医療機器

RPA活用で業務効率化~薬剤部先行、院内各部門へ

薬+読 編集部からのコメント

近江八幡市立総合医療センター(滋賀県)の薬剤部では、年間約340時間にもわたるPC業務をRPA(ロボティックプロセスオートメーション)で代替することに成功。電子カルテからの各種データ抽出や持参薬評価に使う用紙の印刷など、既存のプログラムを自動的に動かすRPAを約30種類構築し、単純な業務に活用しています。その結果、薬剤師や薬剤助手が既存プログラムの操作に費やしていた時間を1年間で約340時間削減。浮いた時間を他の業務に費やせるようになりました。

滋賀県の近江八幡市立総合医療センター薬剤部は、年間約340時間のパソコンでの業務をロボティックプロセスオートメーション(RPA)で代替することに成功した。電子カルテからの各種データ抽出や持参薬評価に使う用紙の印刷など、既存のプログラムを自動的に動かすRPAを約30種類構築し、単純な業務に活用している。薬剤部の先行事例をもとに、現在は昨年4月に発足したDX推進室が中心になって看護部や医事課でもRPAの活用を開始するなど、院内全体の動きに発展している。

RPAは、パソコン上で人が行う操作をロボットで自動化する仕組み。単純作業での活用が適しており、様々な業態で導入が始まっている。医療機関での活用事例はまだ少ないと見られるが、今後広がる可能性がある。

 

同院薬剤部は以前から、エクセルの機能を拡張するVBAを用い様々なプログラムを構築し、各種業務を効率的に行う仕組みを作っていた。ここにRPAを組み合わせ、薬剤師や薬剤助手らがパソコンで動かしていた既存プログラムの操作を自動化した。事前に設定した時間になればRPAが自動的に起動して既存プログラムを操作し、主治医別入院予定抽出、定期持参薬面談票印刷、持参薬依頼書印刷、限定薬使用患者一覧表印刷などの業務を行う。

 

電子カルテ等からデータを抽出する既存プログラムの操作にもRPAを導入した。エクセルのVBA等を用いた各種プログラムを動かすには元データが必要になる。電子カルテ等から毎日抽出しているのは、処方マスタや注射マスタ、入院患者一覧、処方オーダ情報、注射オーダ情報、検査値などのデータ。この抽出業務も人手を介さずRPAで自動的に行えるようになった。月1回の情報抽出にもRPAを導入し、処方や注射オーダ情報、院内外の処方箋や注射箋の枚数、院内外の処方件数などの抽出を自動化している。

 

約30種類のRPAの多くは、日勤帯業務開始前の夜間に稼働するように設定した。日勤帯の業務時間内に動くRPAもある。

 

RPA導入で業務を自動化した結果、薬剤師や薬剤助手が既存プログラムの操作に費やしていた時間を1年間で約340時間削減。浮いた時間を他の業務に費やせるようになった。薬剤部長の山口瑞彦氏(写真㊨)は「薬剤師が病棟で働く時間が増えるなど、業務の質が高まった印象がある」と語る。

 

持参薬評価に使う用紙の印刷も自動化され、薬剤師は円滑に業務を行えるようになった。医療情報技師の資格を持ち、RPA導入を担当した薬剤部の小川暁生氏(写真㊧)は、「そういう部分は楽になったし、様々な業務を行う基礎データの抽出作業も自動化され、全てが最新データという安心感もある」と話す。

 

薬剤部がRPAを導入したのは約2年前。同院が使うNEC製電子カルテシステムの更新に合わせて、RPA導入希望部門が院内で募集され、薬剤部が手を挙げて選ばれた。

 

小川氏は「RPAの構築はマニュアルに沿って行えば、そう難しくはない。当院ではエクセルのVBAと連動させたため、その部分のハードルは高いかもしれないが、RPAを構築することに特別なスキルや知識は必要ない」と振り返る。

 

薬剤部の先行事例をもとに病院全体でRPA導入の動きが進んだ。昨年4月にDX推進室が発足。小川氏も兼任で一員となり、院内各部門の要望をもとにエクセルのVBAプログラムやRPAを構築した。

 

看護部、医事課、総務課など院内7部門で15種類の業務を自動化した結果、年間で約760時間の業務時間を削減。先行する薬剤部の取り組みと合わせて年間1000時間以上の削減に成功した。RPAの導入費用は安くないが、病院全体の推進で費用対効果が生まれるという。

 

山口氏は「タスクシフトの推進に加え、将来医療の働き手が減ることも病院幹部は視野に入れている。それも含めてデジタル化は避けて通れない」と言及。小川氏は「RPAで自動化できる業務はまだある。新規業務の立ち上げ時にも活用を考えたい」と話している。

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出典:薬事日報

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