医療

副作用発現予測にAI開発~プログラム機器で上市視野

薬+読 編集部からのコメント

10月28~29日、高知県高知市で日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会中国四国支部学術大会が開催されました。医療ビッグデータ解析をテーマにしたシンポジウムでは、岡山大学病院教授・薬剤部長の座間味義人氏が、免疫チェックポイント阻害剤による心筋炎の発症リスクをAIで予測するプログラムの開発を進めていることを報告しました。

日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会中国四国支部学術大会が10月28、29の両日、高知市で開かれた。医療ビッグデータ解析をテーマにしたシンポジウムで座間味義人氏(岡山大学病院教授・薬剤部長)は、免疫チェックポイント阻害剤による心筋炎の発症リスクを人工知能(AI)で予測するプログラムの開発を進めていると報告。医薬品医療機器等法で承認を得た医療機器プログラム(SaMD)での上市も視野に入れて、社会実装を目指す考えを示した。

座間味氏らは、以前実施した医療ビッグデータ解析で、女性や高齢者が同剤による心筋炎を発症しやすいことを突き止めた。その成果を臨床現場に応用するため、発症予測プログラムの開発に着手。具体的に、医療ビッグデータの同剤使用例のデータをもとに、AIによる機械学習で心筋炎の発症を予測するモデルを構築し、予測性能を評価する手法で開発を進めている。

 

まず、米国の副作用自発報告データベースであるFAERSを用いて年齢や性別の因子だけで予測するモデルを構築したが、精度は低かった。次に、JMDCの国内レセプトデータベースに登録された同剤使用症例2171件を対象に、年齢や性別に加えて既往歴、併用薬、抗癌剤の使用、有害事象発症状況のデータも踏まえ予測モデルを構築したところ精度が高まった。

 

さらに、メディカル・データ・ビジョンの国内診療データベースに登録された同剤使用例1万9285件を対象に、約1万3500件の学習データで予測モデルを構築し、5785件のデータで予測性能を評価した結果、データ件数の増加に伴い予測精度が向上したという。

 

座間味氏は「今後は、例えばゲノムデータやバイオバンクのデータを含めて解析することで、予測精度の向上とゲノム医療への展開が期待できる」と語った。

 

高い精度で心筋炎の発症を予測できるプログラムを構築できれば、臨床での後ろ向き評価や前向き評価を実施する計画。SaMDでの上市も選択肢の一つとして、医療従事者が活用できるツールを提供したい考えだ。

 

そのほか、シンポジウムでは、冨田淳子氏(徳島文理大学大学院)がレセプトデータの解析で薬の過剰交付者を可視化した成果を示した。慢性疾患治療薬5剤の投与患者を対象に調剤状況を調べたところ、約15%の患者で過剰に交付されていた。

 

ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬、第3世代カルシウム受容体拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、スタチンを処方された55歳以上の患者約230万人を対象に解析した。治療継続期間中の合計調剤日数や重複調剤日数のデータをもとに、治療継続期間を上回る調剤日数を解析し、過剰日数や過剰コストを算出した。

 

約15%の患者で薬の過剰交付が認められ、1年間のうち過剰日数の中央値はいずれの薬も6~7日、過剰コストの中央値は約100~900円だった。

 

冨田氏は、これまでレセプトデータを解析した研究で、スタチン新規処方患者のうち1年で中止に至る割合が3分の1以上に達することを明らかにしている。

 
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出典:薬事日報

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