原料調達で専門部署新設へ~「シダキュア」需要拡大見込む【鳥居薬品】
鳥居薬品は、スギ花粉症に対する舌下免疫療法薬「シダキュアスギ花粉舌下錠」(一般名:スギ花粉エキス)について、需要の拡大が見込まれるとして、原料であるスギ花粉を安定的に調達する取り組みを始めることなった。政府の「花粉症に関する関係閣僚会議」が5月に決定した花粉症対策では、同療法は根治も可能だとして、年間供給量を5年内に4倍の約100万人分に増加させるとの方針が示されたため、厚生労働省から同社は増産などの安定供給のための方策を実施するよう求められていた。
同社は、8月1日付で生産グループの中にスギ花粉の調達を一元的に担当する部署「原料調達部」を設置する。同部では、森林組合などスギ花粉採取先について新たな採取先を開拓し、交渉、契約、スギ花粉採取量の拡大に向けた施策を企画、実行する。生産グループ調査役の積田文雄氏が同部長に異動し、取り組みの指揮を執る。
これまで原料調達は、同グループの生産物流部が担っていた。今回、専門部署を新設することで、同社は「中長期的な安定供給のために原料確保の強化を図る」と説明している。
同剤は、2018年6月に薬価収載されて以降、売上が急増している。19年には36億5400万円だったが、22年には96億0800万円と約2.6倍、23年は103億9000万円と、100億円突破を計画している。同剤を含むアレルゲン領域は同社売上高の約4割を占め、成長の牽引役となっている。
その中にあって、同剤には想定を大幅に上回る注文が続いているとして、維持期用製剤の5000JAUの供給を優先するため、2000JAU規格を限定出荷とする事態となっている。
さらに、中期的にも政府方針により需要が一層拡大する可能性が見えてきたことから、同社は原料調達を一元的に行う部署を新設し、対応することになった。
関係閣僚会議が決定した「花粉症対策の全体像」では、治療対策に「根治療法の普及」を掲げ、皮下免疫療法と舌下免疫療法を列挙。舌下錠を用いた舌下免疫療法については、年間供給量を5年以内に現在の約25万人分から約100万人分に増加させるとの方針を示した。そこで、「森林組合等への協力要請、企業への増産に向けた要請等に速やかに着手する」と関係省庁に対応を指示した。
普及策については「対症療法が不十分な方には舌下免疫療法が推奨されることを周知すると共に、今後の治療薬の増産を念頭に置きつつ、舌下免疫療法のさらなる普及と適切な提供体制の整備のため、学会等を通じた医療機関等への協力要請、実施医療機関のリスト化および周知、オンライン診療可能な医療機関の周知等を進める」との方針を示し、取り組みを進めることにした。
対策の決定を受け、厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課は5月30日付で、同社に対して直接、事務連絡を発出した。その中で「かかる事情を考慮いただき、当該製品の増産等を通じて市場における需要を満たせるよう適切に対応いただくと共に、今後の製品の安定供給のために必要な方策を実施いただくようお願いする」と対応を促していた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
鳥居薬品では、スギ花粉症に対する舌下免疫療法薬「シダキュアスギ花粉舌下錠」の需要拡大が見込まれるとして、8月1日付で生産グループの中にスギ花粉調達を一元的に担当する部署「原料調達部」を設置し、原料であるスギ花粉を安定的に調達する取り組みを始めます。同社は厚労省から増産などの安定供給のための方策を実施するよう求められていました。