薬剤師の働き方 更新日:2023.09.15公開日:2021.03.15 薬剤師の働き方

薬剤師はバイト・パートを掛け持ちできる?ダブルワークのポイントを紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

ダブルワークを希望する労働者が年々増えていることから、厚生労働省は2018年1月に「モデル就業規則」を改訂。2020年9月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改訂しました。日々変化する社会情勢のなかで、生活面の不安や新たなキャリアの模索のためにダブルワークを検討する人もいることでしょう。薬剤師のなかにも、さまざまな理由でダブルワークを考える人がいるのではないでしょうか。今回は、薬剤師がダブルワークを始める前に確認しておきたいポイントをお伝えします。

1. そもそも薬剤師のダブルワークは可能なの?

基本的に薬剤師がダブルワークをすることは可能です。しかし、職種によっては法律で副業が禁止されているケースもあります。罰則を受けないためにも、ダブルワークを始める前に、以下の点を確認しておきましょう。

 

1-1. 管理薬剤師・公務員薬剤師の副業は原則禁止

管理薬剤師や公務員として働く薬剤師は、法律で兼業が原則禁止されています。管理薬剤師は、医薬品医療機器等法第7条第3項で「その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であってはならない」とされており、本職以外で薬事に関する仕事に就くことは原則禁止です。ただし、薬局の営業時間外において、他の薬局で行われる輪番制の調剤業務やへき地における薬局の管理者を確保する目的である場合には、例外として兼業が認められています。

 

また、公務員として働く薬剤師は、国家公務員・地方公務員ともに副業・兼業は原則禁止です。ただし、国家公務員の場合、利害関係がないなどの条件をクリアした非営利団体であれば、申請手続きをすることで兼業ができます。地方公務員の副業についても地域社会のコーディネーターとして活動するといった公務以外での活動が期待されていることから、許可を受けることで副業ができるようになります。

 

 

1-2. 就業規則で副業が禁止されている場合

勤務先の就業規則で副業が禁止されている場合には、ダブルワークは避けましょう。法律で禁止されているわけではありませんが、場合によっては懲戒免職になってしまう可能性があります。また、企業によっては、就業規則に反した際に減給や降格、退職金の不支給といった処分が行われることを明確に記載されているケースもあります。就業規則を詳しく確認したうえで、副業が可能かどうかを判断しましょう。

2. 薬剤師の資格・経験を生かせる職種・業種

薬剤師がダブルワークとして活躍できる職種は多くあります。ただし、医療機関で薬剤師として副業をするためには薬剤師免許の提示が必須です。ここでは、薬剤師の資格や経験を生かせる職種や業種を見ていきましょう。

 

2-1. 調剤薬局やドラックストア

副業先のひとつに、調剤薬局やドラッグストアがあります。本業として調剤薬局やドラックストアで働きながら、副業でも同業の仕事に就けば、基本的には本業での経験を生かせるでしょう。新たに必要な知識やスキルが少なく、ダブルワークを始めやすい職業といえます。ただし、業務においては社内ルールが違うことがあるため、現場に合わせた対応を行う必要があります。

 

2-2. メディカルライター

薬剤師の資格や経験を生かしながら、医療に関する記事やコラムを執筆するのがメディカルライターの仕事です。基本的に在宅での作業になるため、本業からの帰宅後や休日などを利用して、好きな時間に働けます。パソコンとインターネット環境があれば場所を選ばずに仕事ができるため、外出先で作業ができるのも利点です。

薬の専門家として執筆することになるため、誤った情報を拡散しないようにしっかりとリサーチしなければいけません。そのぶん、知識の再確認や新しい情報に触れる機会が増えるでしょう。また、誰が読んでもわかりやすい文章を書く習慣がつくため文章力の向上も期待できます。メディカルライターとして身についたスキルは、薬歴の記載だけでなく社内資料や患者さん向けリーフレットの作成などでも役立つでしょう。

 

 

2-3. 海外の医薬文献翻訳

英語力があるなら、副業として医薬系の文献翻訳を行うのもよいでしょう。メディカルライターと同様に、自宅や外出先などで仕事ができるため、自由度の高い副業といえます。また、最新の医療情報や専門分野以外の情報を得る機会が増えるため、知識を取得でき、本業に生かすことが期待できます。

3. 薬剤師がパート勤務を掛け持ちする方法

ダブルワークの働き方は、勤務形態によっても選択肢が広がります。本業がパートなのか正社員なのかによってもできる仕事が変わるため、自分の生活スタイルにあった働き方を考えてみましょう。

 

3-1. 本業がパートであればパート・アルバイトが掛け持ちしやすい

企業のなかには、忙しい時間帯や特定の曜日だけの勤務でパートやアルバイトを募集しているところがあります。そうした募集があれば、副業として検討してみるのもよいでしょう。短時間の勤務を選べたり、週1回から勤務できたりするところもあるのでダブルワークが始めやすいのではないでしょうか。特定の曜日や日数だけ、ダブルワークしたい人におすすめの働き方です。

 

 

3-2. 本業が正社員であれば日雇い派遣バイトがおすすめ

正社員は残業や急なシフトの交代などが発生する可能性もあるため、その月ごとの休日を利用したダブルワークになることが多いかもしれません。曜日や日時を指定してダブルワークに就くのが難しい場合は、単発の派遣バイトがおすすめです。ただし、以下のような一定条件のいずれかに該当した場合に、該当の業務のみ単発バイトができます。

 

<いずれかを満たすこと>

・60歳以上の方

・雇用保険の適用を受けない学生

・自分の年収が500万円以上

・世帯年収が500万円以上であり、主な生計者ではない

 

<可能な業務>

・ソフトウェア開発 ・機械設計
・事務用機器操作 ・通訳、翻訳、速記
・秘書 ・ファイリング
・調査 ・財務処理
・取引文書作成 ・デモンストレーション
・添乗 ・受付・案内
・研究開発 ・事業の実施体制の企画、立案
・書籍等の制作・編集 ・広告デザイン
・OAインストラクション ・セールスエンジニアの営業、金融商品の営業


厚生労働省 資料「日雇派遣の原則禁止について」より

 

労働者派遣法では、上記の条件のいずれかに該当した人のみ単発バイトができると定められています。単発バイトを検討する場合は条件に該当しているかを確認しましょう。

 

3-3. 休日はしっかり確保したいのであれば夜間・当直勤務も視野に

休日を副業に充てたくないと考える人は、夜間や当直のバイトがおすすめです。遅い時間帯まで営業しているドラックストアや24時間対応の調剤薬局では、夜間帯のスタッフを募集しているところがあります。22時以降は割増賃金になることが法律で決められていることもあり、副業でより多くの収入を得たい場合は夜間勤務を検討してみましょう。休日をしっかり確保しながら効率よく収入を得たい方に最適です。

4. 薬剤師がダブルワークをする方法と注意点

薬剤師ができる副業にはさまざまな職種がありますが、実際に始める前に確認しておきたいポイントがあります。薬剤師がダブルワークを始めるためのステップとともに、副業時の注意点についてお伝えします。

 

ステップ1:まずは、今の仕事でダブルワークが可能かを確認する

薬剤師としてダブルワークをするためには、まず管理薬剤師・公務員に該当しないことが第一条件です。該当しない場合には、就業規則を確認し、副業・兼業の禁止が記載されていないか、また、禁止とされている場合、反した際の罰則などを理解しておく必要があります。ただし、就業規則で禁止とされていても、上司や人事などに相談すると副業可能になるケースもあるようです。

 

ステップ2:周囲からの理解を得る

副業を始めると日常生活のリズムが少なからず変わります。休日が少なくなったり、帰宅時間が遅くなったりすることがあるので、家族がいる場合は副業を始める前に理解を得ることが大切です。副業の種類や仕事をする時間帯などについて、事前に相談や話し合いを行うことで、家族に負担や迷惑をかけずに副業を始められるでしょう。

 

ステップ3:ダブルワーク先を決める

まずは本業と同業にするかなど、職種を検討するところから始めましょう。続いて、パート・アルバイト、単発派遣など、自分の生活スタイルに合った働き方を考えます。より自分に合った副業先を探したいなら、転職エージェントに登録するのもおすすめです。キャリアアドバイザーに希望を伝えることで、自分の生活リズムにあった求人を紹介してもらったり、ダブルワークをするためのアドバイスをもらえたりと、効率良く求人を探すことができるでしょう。

 

一方、本業とは異なる職種で副業をするなら、関連する求人を確認します。例えば、メディカルライターや翻訳業務のように自宅でできる副業を探す場合は、クラウドソーシングを利用して仕事を探してみましょう。クラウドソーシングは、仕事を探している人と仕事を任せたい人をクラウド上でマッチングさせるサービスで、基本的に誰でも無料で登録できます。メディカルライターや医療翻訳者を募集している案件を検索し、応募することで採用される可能性があります。

5. ダブルワークを始める際の注意点

ダブルワークを始める際には、本業と副業、両方の業務効率を下げないようにすることがとても大切です。どちらの仕事もできる限り業務時間内に終わらせ、休息やリフレッシュする時間を確保することで、仕事のパフォーマンスを維持できます。また、自分のキャパシティを超えた仕事量になっていないか、定期的に振り返ることも大切です。ダブルワークで体調を壊してしまうようでは、同僚や会社に迷惑をかけることにもなりかねません。体力や気力、ストレスの有無などを考えたうえで、副業を継続できるかどうか見極める力も必要です。

また、副業で年間20万円以上の所得を得る場合には、個人で確定申告を行うことになります。本業で実施する年末調整とは別に、確定申告が必要であることも覚えておきましょう。

6. ダブルワークは薬剤師としてのキャリアを広げるチャンスになる

ダブルワークは、収入源を複数持つことで失業のリスクに備えるだけでなく、本業を定年退職した後も続けられる仕事を模索することや、新たに活躍できる場を広げるきっかけにもなります。薬剤師としての本業があるからこそ副業としてチャレンジできる職種もあるため、新たなキャリアパスの一環として考えるのもよいでしょう。収入を増やすことや自分の可能性を広げるためにもダブルワークにチャレンジする価値はあります。

薬剤師が副業やバイトの掛け持ちをする場合、まずは法律上問題ないのか、就業規則で副業禁止になっていないかを確認することから始めます。そのうえで、本業に支障が出ないような副業を選択するのが大切です。自分らしい働き方を見つけながら、無理なく続けられるダブルワークを探してみましょう。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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