“漢方”に強くなる! まるわかり中医学 “漢方”に強くなる! まるわかり中医学

知れば知るほど奥が深い漢方の世界。患者さんへのアドバイスに、将来の転職に、漢方の知識やスキルは役立つはず。薬剤師として今後生き残っていくためにも、漢方の学びは強みに。中医学の基本から身近な漢方の話まで、薬剤師・国際中医師の中垣亜希子先生が解説。

第56回 更年期を過ごしやすくする! タイプ別漢方・養生法

イライラ、落ち込み、急なのぼせなどの症状で悩んでいませんか。もしかしたら、更年期障害の症状のひとつかもしれません。これらのよく聞かれるもの以外にも更年期障害の症状は本当にさまざま。今回はタイプ別に更年期の症状や、改善のために摂るべき生薬・食材について解説します。

目次

1.更年期の症状は人によってさまざま

更年期とは、女性ホルモン(エストロゲン)がゆらぎつつ低下していく時期のこと。閉経前と閉経後の5年間、計約10年間を指し、人によってこの期間は前後します。

更年期障害といえば、ホットフラッシュ(急なのぼせ)やイライラが思い浮かびますが、実際の症状は驚くほどさまざまで、重さ軽さにも個人差があります。この後で、タイプ別に更年期を解説していきますが、たいていの人はいくつかのタイプの症状が混合して現れます。もともと弱いところ(ウィークポイント)に症状が現れることはもちろん、過去に感じたことのない症状が現れることもよくあります。

約50年生きて更年期を迎えた人間の身体はとても複雑で、いくつかの原因が絡み合っていることがほとんどであるため、全身的な細かい分析が必要です。患者さん一人ひとりに対して臨機応変に治療の順序・優先順位を決めて対処していきます。

2.重くなりやすい体質は若いうちから予測できる部分も

漢方相談を受けていると、20〜30代でも「更年期に症状が強く現れるだろうなぁ」と予測できる患者さんに多く出会います。婦人科系に悩みのある人や体質虚弱の人、不満やストレスの多い生活をしている人、不摂生な生活をしている人は、更年期に大きく体調を崩しやすい傾向があります。

しかし、早いうちに体質改善をしておけば、更年期をいくらか過ごしやすくできるでしょう。現在の体質や生活習慣から、未来までをも予測できるのが中医学の良いところ。更年期障害が重くなりやすい体質は中医学的には予測できる部分もあります。傾向が分かれば、対策が打てます。これを「未病先防(みびょうせんぼう)」と言い、中医学の基本的な考え方のひとつです。

普段から不調を感じる人は、巷の流行りや健康法(ホットヨガ、サウナ、ローフード、ファスティング、玄米食、辛いもの…など)を続ける前に、自分の体質にとってはプラスかマイナスかを一度専門家に相談してみるのもいいでしょう。巷の流行りや健康法は体質を選ぶものもあります。自分の体質には合わないことを5年、10年と続ければ、体質はますます歪んでしまいます。

3.中医学では更年期をどう捉える?

中医学では、更年期症候群のことを、「経断前後症状」「絶経」「経断」などと呼びます。

女性は7年周期、男性は8年周期で腎精が変化し、腎精が増えるとともに成長・発育して身体は充実し、歳とともに腎精が減少して老化してゆきます

中国最古の医学書である『黄帝内経素問・上古天真論』には「女子…(中略)…七七任脈虚、太衝脈衰少、天癸竭、地道不通、故形壊而無子(女性は、49歳前後で、妊娠をつかさどる任脈と、月経をつかさどる太衝脈が衰弱して、天癸[性ホルモンなど]が尽き、月経がこなくなり、子供ができなくなる)」という記述があります。

更年期(閉経前後)は腎が弱り、腎に貯蔵されている「腎精」も不足しがちになるため、女性ホルモンなどが減少し生殖機能が減退するほか、体内の陰陽のバランスが乱れやすくなります。(腎に貯蔵された「腎精」を守る養生については、前回の記事「第55回 健康で美しい髪を手に入れる養生&生薬」を参照してみてください。)

中医学の「腎」とは、成長・発育・生殖・老化をつかさどり、泌尿器系・生殖器系・ホルモン系・免疫系・水分代謝・骨代謝・足腰・耳・髪・骨髄・脳などを支える臓器です。非常に大切なことを「肝腎要(かんじんかなめ)」と言ったりしますよね。腎と肝は協力し合って命の根幹を支えています。

4.更年期症状のタイプ別対処法

具体的に、どのように更年期症状と向き合えばよいのでしょうか。

今回は、更年期に比較的に症状が現れやすい「腎・肝・心」に焦点をおいて、タイプ別の生薬・養生について説明していきます。

治療のベースは「補腎(ほじん=腎の弱りを補うこと)」です。とはいえ、胃腸が弱くて補腎できないケースもあったりするのでケースバイケース。いつものように、基本は弁証(※)です。

弁証……一人ひとりの証(体質・病の本質)を見極めること

今回は更年期に比較的に症状が現れやすい「腎・肝・心」に焦点をおいて、おおまかに5タイプに分けました。腎の弱り(腎虚)で大別したタイプ⑴ ⑵と、さらに、訴えの多い3つタイプです。


(1)潤いが不足して乾燥&ほてりやすい『腎陰虚(じんいんきょ)タイプ』
(2)疲れやすく身体を温める力が弱い&水がだぶつきやすい『腎陽虚(じんようきょ)タイプ』
(3)ストレス・イライラ・憂鬱など情緒が不安定になりがちな『肝鬱(かんうつ)タイプ』
(4)疲れやすい・思い悩みやすく心配性な『心脾気血両虚(しんぴきけつりょうきょ)タイプ』
(5)血の巡りが悪い、血液ドロドロの『瘀血(おけつ)タイプ』
 

⑴潤いが不足して乾燥&ほてりやすい『腎陰虚(じんいんきょ)タイプ』

「腎陰虚(じんいんきょ)」とは、「腎陰(じんいん)」が「不足(=虚)している」状態のこと。

腎陰(じんいん)と腎陽(じんよう)は、全身・五臓六腑の陰陽の根本であり、腎精からつくられます。腎精は腎に貯蔵されていて、女性では35歳頃から徐々に弱り、歳と共に衰えが目立つようになります。

誰でも年齢とともに潤いは減って枯れていきます。清らかな潤いが不足した「陰虚(いんきょ)」の状態では、全身的に「乾燥症状」が目立ちます。

また、陰と陽のうち、陽は身体を温めるエネルギー、陰はオーバーヒートしないようにする冷却水のようなもの。陰が減ると相対的に陽が多くなるため、陰虚では「ほてり」や「のぼせ」が現れやすくなります。これを「虚熱(きょねつ)」とか「陰虚火旺(いんきょかおう)」といいます。

陰虚による「ほてりやのどの乾燥感」があると、水分を摂りたくなるのは当然です。ただし、冷たい飲食は内臓に負担をかけますから摂り過ぎないよう気をつけてください。また、陰虚の体質そのものは水を大量に飲めば治るわけではありません。

陰虚タイプは、1年の中で大汗をかく夏が苦手な人が多いです。また、ホットヨガ、サウナ、岩盤浴などで過度に発汗すると、身体の潤いを失って陰虚が悪化します。普段通りの環境で、普通に運動して適度な汗をかきましょう。

また、温燥性の(温めて乾燥させる性質を持つ)食事や薬物は陰虚を悪化させるので避けましょう。例えば、カレー、キムチ、激辛料理などの辛いものは「温燥性」にあたります。

◆腎陰虚タイプにあらわれやすい症状
・閉経あるいは月経不順、経血量が少ない
・皮膚や粘膜の乾燥症状(皮膚・髪・爪、鼻・のど・口・眼・陰部など)
・寝汗、手足がほてって眠れない、手足だけ布団の外に出す
・頬骨の辺りが赤い
・不眠、不安、動悸
・足腰のだるさ
・聴力の低下、耳鳴り、目眩、健忘
・視力減退
・身体が痩せる
・大便乾燥~便秘、尿の色が濃い、少尿
・舌紅、裂紋、苔少、脈細数

◆腎陰虚タイプに用いられる生薬例
地黄(じおう)・枸杞子(くこし)・山薬(さんやく)・山茱萸(さんしゅゆ)・桑椹(そうじん)・旱蓮草(かんれんそう)・女貞子(じょていし)・黄精(おうせい)・麦門冬(ばくもんどう)・天門冬(てんもんどう)・黄柏(おうばく)・知母(ちも)・牡丹皮(ぼたんぴ)・亀板(きばん)・亀板膠(きばんきょう)など

◆腎陰虚タイプに用いられる食材例
・ヌルヌル食材(おくら、やまいも類。長芋でも自然薯でもヌルヌルならなんでもOK)
・黒い食材(桑の実、黒豆、黒米、黒胡麻、黒きくらげ、椎茸、海苔やひじき)
・枸杞の実、松の実、カシューナッツなどのナッツ類、白きくらげ、つばめの巣など

⑵疲れやすく身体を温める力が弱い&水がだぶつきやすい『腎陽虚(じんようきょ)タイプ』

「腎陽虚(じんようきょ)」とは、「腎陽」が「不足(=虚)している」状態のこと。身体を温めたり、代謝を推し進めたり、パワーのもとである「気(き)・陽気(ようき)」が不足しています。そのため、疲れやすく、身体が冷えやすく、水をうまくさばけないため体内に水がだぶつきやすい傾向にあるのが「腎陽虚タイプ」です。

身体を冷やさないように、腰回り、足首、首などくびれているところをウォーマーなどで温め、生冷飲食を控えましょう。

◆腎陽虚タイプにあらわれやすい症状
・閉経あるいは月経不順、経血量が多い
・精神的にも肉体的にもパワーが無い
・寒がり、手足が冷たい
・足腰が冷えてだるい、あるいは冷えて痛む
・顔色が白い
・むくみ、帯下がやや多め
・軟便~下痢傾向
・舌淡、胖嫩、歯痕、苔白~苔白滑
・脈沈弱または脈沈細または脈沈弦

◆腎陽虚タイプに用いられる生薬例
地黄(じおう)・枸杞子(くこし)・山薬(さんやく)・山茱萸(さんしゅゆ)・黄精(おうせい)・人参(にんじん)・黄耆(おうぎ)・海馬(かいま)・鹿茸(ろくじょう)・鹿角膠(ろっかくきょう)・海狗腎(かいくじん)・蛤蚧(ごうかい)・冬虫夏草(とうちゅうかそう)・杜仲(とちゅう)・桂皮(けいひ)など

◆腎陽虚タイプに用いられる食材例
・ヌルヌル食材(やまいも類。長芋でも自然薯でもヌルヌルならなんでもOK)
・黒い食材(黒豆、黒胡麻、黒きくらげ、椎茸)
・枸杞の実、松の実、くるみ、カシューナッツ、栗、などのナッツ類
・シナモン、フェンネルなど

⑶イライラ・ゆううつなど、情緒不安定になりがちな『肝鬱(かんうつ)タイプ』

「肝鬱」とは、「肝気鬱結(かんきうっけつ)」の略で、「肝気(かんき)」が「鬱滞・鬱結」している状態のこと。

漢方で言う「肝」とは、精神情緒、自律神経系、蔵血、気の巡りをつかさどる臓器のこと。「肝」の働きが悪くなると、気の巡りが鬱滞し、情緒不安定になりやすくなります。

また、「気」は身体を温めるエネルギーなので、滞って詰まってくると「熱・火」という病的なもの(邪気)に変化します。この状態を、「肝鬱化火(かんうつかか)」などと呼びます。

「肝鬱化火」では、病的な熱エネルギー(肝熱・肝火)のせいで、すごく怒りっぽくなったり、血圧が上がったり、ほてりやのぼせ等といった症状が現れやすくなります。(※血圧上昇、ほてり、のぼせの原因がすべて肝鬱化火というわけではありません。肝鬱化火に当てはまるケースもある、というだけです)

このタイプの養生法は、なるべくごきげんに気分よく過ごすことが大切。いい香りで気分がスッキリするお茶、食材、アロマテラピーを生活にたくさん取り入れてリラックスしましょう。肝鬱化火している人は、辛いものは、熱を増やしてしまうので止めましょう(ほてり、のぼせ、多汗の症状がある人も)。

◆肝鬱タイプにあらわれやすい症状
・ストレスや不満が多い生活
・イライラ、怒りっぽい、せっかち、落ち込む、憂鬱、情緒が不安定
・悩み事があって胸がざわつき寝つけられない、悩みが頭から離れず寝ても疲労感が残る
・脇や脇腹が脹る(はる)ように痛む、頭が脹るように痛む、ため息
・血圧が上下する
・喉のつまり(梅核気:ばいかくき)、ゲップまたはオナラが多い
・気分がいいと症状が気にならない、精神的ストレスに付随して他の症状もあらわれやすい
・ほてり、のぼせ、多汗
・排卵期にお腹が脹る(又は、脹った)
・PMS(月経前症候群)で胸の脹り・イライラ・落ち込み・お腹の脹りなどがある(又は、あった)
・脈弦~脈弦数

◆肝鬱タイプに用いられる生薬例
生薬なら柴胡(さいこ)、薄荷(はっか)、香附子(こうぶし)、厚朴(こうぼく)・枳実(きじつ)・蘇葉(そよう)など

◆肝鬱タイプに用いられる食材例
・紫蘇の葉、セロリ、ローリエ、コブミカンの葉、カルダモン、バジルなどの香りの良い香り野菜やハーブ類など
・柑橘系の果物
・ジャスミンティー、ローズティー(※)、アールグレイティーやミントティー、菊の花茶など
※ここでのローズティーはバラ科バラ属のハマナス(=まいかいか)のお茶

⑷疲れやすい・思い悩みやすく心配性な『心脾気血両虚(しんぴきけつりょうきょ)タイプ』

「心脾気血両虚(しんぴきけつりょうきょ)」とは「心の血」と「脾の気」が「どちらも(=両)」「不足(=虚)している」状態のこと。

気血(きけつ)とは、肉体的な活動と精神・意識活動の源となる基本物質のこと。「心(しん)は神(しん)をつかさどる」といって、心の気血が不足すると、体が弱るだけでなく、気持ちをしっかり持てなくなってしまいます。

中医学は、人の性格と体質は関係している部分があることを経験から理解しています。性格・心の在り方・思考の癖が体質を作ることもあれば、体質が性格を作ってしまうこともあるのです。

脾胃(消化器系)が弱いタイプ・気血不足タイプは、肥甘厚味(ひかんこうみ)、生冷飲食、刺激物、暴飲暴食を避けて「よく噛むこと」がとても大事。胃もたれなど消化不良があるときは食事量を減らすなどして、胃腸を休ませることも大切です。

基本的に、火を通して温かい状態で飲食しましょう。薏苡仁(ハトムギ)と粟(アワ)を水から煮て作ったお粥を食べるのも胃腸虚弱におすすめの食養生です。

玄米食は胃腸が健康な人にはおすすめですが、消化吸収力が弱い人にとっては負担になります。また、ローフード、ファスティングは、ますます胃腸を弱らせて、さらなる気血不足をまねくので控えましょう。

◆心脾気血両虚タイプにあらわれやすい症状
・精神的にも肉体的にもパワーが足りない、疲れやすい
・脾胃(消化器系)が弱い(自覚がない人も多い)、食欲減退、泥状便
・あざができやすい
・不眠(眠りが浅く夢が多い)、健忘、動悸
・クヨクヨ思い悩みがち、心配性、不安感、自責感が強い
・唇や爪の色が薄くツヤが無い
・顔色が淡白~くすんだ黄色、
・月経過多(経血の色は淡い)、不正出血しやすい、あるいは月経過少の傾向がある(又は、あった)
・舌淡嫩、苔白
・脈細弱

◆心脾気血両虚タイプに用いられる生薬例
人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、当帰(とうき)、酸棗仁(さんそうにん)、大棗(なつめ)、竜眼肉(りゅうがんにく)など

◆心脾気血両虚タイプに用いられる食材例
ゆり根、蓮の実、金針菜、桑の実、黒きくらげ、大豆・黒豆などの豆類、ウズラの卵、鶏卵、干しブドウ、小松菜、山芋、粟など。大棗(なつめ)や竜眼肉(ロンガン)を砂糖なしのドライフルーツにしたものをおやつ代わりに食べるのもよい。

⑸血の巡りが悪い、血液ドロドロの『血瘀(けつお)タイプ』

「血瘀(けつお)」とは、「血」が「滞ってよどんだ(=瘀)」状態のこと。

血瘀の三大症状は「痛む・しこりがある・黒ずむ」です

改善するには、血の巡りを良くする漢方薬・食べ物・気功など身体を動かすことがおすすめです。ただし、血行を良くする薬食のうち温性の薬食は、ほてり、のぼせ、湿疹など身体に熱がこもっているときは摂らないほうがいいこともありますので、専門家に相談してください。

エストロゲンは女性の身体にとって、やっかいな面とありがたい面の両方をもっています。例えば、子宮筋腫・子宮内膜症・乳がんなどホルモン依存性の腫瘍の原因となる一方で、抗動脈硬化作用や骨形成を進め骨吸収を抑える作用、丸みを帯びた身体や美肌や美髪をつくる作用などがあり、女性の身体を病気から守り女性らしさの元でもあります。

それゆえ、女性は更年期までは同世代の男性に比べて、動脈硬化、脂質異常症、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞などが比較的少ない傾向がありますが、更年期以降これらの症状・疾患や骨粗鬆症などが増える傾向にあります。

◆血瘀タイプにあらわれやすい症状
・肩こり、頭痛、足腰痛など身体のどこかが痛む
・針で刺されるような痛み(刺痛:しつう)、部位は固定的
・痔、筋腫などシコリがある
・下肢にイトミミズ状の血管が浮き出る、下肢静脈瘤がある
・唇の黒ずみ、顔のくすみやシミ、クマなど色の黒ずみ
・顔はのぼせて足は冷える
・動脈硬化、高血圧、脂質異常症、糖尿病など検査値の異常
・過去に大きな交通事故・外科手術をした
・月経痛が強い、経血に塊が混ざる、排卵痛がある(又は、あった)
・舌の色が暗め、舌に瘀点または瘀斑(紫~黒色っぽい斑点)
・脈渋(みゃくじゅう:脈拍が滑らかでなく、小刀で竹を削るように触れる)

◆血瘀タイプに用いられる生薬例
丹参(たんじん)・紅花(こうか)・川玉金(せんぎょくきん)・川芎(せんきゅう)など

◆血瘀タイプに用いられる食材例
・玫瑰花(まいかいか:バラの花・ハマナスのつぼみ)、さんざし、ターメリック、サフラン
・黒酢、黒米、黒豆、黒きくらげ、黒砂糖
・納豆、玉ねぎなど

動脈硬化、脂質異常症などは、痰湿(たんしつ)も関係することが多く、上記の活血薬(かっけつやく:血液をサラサラにして血行を改善する薬)とともに化痰薬(かたんやく:痰湿をのぞく薬)も用いることがあります。

更年期は、皮膚のトラブル、胃腸のトラブル、めまい、頭痛…など、ほんとうに人によってさまざまな症状が現れますので、中医学では症状・病状や体質・状態によって臨機応変に、治療の順序・優先順位を決めて対処してゆきます。

5.「のぼせといったら加味逍遙散」とは限らない

更年期ののぼせやほてりの症状に対して「加味逍遙散(かみしょうようさん)」が通りいっぺんに処方されることが多いようです。しかし、のぼせやほてりの原因は「加味逍遙散=肝鬱化火」由来だけではありません。

陰虚でも瘀血でも陽虚でも、のぼせやほてりは起こりえます。その場合は、証がちがうので自ずと治す方法、必要な薬も違ってきます。自分の体質に合わない間違った治療法はかえって害になるケースもありますので、注意しましょう。

もし、肝鬱化火が確実に存在して加味逍遙散が必要だとしても、陰血不足が顕著な場合は(更年期世代の場合、年齢的にたいていは陰血不足ですが)、同時に必ず陰血を補う必要があります。中医学では「整体観(せいたいかん)」といって、あくまでも「全体のバランスを整える」ことに重きを置きます

今や更年期は女性だけのものではありません。漢方薬局では男性更年障害(LOH症候群)の相談も増えています。また、ストレス社会の現代、更年期ではない若い男女もこれら(1)~(5)のような症状に悩む人が増えています。年代が若くても、症状が現れた根本的な原因である「証(しょう)」が同じであれば、治し方は基本的には同じです。これらの人は、更年期の時期を迎えると人より症状が強くあらわれやすく、将来不妊症へ繫がる可能性もあるので要注意。早めに治してしまうことが肝心です。

どのような更年期を過ごすかによって、その後の健康にも影響が及びます。心とからだを少しでも軽く楽にして、イキイキとした毎日を送れますように。そして、楽しい熟年期へ準備しましょう!

参考文献:
・菅沼伸(監修)、菅沼栄(著)『いかに弁証論治するか【続編】』東洋学術出版社 2008年
・小金井信宏(著)『中医学ってなんだろう①人間のしくみ』東洋学術出版社 2009年
・内山恵子(著)『中医診断学ノート』東洋学術出版社 1996年
・田久和義隆(翻訳)、羅元愷(主編)、曽敬光(副主編)、夏桂成・徐志華・毛美蓉(編委)、張玉珍(協編)『中医薬大学全国共通教材 全訳中医婦人科学』 たにぐち書店 2014年
・戦 憲斌 (翻訳)、 張 斉 (翻訳)、 黒竜江中医学院『中医産婦人科の臨床応用―西医の弁病治療と中医の弁証施治の有機的結合へ』 雄渾社 1986年
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための中薬学』医歯薬出版株式会社 2004年
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版株式会社 2004年・中山医学院(編)、神戸中医学研究会(訳・編)『漢薬の臨床応用』医歯薬出版株式会社 1994年
・伊藤良・山本巖(監修)、神戸中医学研究会(編著)『中医処方解説』医歯薬出版株式会社 1996年
・凌一揆(主編)『中薬学』上海科学技術出版社 2008年
・翁維健(主編)『中医飲食営養学』上海科学技術出版社 2007年
・日本中医食養学会(編著)、日本中医学院(監修)『薬膳食典 食物性味表』燎原書店 2019年

 
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中垣 亜希子(なかがき あきこ)

すがも薬膳薬局代表。国際中医師、国際中医薬膳師、医学気功整体師、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー、管理薬剤師。

薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。 東京薬科大学薬学部卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学、国立北京中医薬大学日本校にて中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS 猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

すがも薬膳薬局:http://www.yakuzen-sugamo.com/

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