薬剤師出向で残業時間削減~薬剤管理指導料も算定増 千葉大学病院薬剤部
千葉大学医学部附属病院薬剤部は、10月から千葉県香取市の香取おみがわ医療センターへの薬剤師出向を開始した。従事経験19年の薬剤師を派遣した結果、出向後わずか1カ月で薬剤部の残業時間が約30時間減少し、薬剤管理指導料の算定件数増加にもメドが立った。2026年3月までの1年半の出向期間で病棟業務の充実と外来業務への拡大、業務マニュアル整備や教育プログラム構築、新卒薬剤師を採用するための広報活動をサポートしていきたい考えだ。
香取おみがわ医療センターは、香取地域の医療を担う100床の中核病院。薬剤科は中核薬剤師2人が昨年退職したことで薬剤師4人と人手不足に瀕しており、病棟業務についても二つある病棟のうち一つの病棟でしか実施できていない状況にあった。
さらに、病棟業務を行う薬剤師の勤務時間も労働基準法に定められた法定労働時間を超える水準に達しつつあり、同センターの濱口秀雄薬剤科長(写真右)は「病棟から撤退しなければならなくなるところまで来ていた」と話す。
同センター薬剤科の支援要請に応えるため、千葉大病院薬剤部は千葉県薬務課とも協議し、6月の診療報酬改定で新設された薬剤業務向上加算を算定する形で薬剤師出向を開始した。
出向者として選ばれたのは入職19年のベテラン薬剤師である高塚博一氏(写真中央)。中央業務から病棟業務まで幅広く経験し、専門領域としては感染症領域の院内感染対策チーム(ICT)や抗菌薬適正使用支援チーム(AST)にも関わり、薬学博士の学位を持つ。
千葉大病院の石井伊都子教授・薬剤部長(写真左)は、高塚氏を出向者に選んだ理由について、「退職した先生が中堅の薬剤師、定年となった薬剤師と共に中核を担っていたので、出向第1号はしっかりした人を出したかった。あらゆる業務をこなすことができ、組織全体を見ることができる人でなければ後が続かないと思った」と説明する。
高塚氏は、出向後わずか2週間で病棟業務の責任者に任命され、現在は同センターの中央業務と病棟業務を行いながら薬剤師に対する指導にも当たっている。薬剤師出向後わずか1カ月で残業時間を約30時間削減する成果を生み出した。
高塚氏は、出向前に同センターの中期計画から病院が目指す方向性を確認し、薬剤師の立場で必要な業務改善の検討に着手した。出向先施設の業務効率化については「千葉大病院のノウハウを還元できる」とし、「例えば、業務と業務の隙間時間を活用して行える業務を作り出せば、薬剤師1人の時間当たり仕事量が増えることなどを伝えている」と話す。
濱口氏は「実務と教育の両面で柱になってもらっている」と高く評価。「10月は残業が減り、薬剤管理指導料の算定点数も上がるとの予想がある。おそらく今月は間違いなく算定件数が増える」と手応えを語る。
今後は、薬剤管理指導料の算定件数拡大や病棟から外来業務への進出を目指すと共に、業務改善を通じて業務マニュアルの整備や教育プログラムの構築にも取り組む。薬剤師採用に向けた広報活動もサポートし、入職者のキャリアアップが実現できるよう千葉大病院と連携した教育研修の実施も視野に入れる。
高塚氏は、「出向先施設では、認知症や高齢を理由に薬剤管理指導が行えない患者さんが入院患者全体の半分程度いると感じている。出向期間中にデータを集積し、患者さんの介護者への指導にも関与できるようになりたい」と話す。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2024年10月より、千葉県香取市の香取おみがわ医療センターに千葉大学医学部附属病院薬剤部から従事経験19年の薬剤師が出向。わずか1カ月で薬剤部の残業時間が約30時間減少し、薬剤管理指導料の算定件数増加にもメドが立ちました。