医療機器

無人小型船で調剤薬配送~海上ドローン、香川・粟島で初の実証

薬+読 編集部からのコメント

1月27日、薬局で調剤した医療用医薬品を空路ではなく、無人小型船を利用して海路で離島へと届ける海上ドローンの実験が香川県三豊市の粟島で実施されました。あいにくの悪天候で午後の実験は中止となりましたが、午前の実験において須田港から出発した無人小型船は海上を時速4km強で進み、粟島まで到達。今後、離島への薬剤配達手段として海路の利用にも注目が集まりそうです。

薬局で調剤した医療用医薬品を無人小型船の海上ドローンによって離島の患者に届ける国土交通省の実証調査事業が1月27日、香川県三豊市の粟島で行われた。午前中の実験で、須田港から出発した無人小型船が海の上を4km強進み、粟島まで到達した。空を飛行するドローンで医薬品を配送する実証事業は各地域で実施されているが、無人小型船での配送実証は初めて。利用地域は離島に限られるものの、将来は薬局から患者に医薬品を配送する新たな手段になりそうだ。

実証に用いた無人小型船は、全長2.5m、横幅1mの大きさ。見た目は大型のラジコン船のような印象で、波のうねりを受けて左右に傾くが、波に強い。バッテリーで駆動する2基のスクリューを備え、動力は2馬力と小さいものの、船体後部の荷台に最大50kgの荷物を搭載できる。予め設定した航路を自動的に進み、その模様を人がカメラや位置情報で監視する。今回、須田港に設置した専用車から監視を行った。

 

実証調査事業の舞台となる粟島の港までは、須田港から直線距離で4km強。粟島は目視で確認できるほどの近さで、両港を結ぶ定期船は約15分で着く。無人小型船は4kmの距離を約1時間かけて航行する。

 

この日、予定されていた午後の実験は悪天候で中止となったが、主催者側は「天候が安定していた午前の実験は成功した」と発表した。実際に医療用医薬品を積み込んだ無人小型船が須田港を出発し、粟島港まで無事に到達できたという。

 

実証実験は、粟島に住む実際の患者をモデルに実施した。不整脈や期外収縮の症状を有する高齢男性患者に医師がオンライン診療を行い処方箋を発行し、観音寺市のきづな調剤薬局が1月25日にオンライン服薬指導を行い、処方薬を調剤した。プロジェクトのスタッフが医療用医薬品を須田港まで車で運び、無人小型船に積み込んだ(写真上)。

 

薬局からの処方薬の配送には専用の保冷箱を用いた。保冷パックを入れて中の温度を一定の範囲に保てるほか、GPSで位置を追跡できる。複数の患者に対応する想定で、調剤した医療用医薬品を各患者専用のケースに入れて施錠し、保冷箱に収める。

粟島港に到着後は、低速走行の電動車で保冷箱を患者宅に配送。患者は個別の鍵でケースを開けて(写真右)、医療用医薬品をケースから取り出す。薬局薬剤師は到着した頃合いを見計らって患者に電話をかけ、薬の受け取りを確認する。無人小型船での配送が適わなかった午後の報道陣向け実験では、保冷箱を定期船で粟島に運び、港近くの公的施設を自宅に見立てて患者に受け取ってもらった。

 

実証実験は、国交省のスマートアイランド推進実証調査事業の一つとして行われ、三豊市や香川県医師会、各種企業、早稲田大学などが参画する粟島スマートアイランド推進協議会が実施した。空のドローンで医薬品配送のノウハウを持つクオールも技術面で協力している。

 

過疎化が進む粟島の人口は約150人ほどと見られ、医師や看護師が常駐しておらず、薬局もない。島内の診療所に医師が定期的に通うだけで医療体制は不十分なのが現状。今回の実験では医薬品に合わせて日用品も無人小型船で配送する体制を検証した。必要な時に必要な物資を配送する体制を確立し、遠隔医療を充実させることで島民の生活利便性を高めることが狙いだ。

 

2000年度には国交省の同様の事業で、粟島を舞台に空を飛行するドローンでの医薬品配送実験を実施していたが、今回は無人小型船での実証に挑戦した。

 

 

 

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出典:薬事日報

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