入院前に薬局から服薬情報~「服薬情報等提供料3」活用 大阪大学病院
大阪大学病院は今月から、地域の薬局薬剤師に依頼し、入院予定患者の服薬情報の一覧をFAXで送ってもらう運用を開始した。2022年度診療報酬改定で新設された服薬情報等提供料3の枠組みを活用し、薬局と連携する。当面は1日数人程度を対象とし、25年5月に予定する統合診療棟の新設時には全面的に運用する計画だ。事前に情報を得ることで入院時の受け入れ体制が充実するほか、病院薬剤師の負担軽減にもなると期待している。
現在、入院予定患者の服薬情報の事前把握は十分にできておらず、入院当日に病棟担当薬剤師が実施している状況。昨年から改善に向け、一部診療科の手術予定患者を対象に、病院薬剤師が入院前に関わる試行を開始した。1日数人の患者に関与。服用薬を一元的に把握し、抗凝固薬や抗血小板薬などを手術前に確実に中止している。
今月からは薬局薬剤師との連携を始めた。術前中止薬の確認が不要な患者のうち1日数人を対象に、同院の薬剤師が▽患者向け説明文書▽病院から薬局への依頼書▽服薬情報等提供書――を渡し、趣旨を説明。患者は、自由意志で選んだ薬局を訪れて依頼書を渡し、使用中の全ての薬やお薬手帳などを提出する。
薬局薬剤師は患者との面談で、受診する医療機関や服用薬、服薬状況、OTC薬や健康食品の使用状況などを聞き取り、服薬情報等提供書に記載。
入院日までに同院薬剤部へFAXで送信する。服薬情報等提供料3の要件に沿って運用しており、薬局は3カ月に1回50点を算定できる。
25年5月に予定する統合診療棟新設時には、全面的に運用する。外来機能や手術部門などが移管される同棟には、患者相談や患者支援の関連部署を集約した患者包括サポートセンターを移し、機能を拡充する。
同センターの看護師が入院予定患者を振り分け、術前中止薬の確認が不要な患者については、薬局で服薬情報を一元的に把握し、FAXで送信してもらう。手術等の予定患者は、同院の薬剤師が院内で面談し、服薬情報の把握や術前中止薬の確認などを行う。
同院教授・薬剤部長の奥田真弘氏は、「事前に持参薬確認を終えることで、入院までの間にポリファーマシー対策を立てたり、非採用薬を用意したりするなど、準備期間があることでケアの深さや継続性を確保できる」と強調。現在は多くの患者で、持参薬確認は入院当日に病棟担当薬剤師が行っているが、その負担軽減や働き方改革にもつながると期待している。
薬局薬剤師にとっても「かかりつけ薬局を認識してもらうきっかけになる。その結果として、入退院を通じた薬学的管理の充実につながる」と語る。
服薬情報等提供料3は22年度改定で新設されたが、全国的に算定は進んでいない。中央社会保険医療協議会で報告された同年6月の算定件数は435件だ。
奥田氏は「本格的に取り組んでいる病院はまだ少なく、あまり聞いたことがない。服薬情報等提供料3は病院から薬局への依頼が出発点になる。今後、病院からの依頼が増えれば、こうした流れが全国で生まれると思う」と話している。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
大阪大学病院は、2022年度診療報酬改定で新設された服薬情報等提供料3の枠組みを活用し、薬局と連携する取り組みをスタートしました。2024年1月から地域の薬局薬剤師に依頼し、入院予定患者の服薬情報の一覧をFAXで送ってもらう運用を開始。情報を事前に得ることで受け入れ体制が充実するほか、病院薬剤師の負担軽減にもなると期待されています。