挑戦」「コロナ禍で見直される室内環境と健康の大切な関係」の4題が企画された。
口頭、ポスターの一般演題でもコロナ関係のテーマは99題に達した。口頭発表とポスター発表を合わせた一般演題数は約3100題。昨年はコロナの影響もあって演題数は落ち込んだが、今回の年会では回復した。一般演題数の増加を背景に、7000人以上の参加者数を見込む。参加者増に向けた新たな試みとして、日本医療薬学会のがん専門薬剤師、日本精神薬学会の精神薬学会認定薬剤師の認定制度に必要な受講証明書も発行する予定だ。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2月25~28日の4日間、名古屋市内での開催が予定されていた日本薬学会第142年会が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、オンライン開催に変更されました。現地開催中止は2020年の京都、21年の広島に続き3年連続です。現地での対面交流はできないものの、一般演題のポスター発表には仮想空間でアバターを用いて会話する仕組みを取り入れるなど、オンラインならではの新たな試みが導入され、新時代の発表形式として注目を集めそうです。海外からの演者も含め特別講演やシンポジウムの講演は、全てZoomによるライブ配信で実施されます。