【厚労省 城医薬局長】薬機法改正は安定供給重視~後発品生産力向上が課題

厚生労働省の城克文医薬局長は、本紙の取材に応じ、医薬品医療機器等法改正案について「前回の2019年改正法施行後の課題は医薬品供給不安の問題が大きく、そのための対処を法律でしなくてはいけない」と述べ、安定供給対応を重要なポイントに挙げた。「供給不安時の対症療法という意味では整理がついた」との見通しを語る一方、「今後は後発品の生産力をどう上げていくかが課題」と指摘。高齢化を背景とした後発品需要の拡大に対応するための基金を創設する狙いも語った。
城氏は、薬機法について「研究から開発、製造、販売の一連のプロセスにおいて品質が確保された医薬品を安定供給するための規制」との認識を示し、多岐にわたるテーマで構成された今回の改正案についても「医薬品を正しく届けるという発想で括った」と話す。
ドラッグラグ・ロス対策についても「使える医薬品を承認し、安定して届けていくという観点から考えると別物ではない」との考えを述べ、広義の安定供給対応との認識を示す。
また、医薬品の出荷停止の届出義務づけや供給不足時の増産など必要な協力の要請等を法定化するが、城氏は「これまでの供給不安は個別企業の問題にあったが、コロナを経験して一部疾患の特定患者だけではなく、広く国民一般にも供給不安が起きることが分かった」と述べ、行政や企業が個別に対応するのではなく、安定供給対応で協力できる法律による根拠規定が必要とした。
「企業への“お願いベース”ではなく、法律上の根拠を持ってどれくらいの在庫量、出荷量があるのか、どの程度増産できるのか情報を提供してもらい、国が把握できる仕組みが必要」と協力を求めた。
特定医薬品供給体制管理責任者の設置も義務づけ、安定供給確保が特に重要な医薬品についても「しっかりと確保するための措置を指示する」体制を整備する。
一方で、「製造販売承認の一部変更に半年かかることで現場のGMP違反につながったという背景もあるかもしれない」として、行政側の対応も見直す。具体的には、変更が中程度である場合の類型を設置し40日程度で手続きを可能にすると共に、軽微変更のうち医薬品の品質に与える影響が比較的に小さいものについては年に1度の報告に代えられるようにした。
供給不安発生時の対症療法のスキームについては、これまで実施してきた薬事・薬価制度の見直しと合わせ「かなり整理ができた」との見方を示す一方、今後は「供給停止している工場を含めフル稼働してもまだ供給量が足りない。後発品の生産力をどう上げていくか」と根本的な解決策を課題に挙げた。
今回の改正案では、後発品の安定供給確保に対応した基金を創設し「基金を活用して後発品の生産量にバッファー(余裕)を持たせたい」と話す。
一方、薬局機能の強化にについても「薬剤師がしっかりと薬を届けるという意味で法改正を行った」と安定供給対応の一環であることを強調する。調剤の一部外部委託やデジタル技術を活用した薬剤師の遠隔管理下で薬剤師が常駐しない店舗での一般用医薬品販売などが認められたが、「いろんな枠組みや手段は使えていいと思うが、それによって医薬品を適正に提供するための質は下がってはいけない」との考えを示す。
乱用の恐れのある医薬品については「指定乱用防止医薬品」の新たなカテゴリーを創設した。新経済連盟からは若年者へのインターネット販売継続を求める声明が出されたが、城氏は「新類型を作る以上は新類型に合わせた規制であるべき。リアルの店舗でやっていなかったことをやってもらわないといけないし、デジタルの店舗でやっていなかったことをやってもらわないといけない」と述べ、医薬品を適切に届けるための規制に理解を求めた。
出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
厚生労働省の城医薬局長は薬事日報の取材で、薬機法改正案について「前回の2019年改正法施行後の課題は医薬品供給不安の問題が大きく、そのための対処を法律でしなくてはいけない」と述べ、安定供給対応を重要なポイントに挙げました。