AD検出するアプリ開発~音声から認知機能障害分析
筑波大学医学医療系の新井哲明教授らの研究グループは、アルツハイマー病(AD)を検出するための簡単な自己検査ツールとして、発話音声から認知機能障害の特徴を分析するモバイルアプリを開発した。発話内容や話し方の特徴について、音声認識を用いて自動解析し、認知機能障害を高精度に検出できる可能性が示された。
認知症の主な原因疾患であるADは、早期段階である軽度認知障害(MCI)期から予防・治療を開始することが重要とされ、在宅や介護予防教室などでも簡便に利用できる検査ツールの開発が求められている。
その一つとして、発話音声から抽出可能な何を話したかという言語的特徴は、ADの早期検出・予測での有用性が示されている一方、実用上、発語をテキストに変換する音声認識の精度に問題があった。
そこで今回、研究グループは、MCIやADで有意に変化し、音声認識精度にも頑健な言語的特徴に着目。五つの課題に音声で回答する自己検査可能な認知機能障害の早期検出を支援するモバイルアプリのプロトタイプを開発した。
五つの課題は、従来の認知機能検査をもとにしており、写真を言葉で説明する課題や、動物名をできるだけ多く挙げる課題などが含まれている。
また、モバイルアプリを検証するため、健常例43人、MCI例46人、AD例25人の3群合計114人から音声データを収集して解析を行った。
認知機能障害に関連する言語的特徴を自動で推定できるかについて、音声認識を用い自動で変換したテキストを、人手で書き起こしたテキストを正解とし、その認識精度を検証したところ、単語の誤り率は32%だった。これは、英語などその他の言語を含む過去の類似研究と同程度に誤りを多く含むものだった。
一方、音声認識を用いて自動変換したテキストから抽出した言語的特徴は、人手で書き起こしたテキストから抽出した特徴とほぼ一致しており、MCIやADで有意に変化する語彙力や情報量に関する言語的特徴を正確に推定できた。
さらに、どのように話したかという音響韻律的特徴と組み合わせて機械学習モデルを構築することで、MCIを88%、ADを91%の精度で検出できた。
今回の研究結果から、モバイルアプリによる自己検査を通じて、高齢者の発話や方言を含む言い回しなど音声認識が苦手とする音声データからでも、認知機能障害に関連する言語的特徴を正確に推定し、MCIとADを高精度かつ安価で簡便に検出できる可能性が示された。
このようなツールは、AD以外の認知症性疾患のほか、言語的変化を伴う統合失調症やうつ病などの精神疾患にも適用が可能としており、疾患の早期検出だけでなく、進行度の推定や介入効果の定量化などにも役立つと考えられた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
早期段階の軽度認知障害期から予防・治療開始が重要とされるアルツハイマー病を検出するための簡単な自己検査ツールが筑波大学医学医療系の新井哲明教授らの研究グループによって開発。発話音声から認知機能障害の特徴が分析できるモバイルアプリです。音声認識を用いて発話内容や話し方の特徴について自動解析し、認知機能障害を高精度に検出できる可能性が示されました。