薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2020.05.28 薬剤師のためのお役立ちコラム

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国内の新型コロナウイルス新規感染者数が減少傾向となり始めた2020年5月、国内初のCOVID-19治療薬「レムデシビル」が特例承認。また不足する消毒薬の規定が一部緩和されています。

COVID-19治療薬としてレムデシビルを特例承認/エタノール濃度60%台の酒類を消毒液の代替品として許容

ラク~にまとめ読み
  • Topics 1 COVID-19治療薬としてレムデシビルを特例承認
  • 5月7日、新型コロナウイルス感染症治療薬として「レムデシビル」が特例承認。重症患者さんにのみ投与が認められるが、副作用等未知の部分が多い。
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  • Topics 2 エタノール濃度60%台の酒類を消毒液の代替品として許容
  • 消毒液不足が深刻化するなか、エタノール濃度60%台の酒類が手指消毒用エタノールの代替品として使用することが認められるようになった。
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Topics 1 COVID-19治療薬としてレムデシビルを特例承認

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス――。日本でも全都道府県に緊急事態宣言が発出され、様々な行事や外出の自粛が行われた結果、感染者は徐々に減少傾向にあります。しかし、「終息」と呼べる状態になるまでには、まだまだ時間がかかると予想されています。

目下、有効なワクチンや新規治療薬の開発が急ピッチで進められていますが、仮に現時点で新薬が開発されたとしても一般に出回るのはずっと先のこと。そこで、世界中の研究機関は既存薬を新型コロナウイルス感染症の治療薬として転用する可能性を探ってきました。国内では、抗インフルエンザ薬の一種であるファビピラビル(商品名アビガン:富士フイルム富山化学)が新型コロナウイルス感染症の患者さんに投与され、有効性を示した症例が報告されています。

また、米国ギリアド・サイエンシズ社がエボラ出血熱の治療薬として開発したレムデシビル(商品名ベクルリー)が新型コロナウイルスに有効として注目を集めています。レムデシビルは、RNAポリメラーゼを阻害し、ウイルスの増殖を抑える効果があるということです。ただし、以前に投与されたのは限られた地域のエボラ出血熱の患者さんだけであり、正式な承認を受けた国はありませんでした。

レムデシビルが新型コロナウイルスに対して有効であるとの報告が続出した状況に鑑み、米国国立衛生研究所(NIH)は2020年4月下旬に「レムデシビルは新型コロナウイルス感染症の回復を早める」との見解を公表。それを受けて、5月7日、厚生労働省はレムデシビルに対して10年ぶりとなる特例承認を行い、国内で初めての新型コロナウイルス感染症の治療薬が誕生したのです。現在のところ、レムデシビルは無償提供されているため患者さんの負担はゼロですが、5月8日、中央社会保険医療協議会は時限的措置として保険診療との併用を可能とする決定を行いました。

ただし、レムデシビルは人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)による管理が必要となるような重症の患者さんにのみ投与が認められています。また、世界的にもデータが少なく未知の部分も多いため、臨床的な結果が得られ次第、速やかに厚生労働省に報告することも投与の条件とされています。

レムデシビルの承認は、終息の気配が見えない新型コロナウイルス感染症におびえる私たちに大きな希望をもたらしてくれました。一方で、前述したように、レムデシビルにはどのような副作用が現れるかなど分かっていないことも多々あります。また、「新型コロナウイルス発祥の地」とされる中国湖北省で行われた研究によれば、新型コロナウイルス感染症に罹患してレムデシビルを投与された患者さんと投与されなかった患者さんを比較したところ、回復までの日数に統計的な有意差はみられなかったと報告されています(参考文献1)。

薬剤師としては、レムデシビルの投与に関わる機会があれば、医師や看護師などとのチーム医療体制のもと、患者さんの日々の体調変化をしっかりと把握していくことが大切です。そのうえで、予期せぬ副作用の発現が疑われたときは、投与を中断して速やかに厚生労働省へ報告する必要があります。また、レムデシビルが特例承認を受けたことは大々的に報道されたため、今後は咳や発熱などの症状がある患者さん、新型コロナウイルス感染症の軽症患者さんなどから処方希望の相談を受けることもあるでしょう。そうしたときは、レムデシビルのメリット/デメリットを分かりやすく説明し、重症例以外では使用できないことを伝えてください。

Topics 2 エタノール濃度60%台の酒類を消毒液の代替品として許容

新型コロナウイルスの影響により、マスクや消毒液の不足が深刻になっています。特に感染症治療の最前線である医療機関での不足は大きな問題となっており、十分な感染対策ができないまま働く医療従事者への二次感染・三次感染も心配されているところです。そこで厚生労働省は、2020年4月10日、医療機関においてエタノール濃度60%台の酒類など高濃度エタノール製品を手指消毒用エタノールの代替品として使用することを許可しました。

これまでも厚生労働省は、やむを得ない場合(手指消毒用エタノールが入手できないなど)に限り、濃度70~83%のエタノール製品を医療機関で使用することを認めていました。一方で、米国疾病予防管理センター(CDC)は「濃度60%以上であれば使用可能」との基準を示しており、国内でもより低濃度の製品の使用が認められることになったのです。

これを受けて、各地の酒造メーカーが高濃度のエタノールを含有した酒類を続々と製造販売しており、医療機関の消毒液不足解消に一役買ってくれることが期待されています。また、通常であれば酒類には酒税がかかりますが、「飲用不可」と明示した高濃度エタノール含有酒類には時限的な措置として酒税を課さないとの取り決めもなされ、より安価で購入することが可能となりました。

一方で、これらの高濃度エタノール製品は医薬品医療機器等法で定められる医薬品や医薬部外品には該当せず、製造販売に関する厳格なルールはありません。そのため、基準に満たない粗悪品が出回る可能性もゼロではありません。消毒液の代替品として高濃度エタノール製品を使用する場合は、信頼できるルートから厳選したものを入手するようにしてください。

<参考文献1>
Wang Y, Zhang D, Du G, et al: Remdesivir in adults with severe COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial. Lancet. 2020 May 16; 395: 1569-78.

<参考URL>
【中医協総会】レムデシビルの保険併用可-時限措置、評価療養に該当(薬事日報、2020年5月8日)
【厚労省】レムデシビルを特例承認-新型コロナ治療薬で国内初(薬事日報、2020年5月7日)
【【厚労省】濃度60%台の酒類使用可-消毒用エタノール代替品に(薬事日報、2020年4月28日)

<この記事を読んだ方におすすめ>
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※この記事に掲載された情報は2020年5月25日(月)時点のものです。

成田亜希子(なりた あきこ)

医師・ライター。2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。

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