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【京都薬大など共同研究】外来抗菌薬の処方動向解析~薬局レセコンデータから

薬+読 編集部からのコメント

京都薬大の村木教授、昭和大の前田教授、日本薬剤師会の研究グループは、国内2638軒の薬局のレセコンデータから外来患者の抗菌薬処方動向を解析する方法を確立しました。主な応需診療科別の薬局における抗菌薬処方動向の中央値を算出し、自施設の値が中央値以上であれば抗菌薬適正使用を医師に働きかけるなど、各薬局の薬剤師が薬剤耐性(AMR)対策を推進する標準的な指標として活用してほしいとしています。

京都薬科大学の村木優一教授、昭和大学薬学部の前田真之准教授、日本薬剤師会の研究グループは、国内2638軒の薬局のレセコンデータから外来患者の抗菌薬処方動向を解析する方法を確立し、その数値を算出することに成功した。耳鼻科診療所の処方箋集中率が高い薬局など、主な応需診療科別の薬局における抗菌薬処方動向の中央値を算出。自施設の値が中央値以上であれば抗菌薬適正使用を医師に働きかけるなど、各薬局の薬剤師が薬剤耐性(AMR)対策を推進する標準的な指標として役立ててもらいたい考えだ。

薬剤耐性菌を抑制するためには、入院患者だけでなく、外来患者に使用される抗菌薬の適正使用推進が欠かせない。薬局薬剤師のAMR対策の推進に向けて、外来患者の抗菌薬処方動向の現状把握や、AMR対策の評価に役立つ標準的な指標が必要とされていた。

 

共同研究は、薬局でのエビデンス構築を進める日薬が薬系大学の研究者に協力を依頼。研究費を拠出し、共同で取り組んだ。約100薬局を対象にしたパイロット研究を経て、調査対象を全国2638軒の薬局に拡大し解析した。薬局がエクセルにデータを記入し、都道府県薬剤師会が回収して集計。日薬が一元化し、研究グループで解析した。

 

データを円滑に収集できるように、薬局のレセコンから抗菌薬の処方情報を抜き出す手順を解説したり、販売名を成分名に変更する作業を半自動化するアプリを配布するなど、工夫を凝らした。

 

薬局のレセコンデータから抗菌薬の処方動向を算出する新たな指標も開発し、DPMと命名した。これは1カ月間の処方箋受付回数1000回当たりの抗菌薬の推定投与日数のことで、まず1カ月間の抗菌薬の調剤数量を力価総量として算出し、1日仮想平均維持量(DDD)で除することで推定の投与日数を計算。処方箋受付回数で除した後に1000を乗じることによりDPMを算出する。

 

2019年1月と6月、21年1月と6月のデータを集めて解析したところ、外来患者の抗菌薬使用は新型コロナウイルス感染拡大後に減っていた。この傾向は抗菌薬販売量の推移と相関しており、今回確立した方法の確かさを確認できたという。

 

詳しい解析も行った。薬局には応需する処方箋の集中率が高い医療機関の形態(病院、診療所)や診療科を回答してもらい、抗菌薬は第3世代セファロスポリン系薬、キノロン系薬、マクロライド系薬、その他に分類。これらを踏まえ、主な応需診療科別の薬局におけるDPMや抗菌薬の種類を解析した。

 

その結果、耳鼻科診療所の処方箋集中率が高い薬局では、抗菌薬を含む処方が多く、DPMの数値が突出して高かった。新型コロナ感染拡大後にDPMは低下したが、他の属性の薬局に比べ依然として高かった。

 

このほか、皮膚科診療所の処方箋集中率が高い薬局では、新型コロナ感染拡大前後でその他の抗菌薬処方状況は変化しないなど詳細な動向が明らかになった。研究成果は5月に国際的な科学雑誌「Antibiotics」に掲載された。

 

前田氏は「AMR対策が求められる中、薬局薬剤師に大きな動きはなかった。動き出すためには指標となる基礎的なデータが必要で、それを示す方法を確立できた」と意義を語る。

 

村木氏は「自分自身も病院薬剤師の時に、抗菌薬の処方動向を調べて示したことが様々な職種と対策を話し合うきっかけになった」と振り返り、「多くの薬局が協力してデータを作ったという意義も大きい。自薬局の状況は容易に算出できる。全国的な中央値よりDPMが高ければ処方医や地域にフィードバックし、どうすべきかを話し合ってほしい」と話している。

 

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出典:薬事日報

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