医療

調製時間6時間以上削減~抗癌剤ロボット導入で 日本医療薬学会年会

薬+読 編集部からのコメント

抗癌剤調製ロボットの導入により、1日当たり6時間以上の調製時間が削減され、病棟業務に人員を回せるようになることで患者への指導件数が月30件増加したという事例が、日本医療薬学会年会のシンポジウムで報告されました。登壇者からは、ロボット活用のメリットとして、医薬品の取り違え・調製用量の過誤・使用期限の超過の防止などにも期待感が示されました。

抗癌剤調製ロボットによる調製は、日本病院薬剤師会監修の「抗がん薬調製マニュアル」にも調製機器の一つとして掲載されており、認知度は高まりつつある。仙台市内で行われた日本医療薬学会年会のシンポジウムでは、抗癌剤調製で実際にロボットを活用する薬剤師から、ロボット導入によって1日当たり6時間以上の調製時間の削減や病棟業務に人員を回せるようになることで、患者への指導件数の月30件増につながった事例が報告された。

抗癌剤調製ロボットは、日本においてダーウィンケモ、アポテカ、ケモロの3種類があり、全国20施設以上で導入されている。抗癌剤調製時の問題点である調剤過誤や曝露への対策、効率的な業務運用への対応策として注目されている。

 

刈谷豊田総合病院化学療法センター薬剤部は、2016年から化学療法センターにダーウィンケモを導入している。23種類41品目の抗癌剤に対応しており、同院の全調製件数のうち、ロボットで調整可能な件数は88.6%にも上る。

 

ロボットを導入したことで、抗癌剤調製に充てていた人員のうち1人を患者指導やカルテチェックなどの病棟業務にシフトすることができ、「癌患者指導管理料3」の算定に関わる指導件数も導入前と比べて月30件ほど増加したという。

 

同センター薬剤部の榊原隆志氏は、「ロボットへの調製指示後は、他の業務に専念することができるため業務効率化が図ることができ、患者対応業務の拡充も可能」とメリットを述べた。一方で、調製対象薬剤の拡充や調製時間の長さなどの課題を指摘した。

 

外海友規氏(名古屋市立大学病院薬剤部)は、21年から導入したケモロによるマンパワーに対する影響について、調製時間は全て手調製したと仮定した場合と比べて1日当たり6.35時間短縮されると説明。ロボットの導入・活用が実際にマンパワー削減につながると報告した。

 

外海氏は、今後ロボットによる抗癌剤調製が当たり前の選択肢となるためには薬剤師と機器メーカーの連携による“育ロボット”の視点が重要と指摘。薬剤師による医療現場からのエビデンスの発信、病院や社会へのアピールと共にロボット機器メーカーに対してデメリットを低減する開発や付加価値向上を要望した。

 

栗島直希氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター薬剤部)は、アポテカ導入による医療費削減効果について紹介した。アポテカ導入前は揮発性薬剤を閉鎖式器具を用いて調製していたが、導入後は全てアポテカで調製を実施。閉鎖式器具の購入額と「無菌製剤処理料1」加算のみを考慮し、実績をもとに算出したところ、年間約150万円の収益増につながったという。

 

アポテカから発行される残液ラベルを活用し、残液の翌日以降への持ち越しを開始。残液使用期限を2日として試算すると、年間約2400万円の薬剤費が削減されると分析した。残液ラベルを活用することで、医療費削減効果だけでなく、医薬品の取り違え、調製用量の過誤、使用期限の超過の防止にも期待感を示した。

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出典:薬事日報

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