米国でCVC立ち上げへ~ボストンエリア拠点に年内【中外製薬】
中外製薬は、創薬イノベーションエコシステムがある米国のボストンエリアに、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)「Chugai Venture Fund(仮称)」を年内に立ち上げる。総額2億ドルの枠内で創薬スタートアップに投資し、中分子や抗体技術といった中外の強みとの融合により、新たな創薬技術の創出を図る。
同社が成長戦略に掲げる「世界最高水準の創薬の実現」に向けた取り組み。これまで自前主義の意識が強かったが、オープンイノベーションへ舵を切る。
奥田修社長CEO(写真)は、CVC設立発表翌日の6月28日の記者懇談会で、「自前の研究開発や既存のパートナリングの枠組みを越えて、米国や欧州、日本などの優秀な起業家や高いポテンシャルのある技術へのアクセスを強化することでオープンイノベーションのさらなる推進を目指す」と表明した。
CVCは、主に▽中外での創薬を可能にする、標的分子を特定するような技術、または標的分子▽中外との技術の融合によってより新たな創薬技術になる可能性のある技術▽創薬やトランスレーショナルリサーチをサポートするデジタル・AI技術――に投資する。
ボストンエリアに拠点を置いた理由について、奥田氏は「世界的に見てベンチャーコミュニティとして最大かつ最高の質を持ち、新たな技術、サイエンスへのアクセスが容易になるだろうと思っている」と説明した。
CVCは6人体制で運営する予定。ヘッドについては「ボストンエリアをはじめとしたCVCでの経験があり、人的ネットワークを持っている人。中外の技術に理解、共感する人」と述べた。
中外からもサイエンティストを送る考え。まずは知名度向上とアカデミアなどの周辺関係者とのネットワークづくりから始める。
このタイミングで設立を決定したことについては「中外はずっと自前オンリー主義。自分たちの技術で、自分たちで作り込んで、外のことはそんなに気にしていなかった。それが中外のモノづくりへのこだわりだった。ただ、外を見ていると、核酸、遺伝子治療、細胞治療、デジタルセラピューティクスなどのモダリティが増えてきている。標的探索もいろいろな技術ができてきている。中外のオンリー主義をこのまま続けるのがいいのかということで、成長戦略『TOPI2030』にオープンイノベーションをキードライバーにした。もっと外とコラボレーションして、中外の強みと融合して、さらなる強みを作ろうと検討してきた結果、このタイミングになった」と話した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
中外製薬は同社が成長戦略に掲げる「世界最高水準の創薬の実現」に向けた取り組みとして、創薬イノベーションエコシステムがある米国のボストンエリアに、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)「Chugai Venture Fund(仮称)」を年内に立ち上げます。総額2億ドルの枠内で創薬スタートアップに投資し、中分子や抗体技術といった中外の強みとの融合により、新たな創薬技術の創出を図ります。