医療

卒直後研修は1年が有力~病院・薬局希望者を対象 日本医療薬学会年会

薬+読 編集部からのコメント

日本医療薬学会年会のシンポジウム(11月3~5日、宮城・仙台市)で、薬剤師の卒直後研修のあり方をめぐり意見交換が行われました。登壇者からは「研修期間は1年」「対象者は卒業生全員ではなく病院や薬局等への就職希望者」とする見解が示され、現在厚労省が策定を進める「薬剤師卒後研修ガイドライン」にこうした方向性が盛り込まれる可能性があります。

3~5日に仙台市で開かれた日本医療薬学会年会のシンポジウムでは、薬剤師の卒直後研修のあり方をめぐって意見が交わされた。厚生労働省の関連事業を受託する日本病院薬剤師会の石井伊都子氏(千葉大学病院教授・薬剤部長)は、研修期間は1年とし、対象者は卒業生全員ではなく病院や薬局等への就職希望者とする見解を提示。山田清文氏(名古屋大学病院教授・薬剤部長)も同様の私見を示した。現在、厚労省が策定を進めている薬剤師卒後研修ガイドラインには、こうした方向性が盛り込まれる可能性がある。

厚労省は2021年度から3年間、薬剤師を対象にした「卒後臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業」を実施。日病薬が事業を受託し、各病院で実際に卒後研修を行うモデル事業に取り組んできた。

 

研修生が病棟業務を通じてチーム医療や主体的な介入の効果を経験したり、連携薬局で在宅業務の研修を受けたりするもので、22年度は病院薬剤師42人、薬局薬剤師11人が25病院で6カ月の研修を受けた。23年度は研修期間を1年に延ばし、人数を増やして事業を進めている。

 

各病院で試行した研修の成果や課題をもとに、標準的な卒後研修カリキュラムや研修生の評価方法などを作成する。その案を踏まえ、厚労省が薬剤師卒後研修ガイドラインを策定する計画だ。

 

石井氏は、研修期間について21年度の事業で1年を提案したと報告。研修対象者を卒業生全員にするかどうかで様々な意見がある中、「私自身はノー。臨床での活躍を希望する薬剤師が対象になる」と話した。

 

薬局での就職希望者も病院での研修が必要かとの問いかけには「様々な議論があり、それぞれの立場で考え方がある。病院は重篤度の高い患者が多く、多職種が働いている。薬物治療の全体像やチーム医療なども学べる」との考えを述べた上で、「私の回答としてはイエス」とし、入院患者の理解が地域医療の充実につながると呼びかけた。

 

一方、今後の制度設計に向けて、研修施設や指導薬剤師の要件、研修期間中の給料、マッチングシステムなど検討すべき課題は少なくないと語った。

 

厚生労働行政推進調査事業費補助金で今年度から2年間「薬剤師のキャリア形成促進に関する研究」に取り組む山田氏は、私見として「薬局や病院を目指す薬剤師は、研修認定病院でプログラムに基づく卒後研修を受けた方がいいのではないか」と指摘した。

 

研修期間は1年間で有給の仕組みを提案。研修期間中の給料は「研修実施機関から払われることになると思うが、行政の支援も考えられる」と期待感を示した。

 

他職種では法的に医師は2年以上、歯科医師は1年以上の臨床研修が必修化され、看護師は新人看護職員の卒後臨床研修が努力義務化されている。一方、薬剤師には卒後臨床研修に関する法的規制はない。

 

現在、薬剤師の多くは卒業後に薬局や病院に就職し、現場で働きながら業務を習得する。十分な研修プログラムが存在しないなど施設間の格差が大きい。薬剤師レジデントを受け入れ研修を行う病院もあるが、全体に占める数は少ないなど様々な課題がある。

 

山田氏は「卒後の初期研修とキャリア形成は米国の仕組みが参考になる」と言及。米国では薬大卒業後そのまま就職する薬剤師もいるが、3分の1は有給で1~2年間の研修を受けるレジデントプログラムに進む。修了すると米国薬剤師会の専門薬剤師の受験資格を得られる。

 

米国のレジデント応募者が毎年増え、競争的なポストになっているのは、修了者のキャリア形成につながるためと考えられる。日本でも、プログラムに基づく研修認定病院で研修を受けた薬剤師のキャリア形成にメリットを与えることで、この道を選ぶ薬剤師を増やせるという。

 

2年間の研究を通じて、キャリア形成を促進する実現可能な制度を提言する計画だ。具体的には、▽医療機関や薬局における臨床研修の実施体制や受入体制の実態調査▽薬剤師を対象にしたキャリア形成に関する意識調査――を実施する。医師の卒後研修制度が不足や偏在の解消に及ぼす影響を調べ、薬剤師の不足や偏在解消にも役立つ制度として提案したい考えだ。

🔽薬剤師になるまでの流れを詳しく紹介した記事はこちら

  • 薬剤師のための休日転職相談会
  • 薬剤師の転職・求人・募集はマイナビ薬剤師/5年連続満足度NO.1

<完全無料>転職やキャリアのご相談はマイナビ薬剤師へ

出典:薬事日報

ページトップへ