創薬・臨床試験

原薬規格の国際調和を~調達はシングルソースで

薬+読 編集部からのコメント

12月13日、日本エスタブリッシュ医薬品研究協議会(JEMA)は、後発品の安定供給対策として、海外原薬をそのまま用いて日本で製造できるよう、規制運用調和などを求める提言を発表しました。原薬に対する日本独自の規格や試験方法を止め、欧米などと規制運用の調和を図ることで、安定供給につなげる狙いです。

後発品安定供給へ提言

日本エスタブリッシュ医薬品研究協議会(JEMA)は13日、後発品の安定供給対策として、海外原薬をそのまま用いて日本で製造できるよう国際間で規制運用を調和することなどを求める提言を発表した。中間体を含め約7割の品目が輸入されている現状にある中、原薬に対する日本独自の規格や試験方法を止め、欧米などと規制運用の調和を図ることを求めた。それにより、輸入原薬が日本で使いやすくなり、安定供給につながるとしている(関連記事2面)


日本向け原薬は、独自規格に対応するため、製造工程が増え、調達コスト増となっている。その結果、製剤製造、供給、経営に影響しているという。同協議会によると、武田テバファーマで扱っていた抗生物質7剤の原薬を欧州薬局方(EP)、米国薬局方(USP)と比較したころ、総じて日本薬局方(JP)の規格が厳しかった。セファゾリンナトリウムではpH、水分、総類縁物質は許容幅や許容値が低く、総類縁物質では1.0%低い2.5%以下だった。

 

セファゾリン供給不安問題が起きた時でも、EP、USP準拠の原薬や、これらを原料として製造された製剤の国内輸入が認められなかったとしている。

 

外資系メーカーでは、安定性試験で要求される実測値データがICH準拠より多く要求されたケースもある。医薬品添加物規格の添加剤の規定に含まれていない新規物質だった場合、海外で使用が認められても、独自に添加剤に関する毒性試験を実施する必要が生じているため、日本向けのみ添加剤の見直しをする事態を招いているという。

 

原薬メーカーとしても、JP準拠のために行う追加試験の負担は大きいとされる。日本では、欧米に比べ不純物の許容値が厳しく設定されているケースがあり、精製工程を追加する手間が余計にかかる。

 

海外原料メーカーにとっては、工程追加の必要がない欧米向け原薬を購入する多国籍企業の受注が優先され、手間がかかり受注数量が少ない日本向けの優先度は低くなるとしている。そのため日本向けの急な増産要望もタイムリーに反映されない場合が多いようだ。

 

こうした状況を踏まえ、同協議会は、原薬に対する規格、試験方法の国際調和が必要と指摘した。

 

これまでICHなどで国際調和を図ってきているものの、後発品の場合は古い成分も多く、当時の規格のままのケースがあるため、EP、USP準拠原薬による製造を認めるといった対応が必要としている。

 

そのほか提言では、シングルソースで原薬を調達し、安定供給を行う仕組みを検討すべきとの意見も盛り込んだ。第三国への製剤技術供与と合わせ、国家間で優先供給提携を行うことも選択肢の一つとした。

 

同協議会によると、安定供給対策としてダブルソース化が求められているが、恒常的な取り引きのないセカンドソースでは承認記載の製造所としての維持管理が難しく、生産開始まで半年から1年かかることもある。複数メーカーから原薬調達をすると、1カ所当たりの発注量が少なくなって交渉力が弱まり、コストが割高になるため、通常製造に使用できるのは実態としてシングルソースになるケースが多いとしている。

 

同日、都内で記者会見した松森浩士代表(武田テバ社長兼CEO)は、「このテーマは誰かが言わなければならなかった。日本だけが違う、これでいいのか。後発品の安定供給の観点から何が必要かを議論して、変えられるところがあれば、現実的な規制緩和をしてほしい。その議論のきっかけにしたい」と提言の狙いを説明した。

 

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出典:薬事日報

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