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緩和薬物療法認定薬剤師の資格取得のきっかけとやりがい、取得方法は?

第一線で活躍する認定薬剤師・宇野達也先生インタビュー

在宅での終末期、看取りケアの需要拡大とともに注目される「緩和薬物療法認定薬剤師制度」。実際の現場ではどのように在宅医療に貢献しているのでしょうか?資格取得のきっかけややりがい、今後の展望などについて、緩和薬物療法認定薬剤師でありNST専門療法士でもある宇野先生にお話を伺いました。

宇野達也(うの・たつや):大手チェーン薬局に勤務後、 2006年ヤナセ薬局へ。2009年に在宅医療部へ異動し2014年「NST(栄養サポートチーム)専門療法士」、2015年「緩和薬物療法語定薬剤師」を取得。医療用麻薬、静脈・経腸注入ポンプの取り扱い、無菌調剤なども行い24時間体制で在宅医療に従事。

 

本記事は株式会社ネクスウェイが提供する「医療情報おまとめ便サービス」特集2019年5月号P.25-26「第一線で活躍する認定薬剤師に聞く vol.緩和薬物療法認定薬剤師」を再構成したものです。

 

現場で何もできない危機感から緩和薬物療法認定薬剤師の道へ

(宇野先生、以下同)私はヤナセ薬局の在宅医療部に所属し、 緩和薬物療法認定薬剤師として地域の在宅医療に特化した取り組みを行っています。在宅医療では、がんだけでなく、心不全やCOPD、あるいはALS、脊髄小脳変性症、重症筋無力症、進行性核上性麻痺といった神経難病など、さまざまな患者さんを担当しますが、多くの方が痛みや呼吸苦を抱えています。痛みといっても、組織が侵害されてできる体性痛、炎症や腫瘍などによる内臓痛、神経の損傷に伴う神経障害性疼痛など、その種類は多岐にわたります。そうした苦痛症状を取り除き、穏やかに過ごせるようにならなければ在宅医療はうまくいきませんから、緩和ケアの知識は重要な意味を持つと考えています。

 

とはいえ、当薬局に勤めるまでそんな在宅医療の現状を知りませんでした。地域に貢献したいと考え、在宅医療部へ異動しましたが、いざ現場に入ったら何もできず、他職種との会話にもついていけない自分にショックを受けたのです。「このままではいけない!」という危機感から患者さんの痛みのケアに役立つ緩和薬物療法認定があることを知り、勉強を始めました。

 
<宇野達也先生が勤務するヤナセ薬局の在宅医療の取り組みとは?>

大切なのは認定の取得以上に、現場で役立つ存在になること

緩和薬物療法認定薬剤師の資格を取得したのは2015年。eラーニングや学会の認定テキストなどを中心5年くらいかけて勉強しました。地域のセミナーなどにも積極的に参加していましたが、1度は不合格に。学会の発表実績が不十分ということでした。

 

実はNST(栄養サポートチーム)専門療法士の勉強も同時進行で始めており、そちらは2014年に一足先に認定を取得しました。

 

在宅医療では、医療用麻薬と静脈栄養を使用する場合など、緩和と栄養の知識は関連性が強いと考えたからです。

■患者への貢献度

 

どちらの認定においても、取得するのは決して楽ではありません。緩和薬物療法の認定を受けるには、5年以上の実務歴の他、認定対象となる講習の履修や緩和ケア領域の学会発表など、さまざまな条件があります(下記参照)。私が目指した当時は実務歴以外に何も満たせておらず、しかも在宅医療部の薬剤師は私を含め2名でしたので同僚にも迷惑をかけました。ですが、本当に大切なのは認定を取得することではありません。学んだ知識を、患者さんを中心とした多職種連携の中でいかに役立てられるかが重要なのだと実感しています。

 

「緩和薬物療法認定薬剤師」になるには

 

日本緩和医療薬学会が定める申請資格をすべて満たした上で、認定試験に合格する必要があります。ここでは申請資格条件の一部を紹介します。

 

●日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えていること。

 

●申請時において、薬剤師としての実務歴を5年以上有する日本緩和医療薬学会(以下、本学会)の会員であること。

 

●過去5年以内に、認定対象となる講習等を所定の単位(計100単位、毎年20単位)以上履修していること。過去5年以内に、がん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用推進のための講習会(厚生労働省、麻 薬・覚せい剤乱用防止センター等主催)に1回以上参加していること。

 

●薬剤師として実務に従事している期間中に、本学会年会あるいは別に規定する学術集会において緩和ケア領域に関する学会発表を2回以上(少なくとも1回は発表者)行っていること。 など

薬学的な見地から提案や課題解決ができるように

緩和薬物療法認定薬剤師の取得は私にとって財産ですが、その過程でさまざまな医師や看護師、薬剤師の先生たちに出会えたことがとても大きかったと思います。一緒にグループワークやディスカッションをしたり、困った時にアドバイスをいただけたりするのは非常に有り難いことです。認定や学会を目指している方々はモチベーションが高いので剌激になりますね。

 

また、知識を身につけることで薬学的な見地から意見を言えるようになり、患者さんの困っていることを発見・解決していけるようになりました。例えば、医療用麻薬の内服薬が飲めなくなってきた患者さんに、適切な量の注射を適切な投与方法で提案できるようになったのもその1つです。それに他職種が使う専門用語なども分かるようになってきました。始めた当初は「薬剤師が在宅医療に来て何か役に立つの?」なんて言われることもありましたから、薬剤師の専門性や必要性も認知されるようになってきたのだと思います。最初に辛い思いをすることがあってもへこたれないで欲しいですね。

医療措置の難易度が上がる中、力を発揮できる薬剤師を

病院の緩和ケアチームの薬剤師とも情報を共有し、患者さんを紹介いただくこともありますが、病院の緩和ケアチームと違い、在宅医療では患者さんごとに医師も看護師も薬剤師もケアマネジャーも異なります。特に当薬局は20ほどの病院から処方箋を受け付けているので固定メンバーでチームを作るのは難しいというのが実清です。

また、がんの患者さんをはじめ、在宅医療の患者さんは増え続けており、医療措置の難易度も高まってきています。中には、自宅でくも膜下鎮痛法を行うといったケースもありますので、知識だけではなく、薬局の設備・在庫の問題も重要です。1人でも多くの患者さんを受け入れていくためには、何より緩和ケアにも栄養にも精通した薬剤師を増やしていく必要があります。

 

ご縁があって、現在は名城大学で非常勤講師として在宅医療に関する講義などもさせていただいています。薬学部のカリキュラムでも在宅医療について学ぶ機会があるため、私たちの取り組みに興味を持つ学生も増えています。今後は、薬剤師の教育や指導にも携わっていけたらと考えています。

 

出典:株式会社ネクスウェイ「医薬情報おまとめ便サービス」特集2019年5月号

 

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